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 風次郎の『八ヶ岳山麓通信』 No310
                                                                                                 

                                  
                                           富士見からの夕暮れの八ヶ岳   

           眺める八ヶ岳(2)                                               2022.9

                      「八ヶ岳」と言うが、その八つの峰はどこを指すのか――。
                     一般の説明では「八ヶ岳」は特定の峰を指して呼ぶ名前ではなく、山梨・長野両県
                     に跨る山々の総称ということのようだ。
                      その範囲は「夏沢峠以南のいわゆる南八ヶ岳のみ」とし、日本百名山でいう八ヶ岳
                     もそれを指している。しかし、それに北八ヶ岳の領域(蓼科山を除いた領域)とか、
                      「蓼科山まで含んだ八ヶ岳連峰全体」など様々な定義もあるようだ。

                      山をこよなく愛し、小説家、随筆家および登山家である深田久弥のエッセイ「八ヶ
                     岳」は次のように書き出している。

                      ――中央線の汽車が甲州の釜無谷を抜け出て、信州の高台に上り着くと、まづ私た
                     ちの眼を喜ばせるのは、広い裾野を広げた八ヶ岳である。全く広い。そして裾野を引
                     きしぼった頭に、ギザギザした岩の峰が並んでいる。八ヶ岳と言う名はその頭の八つ
                     の峰から来ているというが、麓から仰いで、そんな八つを正しく数え人は誰もあるま
                     い。
                      ――と、

                      それは兎も角、自分で八ヶ岳歩きをするようになった頃から、やはり八ヶ岳は八つ
                     の峰が名指されていることが肝要と思うようになった。馴染みが深い西麓の地元、我
                     が故郷の人々も、きちんと八つの峰が決まっている、と意識しているようである。 
                      南八つの頂峰は、北から峰の松目、赤岩の頭、硫黄岳、横岳、赤岳、中岳、阿弥陀
                     岳、権現岳、西岳、編笠岳、三ツ頭の11鋒であるが、私は地元意識で、このうちの
                     「岳」を称する8鋒が八ヶ岳であるとしてきた。
                      殊に、中岳は諸峰に囲まれその中央にありながら、小山で、遠くから望めない宿命
                     を頂いて岳峰から忘れられ勝のようにも思え、可哀そうな存在だから、私は1峰に数
                     えることを忘れない。したがって我が八ヶ岳は硫黄岳、横岳、赤岳、中岳、阿弥陀岳、
                     編笠岳、西岳、権現の八鋒である。

                      但し、この八鋒は一か所で全部を眺めることはなかなかできない。縦走中と言え、
                     赤岳、阿弥陀岳、編笠岳の頂上以外からはどこかが他の同胞山に隠れて、全八峰を見
                     渡すことはできないのだ。まして山を下り里から眺めるときは、真ん中にある中岳は
                     見えない。
                      私がこの中岳を含む八鋒の八ヶ岳を里から眺めることを楽しむのはただ一か所、そ
                     れは中央線の車窓からである。

                      列車が甲府駅を出て竜王駅へ向かう右側車窓から一時中岳を含む八鋒の八ヶ岳を見
                     ることが出来る。八ヶ岳はまだ彼方ではあるが、赤岳から権現へ向かう竜頭峰とキレ
                     ットとの隙間が空いて、そこに中岳が見える。そのときこそ、遠望できる八鋒の「八
                     ヶ岳」全景のチャンスである。
                      しかし、右端にやや見えている硫黄岳は、列車の進行とともにすぐに横岳の後ろに
                     重なってしまうので、ほんの一瞬、一分もない間だけだ。
                      これを見つけたときは嬉しかった。
                      以来、南天寮に通うときの楽しみの一つにして、その時がすっきり晴れる朝である
                     ことを期待して行くのである。

                                                                 風次郎


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