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風次郎の『八ヶ岳山麓通信』 No311
左ギボシ 右権現岳
眺める八ヶ岳(3) 2022109
私の眺め親しむ「八ヶ岳」はいわゆる「西八つ」である。
日本列島の分水嶺である富士見高原から諏訪盆地に至る八ヶ岳山麓は、富士見峠か
ら釜無川を経由して富士川へ向かう各支流と、諏訪湖を経て天竜川へ向かう支流が八
ヶ岳の峰々の西襞から分かれて流れ出る。
富士川へ向かう南八つからの流れは、権現、中岳、阿弥陀岳の懐に発する立場川と
西の入笠山系から来る武智川が合流して「釜無川」となり、さらに甲府の手前で塩川
を合流、富士川へ進むのである。
主峰赤岳の谷、南沢、北沢に発した支流は茅野市に至って上川となり六斗川に名前
を変えて諏訪湖へ流れ込み、先は「天竜川」として諏訪湖の釜口水門を発し、伊那谷
をひたすら太平洋に流れるのである。
八ヶ岳は東側が千曲川の発する支流群の水源であり、千曲川は北の県境から「信濃
川」と変じて日本海へ注ぐから、本州中央部に存する八ヶ岳こそ太平洋、日本海、南
北水流の発する分水嶺と言えよう。
谷を歩くのは難行が多く、山の景色も楽しめるわけではないので、私は好まなかっ
たが、広い裾野の里から、この流れを辿り峰に近い谷から稜線へのルートを探って歩
く山人も多い。
麓からその山襞を眺め、或いは稜線に歩を運びつつ眺める山襞それぞれが、太平洋
と日本海に旅する水源であると思うと雄大である。
東京に住んで、実家(富士見町・南天寮)の老親を見舞うのに、何度も八ヶ岳を歩
いてから向かったことがある。
昔は新宿発の夜行列車が早朝小淵沢に着き、小海線の列車に接続していたから、乗
り換えて甲斐大泉で降りて歩き始め、南八つを越えて富士見へ降りる道順を何回か歩
いた。そこには三ツ頭、権現、編笠、西岳の峰々がある。
甲斐大泉駅で降りて、民家の脇の傾斜道をとことこと4~50分行けば、いわゆるハ
チマキ道路(八ヶ岳の裾野を取り巻く幹道)を横切り、天女山へ向かう登山道に入る。
天女山では小広い山頂の木立の合間から権現、赤岳などを仰ぎ見、振り返って南ア
ルプスを眺めた。大きな甲斐駒ヶ岳に続く日本第二鋒北岳とそれに連なる山々が悠然
と見えた。
再びカラマツ林の中を進み、天の河原から少しの砂礫道を経て樹林帯に入るが、そ
こは見通しの良く無い登りが前三ツ頭まで続き、思いのほか長く感じるのであった。
前三つに出れば赤岳などが見えて、這松、シャクナゲなどの間の坂道が急になるが、
山に来たという感じがする。
権現岳頂上は殺風景だが岩峰からは、晴れてさえいれば遥か北アルプスから南アル
プス、富士山まで中部地方全域の山が眺められる。周囲「天下望む」そんな気がした
ものだった。
頂上直下にある小屋の上部から岩場を下り、少しの間南壁を辿りつつギボシの峰を
やりすごしてノロシバを下れば鞍部に青年小屋がある。私は夏山ばかりだから小屋に
寄ることはめったにない。腹ごしらえはリュックのおにぎりと水であった。
編笠の頂上は岩塊の広がりで見通しが良い。東側は権現の稜線に隠れるが、赤岳、
中岳、阿弥陀岳の八ヶ岳主峰が雄大に広がり、八つの峰を楽しむことが出来る。眼を
転ずれば南アルプスの展望は最高である。
私の行路は西岳頂上を経て富士見高原リゾートへ下るのであった。大概が夏の午後
になっていたので、西からの陽を浴びて草いきれの中を早足になる麓に近づく頃は、
汗びっしょりであった。
ゴルフ場やリゾート施設のバスがうまく捕まれば便乗したりしたが、大抵はそこか
らも実家まで90分程歩いた。それでもまだ陽は西山の上にあった。
若いと言うのは有難いもので、あまり疲れたとは思わなかったから、今では不思議
だ。
風次郎
編笠から眺める八ヶ岳主峰