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ヴェネチア―1―
さすがに夜の冷え込みが感じられるのか、みなジャケットを羽織って窓越しに外を眺めるばかり。皆キャビンに入りデッキに
立つものはいない。
ヴァボレットは雑然とエンジンの音を立てながら桟橋を離れた。
やがて船は大運河の広い水域に出るとスピードを上げ、窓に当たるほどの水飛沫を上げながら進んだ。
ヴェネチアの交通はすべて自分で歩くか、または運河を船で移動移動するしかない。優れた交通機関の発達した現代には
不便のように思うが、ここの市民は満足し、それを相応しい地域性として十分活用しているのである。
船に関しては特殊な経費や道路、車と比べるコストは割高のように思うが人件費が安いのだろうか、それとも歴史と伝統を
重んじた水上都市としての観光資源は多分、それを遥かに凌駕する収入をもたらすのであろう。このようにヴァボレットで目的
地へ向かうだけで、訪れた者たちは、この都の風靡した時代へ帰っていくような気がするから不思議だ。
「アドリア海の真珠」とまで謳われ、中世には地中海全域に国威を放った都市国家「ヴェネチア」には予ねて1度足を踏み入
れてみたかった処であり、そ空気には憧れていたのである。
月の無い暗い水面をへだててつづく空には星が瞬いている。行く手にジューデッカ島のサンジョルジョ、マッジョーレ教会がラ
イトアップされたドームを見せていた。
ジューデッカ運河からサンマルコ運河へ、そしてヴァボレットは舳先を左へ向け眩い灯かりが待つ中心部スキアヴォーニの河
岸に着いた。
すでに8時を過ぎていた。今日はずいぶん歩いたから私も勿論皆腹ペコだった。新家さんが「夕食のレストランはすぐ近くです
から」とコメントを出したが、私にとってはやっと来た夢の世界。ヴェネチアの街を歩き始める一歩一歩の感触を味わうことが重
要な気がした。
内陸からの小運河を越える小さな橋を渡り、有名なホテル「ダニエリ」の脇を曲がった先の小路を入ったあたり、ハイネケンマ
ークのシーフードレストランで夕食になった。
私たちは金沢から参加したという、私たちと同じくらいの年恰好のご夫妻と隣り合わせた。旅を共にすればいろいろな方々とす
ぐに親しく話ができることもとても楽しいことだと思う。それぞれに思いがけない共通の話題や、珍しかったり、変わった話も聴け
る。
金沢のHさんご夫妻は何とメキシコ人と結婚した娘さんが大阪にいるとのこと。彼方此方にインターナショナルな話題があり日
本も国際的になったものである。
夫人の元気なさそうな様子に、はながいつも持ち歩くアリナミンをさしあげた。翌日は元気を取り戻したようで良かった。
楽しく夕食を終えてチェックインは結局10時近くになっていた。サンマルコ広場から少し入ってゴンドラの係留されている運河
の先にある「ポンキアッティ」に泊まった。
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