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風次郎のColumn『東京楽歩』 (No662T−168)
谷保天神初詣
谷保天満宮
1月の14日から16日を、昔、私の田舎(信州諏訪)では小正月と言った。年神
や祖霊を迎える行事の多い大正月に対し、豊作祈願などの農業に関連した行事や家庭
的な行事が中心となる小正月を祝う風習は各地にあったらしい。
諏訪地方は養蚕の地で蚕を飼う家が多く養蚕の予祝に繭玉をつくり、折ってきた柳
の枝に射して飾り、それをもって14日の晩の行事「どんど焼き」に出かけたのであ
った。
今はそんな行事もなくなったらしい。
そんなことを同郷の妻はなと話しているうちに、「そう言えば、コロナ自粛でまだ
初詣をしてないな――」と、小正月がいい機会だと近くの谷保天神へお参りに行くこ
とにした次第である。
14日の朝は冷え込みがややきつかったが、陽が高くなるにつれてポカポカと暖か
くなった。谷保神社は歩いて30分ほど、丁度適度な距離にあるので、毎年詣でるこ
とにしている。
暖かさに助けられて良かった。11時をまわった頃、夫婦、それに家族の一員、愛犬
スピカを連れ発った。
我が家からは多喜窪通りの多摩蘭坂を下り、一橋大学のラグビー場を眺めながら住
宅街を南に向かう。
このところ練習も自粛か、すっかり人影を見たことがない人工芝のラグビー場には、
只々静かに緑地に陽が射しているだけである。道行く人もとても少ない、コロナの静
けさであろう。
道路を右へ左へ、犬のスピカだけは大喜びで思いのままリードを引っ張って歩く。
第三小学校を過ぎて、桜並木を進み、大きな富士見台団地の建物の間を抜けていく
と、国立駅からまっすぐ谷保の駅に続いている学園通りに出る。谷保駅近くの商店街
には、少しの賑わいがあった。
駅前広場の少し右手にある踏切の遮断機で長い貨物列車の通過を待った。ここを通
る南武線は横浜・成田を繋いで原油を運ぶために造られたJR線で、タンク車両を連ね
た列車が頻繁に通る。その踏切から先に谷保神社の鳥居が見えた。
少し歩いて国道20号線(甲州街道)を渡り、先に見た参道の赤い大鳥居を潜る。
その筋の呼びかけで今年は正月の参拝も混雑が緩和されているようだった。
谷保神社は天神様と言われる菅原道真公を祀った神社で、そのためか毎年入試を控
える学生やその家族を中心に、正月には全国的と言われるほどの人出で賑わうのであ
る。
だが、人出はあるが、行列まではなかった。外出自粛は効いているようだ。
参道からは、本殿に至るに少し長い石段を下るのである。私は大事をとってスピカ
を抱き上げて下った。やや重たいが、愛犬は暮れに左前足を痛めて獣医の処置を受け
ているのである。自粛生活にあっては、愛犬も大事な家族の一員、勢いよく飛び降り
るのを庇って、前もっての安全に気を使うことはやむを得ない。
境内はすでにお正月の納札を焼却する焚火も無かった。納札受けに昨年の札を納め、
スピカを伴ったまま、妻はなと共に拝殿でお参りを済ませた。
不安と複雑に悩まされる世情にめげず、無時生活を送れることをひたすら願って手
を打った。
新しいお札をいただく列も短くて助かった。境内に放し飼いにされている数羽の鶏
が、このところなかった暖かく心地良い昼陽の中で、飛び歩く様子がとても長閑であ
った。
恒例にして眺めることにしている境内に続く梅園では、早咲きの数本の梅が、その
下でお昼のひと時を寛ぐ人々を楽しませていた。出店も一軒のみで、例年の賑わいも
ない。
しかし、その静けさが今年の正月を象徴していると言いたいような初詣のあとだっ
た。
賑わいも目出度さには欠かせないように思う。などと、そんな風に思いながら、来
た道を再びゆっくりと歩いて帰るのであった。
のんびりとした初詣だった。
風次郎
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