☆☆☆

風次郎の世界旅
 イタリア2007
(14)

music by KASEDA MUSIC LABO

   
   カメラも傾けて斜塔を撮影、右は聖堂

イタリア2007春(14)
フィレンツエ―ピサ

           田園地帯を走っているバスの中で目が覚めて、窓を見ると彼方に斜塔が見えた。成る程!と現物を見る喜びを隠せなかった。
           青空がその上にもいっぱい広がっていた。
           バスは観光者用の駐車場までで、そこからはトラムに乗っていくとのことだ。新家さんから「公然?と言うほど堂々とした若者スリ
          が多い」から注意するようにとの厳重な注意があったので皆そわそわしている。そう思ってみると、若く活発そうなイタリア人はみん
          なスリに見えて困った。
           結果的には誰も被害に合わなくて良かったが、帰りのトラムには3人組の若い娘が私たちの仲間の間に張り付いてねらっている
          のが、私や安江さんにも分かった。イザというときにはと、警戒しているとトラムの発車間際に降りて行った。『現行犯』を叫ばなくて
          よかったとホッとした。
           トラムの終点にはどういう訳か黒人のみやげ物行商がズラリと並んで、さかんに動物の置物やスカーフを売り込んでいた。そん
          な場所も擦り抜けるようにして斜塔のある塀の中へ見学に入った。

           街なかの遺産ばかり見学し続けていたのでこの構内に広がる緑の芝生が気持よかった。洗礼堂と聖堂と斜塔が中央にあり、
          その奥にカンポサント、手前に美術館と事務所の建物が配置されている。中央の世界遺産に入るにはあらあらためて事務所で
          入場券のセットを購入しなければならない。ここまできて建物の中へ入らないと言うこともないだろうと、お互い並んで切符を買っ
          たが、これが又入場数を限定的にということである。多すぎる観光客であれば訳も理解できるとはいうものの、いやはや大変なこ
          とではある。  
           斜塔は傾いたままであることが観光の価値を高めているとして、そのまま補修保存が続いているが、これには日本の優れた技
          術が提供されているとのことだから注意してみることにした。
           基礎のいわゆる円塔の沈んだ部分は確かに斜めになったまましっかりと周囲をコンクリートで固められていた。どちらかというと
          斜塔は緑の芝生や聖堂などと共に遠景で眺めるのが良いように思えた。
           この聖堂の一画が今まで見てきた多くの聖堂と異なって広々とした青空の下に爽やかに浮かび上がった風景ととらえられ、ピサ
          はその名を『緑に映える奇跡の広場』と言われるだけのことはある。

           ピサはヴェネチアなどと並び、海洋王国を誇った13、14世紀に最も勢力のあった都。15世紀にはフィレンツエの支配下に、
          そしてガリレオを生み、学術都市としての名声を広めるようになった都だ。
           静かに時が過ぎたことを感じさせられる観賞のひとときであったと思う。
           欧州の旅は、聖堂を巡る旅であると言われるように、昨年来、大聖堂なるものを多く観る機会があって、今回のイタリアもキリス
          ト教会の聖堂をそれぞれの街で訪ねている。
           聖堂は十字架をなぞらえて、十字形のレイアウトである。内部は十字のそれぞれの先端を礼拝堂とし、正面最も奥を主座として
          イエスキリストを掲げ、またはマリアの像を置くものが多い。各礼拝堂にはそれぞれのクーポラの下に信者の近づきやすい使徒が
          祭られているのである。
           大聖堂はロマネスクの代表的な建物である。私たちは南の正面からサファードをしっかりと眺めてから入って行った。
           守衛が入場者数を把握しつつ丁寧に案内していた。午後の眩いばかりに明るさの下にいたからか暗い内部に慣れるのに時間
          がかかるほどだった。しかし、ここでは写真撮影も自由とのこと、それだけでも入場者をリラックスさせ、人々のざわめきはかなり
          のものであった。ただ、明かりの中心は主にステンドグラスから来る自然光だけであることも聖堂の意味を高めていたかのごとく
          に思った。「良かった」と感じた。
           外に出ると、洗礼堂はやめてカンポサントの長い建物に沿って歩いてみた。
           墓地に近づくと荘厳な教義を思い、納得を得たいと思うことがあるが、それは長くは続かない。信仰に富の半ばを注ぐことが宗教
          と政治を併進させ、民生を安堵へと導くとは絶対に言い切れるものではない。

           白日の下に歩けば、やはり現実の観光に遊ぶ人一人になっている自分自身であった。しかし、いっとき、「ああ、これが敬虔な聖
          堂の信者」との感を、垣間見た気がしたのであった。ここピサには自然との接点をどこかで見た気がしたのであった。

           帰りのトラムに乗るときも若い女性のスリ団がたむろしていた。しかし、私たちがグループ仲間とお互いに目配せを交わしている
          のに気づき、尻尾を巻くようにして降りていった。

           西に傾く陽を背に受けて、アルノ川をフィレンツィエへ戻っていく。
           川に近いところを走るため彼方にトスカーナの山並みが見える。広い平地を走る感じはとても長閑であった。

           夕暮れのフィレンツィエ、サンタマリア、ノヴェッラ駅前にバスを降りて、近くの京都大酒楼という中華料理の夕食会であった。
           春巻、豆腐炒め、野菜炒め、くらげと豚肉、チャーハンなど日本の中華料理のテイストで胃に馴染んだ。
           ホテルに帰ったのは8時を過ぎたばかりだったので、グループの婦人たちは近くのスーパーへ買い物に出かけた人が多く、はな
          もついていった。
           私は部屋で休むことにしたが、ちょっとウトウトしてしまうとそのまま寝入ってしまった。


本当に若いスリがいたピサのトラム

* 『風次郎の世界旅』イタリア2007春(15)へ
* 風次郎の「東京ジョイライフ」ホームページのトップへ
* 『風次郎の世界旅』 トップページへ戻る
* 風次郎の『八ヶ岳山麓通信』へ
* 風次郎の『善言愛語』へ