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1.序章・出発
ここ1年間はなかなか海外へも出掛ける心の余裕がなかった。旅行社から送ってくるガイド
ブックを見てもその気がないと、やれ準備が大変だとか、気が乗らないとか留守が心配とか、
色々な理由がつくもので、長男の住んでいるサンフランシスコへさへも出掛けない始末だった。
夏が長引いて、暑い秋をおくっていたある日、妻はながふとガイドブックを見ながら、「春
が来ている南半球の花を観に行きたい」と言いだしたのだった。
南アフリカのジャカランタはどうか、との誘いだったが、私は「花を観るのは良いが、南半
球は遠くて、特にアフリカの南端となれば航路も直行便とはいかない」と気の進まない返事を
していた。
しかし、人間は一度思い立ってしまうと、気が靡くというものか。はなはオーストラリアに
もジャカランタはあると拘りはじめ、パースなら直行便もあるらしいと言いだした。
オーストラリアなら時差も少ないし、それならばと、当方の気も動いたのが始まりだった。
だが、パースへの直行便はタイ航空が成田から飛ばしていたが3年前に廃止されていた。今
はバンコク(トランジット)経由のタイ航空便と、シドニー経由のカンタス便しかないとのこ
とであったが、結局は行くことになったのである。
タイ航空バンコク経由の便を使う阪急交通社の「花物語」と言うツアーに眼をつけると、旅
程も6日と短い。何より時差が小さいのが気休めになり、これに参加することにした。
1年半振りのパスポート利用、準備をすると言っても、気忙しいだけでこれと言うことは無
いのだが、気候が異なるし、ついうっかりする年頃であることは認めざるを得ない。荷物をな
るべく少なくし、子供たちに愛犬スピカの面倒をくれぐれも(今回は不在中の散歩をプロにも
お願いした)頼んで当日を待った。
平成25年11月1日(金)
成田発のフライトは17時30分、ツアーの集合時間は3時30分であった。スピカとの散
歩も十分にこなし、12時23分西国分寺発JR神田経由で日暮里へ向かう。
小ぶりのキャスター付きスーツケースと私はリックはなはショルダーバックという身軽な出
で立ちで家を出る。
時間はたっぷりある老人生活だ。天気も良い電車の窓辺の風景を、ゆっくり味わいながら国
を離れる旅なのだから楽しまねばなるまい。そして、楽しさを感じさえすれば、全て成功とい
わねばなるまい。旅に費やする時間は尊い。
神田駅の工事は長い、もう何年も続いている。日頃は通過ばかりのこの駅での乗り換えは、
又上野方面行きへの階段を間違えてしまった。又と言うのは、もう2年も前の成田へ向かう時
のことからだ。少しは間違ったって差支えない、余裕で行こうじゃないか――。
日暮里着13時37分の京成線普通特急に乗る。
上野が始発であるがウィークデーの真昼間でガラガラ。ベンチシートながらゆっくり座れて
助かった。38分で成田と結ぶスカイライナーから比べたら快適さには適わないが、1時間2
0分の所要時間は、大幅な「時間の贅沢」と言わねばならないであろう。豈図らんや!と言う
より、意は我がものに限らず、であろう。スーツケースを携えた客が沿線の駅からかなり乗っ
てきた。――なるほど空港近くに住む人のメリットはここにもあったか。と、思う。
「贅沢」と言うには負け惜しみの感があろうが、時間の余裕を楽しむゆとりと見栄を切って
節約込で移りゆく窓外の風景を眺め楽しむのは悪くない。晩秋の街並みは色づき始めた木々の
葉を交えて静かに平和に続いている。やがて郊外に出ると、収穫の時を迎えた田畑と小山を交
えた日本らしい風景が、海を越えて旅をしようと向かう心に優しい風情を染み込ませてくるよ
うだった。
3時前に成田空港に着いた。
日本食に名残を惜しんで寿司屋で遅い昼の腹ごしらえをして、阪急の団体カウンターで手続
きを終え、チェックインした。
成田を発つのは夕方で、夜の旅だ。
金曜日の夕方と言うのに出発ロビーの混雑は目立たないようだった。ただその割にはタイ航
空のカウンターが長い行列であった。団体での搭乗荷物を受け付けるのが手間取るのであろう
か。
はなは免税店でお決まりの化粧品を買ったが、オーストラリアの税関が通らない(液体物の
持ち込みに抵触)由でその品は返さざるを得なくなり、やり取りに手間取った。だが早く気が
ついて良かった。危うく万札を悔やむことになるところであった。液体物のセキュリティー対
策はこのところ各国で厳しさが増し、殊にオーストラリアが厳しいのだそうだ。グローバル化
は、反面危険度の増加でもあるとの思いは増すばかりである。
搭乗は30分遅れた。タイ航空に乗るのは初めてであったが、インターネットでの評価もま
まずまずであり、その通りメンテは良かった。食事もチキン、ビーフのメニューで2品からの
選択ができたし、飲み物もビール、ワイン、清涼飲料水等一通り揃っていて良かったと思う。
またティータイムのコーヒー、紅茶、日本茶などがこちらの好みで提供された。約半数の男性
客室乗務員(タイ人)の対応がとても良い感じを受けた。
運航は順調であったが、出発に手間取った分トランジットが忙しかった。バンコクから同じ
タイ航空のパース行便はかなり離れた搭乗口であったし、この阪急のツアーは名古屋から別便
で来ることになっていた6人とバンコクで合流することになっていたので、添乗員は内心ハラ
ハラしたであろう。しかし、結果は無事で順調にパース行きの便はバンコクを23時55分の
定刻に飛び発った。
私はいつかロンドンでのトランジットで荷物の積み替え時間が間に合わず、半日遅れで受け
取った事があったことを思い出し、少し不安も感じたが、今回はそれも徒労に終わって良かっ
た。
機は予定通り翌朝7時30分にパース空港にランディングした。
バンコク空港でのトランジット
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