アメリカの印象08初夏

                                                  BGM by  かせだ音楽研究所


グランドセントラルst.ホール

(1)マンハッタン

「一体マンハッタンの地下にはどんなに沢山の穴があけられているのだろうか?」と、
他愛の無いことを考えながらニューアーク・リバティー空港からのバスの中で思案を
巡らす。今日もハドソン川の下をトンネルでくぐりニューヨーク入りする。
 東京の地下鉄網もかなりなものだが、東京よりマンハッタンの面積はずっと狭い。
それに加えて固い岩盤は、掘削するのもかなりの難業であるはずだ。どだい殆どのア
メリカは岩石ばかりでほとんど土が無い。家庭菜園など高嶺の花、庭で花を咲かせる
には、木屑を買い集めてこなければならず、芝生の緑を維持するのにも散水を欠かし
てはならない。
 合衆国の北部は岩の上に街が建ち並び、南部沿岸は珊瑚礁の上の砂地である。それ
でも農業大国と言われるが、ジョージア、アラバマ、ミシシッピーなど限られた地域
が農地として恵まれているのみで、あとはトウモロコシ畑か、放牧地だ、と私は言切
る。
 馬鹿にしているわけではない。
 この頃日本の土壌のような泥的、肥沃な黒土は世界的に貴重であると思うようにな
った。訪ねる国に砂に囲まれた旧い都や、石により建造された文化、を眺めすぎたの
かもしれない。
 アメリカもその類に外れない。土の無い国、石の文明の国である。マンハッタンで
驚くのは、岩盤にそそり立つ壮観な摩天楼のその足元に、島中が地下道と地下鉄が網
の目のように敷かれていることもそのひとつである。

 ニュージャージーからハドソン川を抜ける道路トンネルはホーランド、とリンカー
ン。今回はリンカーンを抜けてのニューヨーク入りだ。
 9.11テロ以来、合衆国の中枢を担うこの島を守っての警戒は依然厳しく、交通
緊急措置対策を敷いており、その対象がこの二つのトンネルとジョージ・ワシントン
ブリッジである。何故かイーストリバー側は含まれていないが、州単位の警戒なので
あろう。
 上下、左右に車を操って運転する黒人のドライバーの横顔越しに眺めていると、相
変わらず渋滞が激しく、あまり綺麗な風景とはいえない地帯を下り始めトンネルの入
り口に差し掛かる。
 そう思えばこのトンネルの中の渋滞はいやな思いにさせられる。もしこの時、何ら
かの事件でも発生したらと思うとぞっとした。車はガソリンを積んで走っているのだ
し、頑丈な近代建築もあのテロ事件の様相から見るとあっと言う間に無残な瓦礫と化
することを私たちは知ってしまった。
 トンネルを出てホッとして見るアップタウンの夕暮れ時は、人波も賑わいを増すラ
ッシュ時の雑踏と瞬き始めたネオンが、相変わらずのニューヨークらしさを感じさせ
るのであった。
 アメリカはサブプライムショックを引きずって、景気が後退しているらしい。住宅
が売れず、消費マインドが低下していると言われるからいささかの懸念があったが、
マンハッタンの空はどこ吹く風、車の洪水で、バスもポートオーソリティーの停留場
へ着けられない有様である。ダイナミックなアメリカは悠然たる風貌を見せつけるが
ごときであった。

 いつもの通りグランドセントラルのホールから電話で長男宅に到着を告げ、メトロ
ノースの列車でウェストチェスターのハリソンに向かう。
 天井の高いグラセンのホールを照らして、高窓に並ぶシャンデリア風のライトがと
ても煌びやかに見える。そして106番ホームを離れる列車が心もちゆっくりと駅を
出るのを感ずるのだった。
 8ヶ月ぶりのニューヨークである。

 
グランドセントラルst.  42st。正面

                            


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