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風次郎の『八ヶ岳山麓通信』 No305
西山山麓からの八ヶ岳1(21・12・15)
日帰り山麓行
12月に入り冷え込み、日本海側は連日のように吹雪の日が続いているようだが、
山麓の里には14日になってやっと雪が舞ったようだ。
しばらく南天寮に足を向けていなかったが、そろそろ暮の片づけを終えて来ようと、
天気予報の快晴になるとの予報を当て込んで15日の朝「あずさ1号」に乗り込んだ。
立川から乗ったのだが、暮のせいか、或いは通常通勤時間の為か、甲府あたりま
でほぼ満席の混みようだった。確かに通勤客を拾っていくようだ。「あずさ1号」に
乗るのは初めてだが、八王子、大月と停車駅が多い。
久しぶりだったので、私は車窓を楽しみつつ向かうことにした。
駅を発つとすぐに多摩川の鉄橋に掛かり、流れを分けている川筋に、ススキの穂が、
朝陽に穏やかに光っている。冷えた川面がやや煙っている。
高尾からトンネルを抜けて相模川に沿った山間部を走るあたりでは、葉が落ち、透
けて山を覆う木々は早朝の霧がもたらした霧氷に白みを帯びて山稜に連なっているの
だった。
山間を走る列車が、富士の姿を見せてくれるのは大月を過ぎて少し行ったところのほ
んの一瞬だけだから、目を凝らすようにしていた。八王子近辺から見る遠富士に比べれ
ば、断然迫力のある雪を纏った大きな富士山が、姿を現して迫り、そして山間に消えた。
すぐに入っていく笹子トンネルを出ると、勝沼から開けた甲府盆地の彼方に、重な
る南アルプスの山々が映し出される。真っ白な雪を頂いて、濃鳥岳から間ノ岳、そし
て真っ直ぐに富士に次ぐ高山、北岳へと澄んだ青空の下に延びる美しい姿である。
甲府からは馴染みの南アルプス、鳳凰三山と駒ケ岳が露わになった。ただ八ヶ岳は
冷え込んだ朝の空気に取り囲まれたためか、周囲を白い雲にやや丸く囲まれて、
姿を見ることができないまま小淵沢の駅で乗り換え、富士見の駅に着いた。
〇
南天寮では、枝払いの残っている2本の松を手入れした。いずれも思い切って短め
に処置する仕事だから、梯子を掛けて登らねばならないのだが、幸い日向は暖かく、
薄手の身支度で仕事に掛かれ、風も無かったので気の好い仕事ができた。
すでに畑は前回仕舞ったし、松の手入れは午前中に終わり、ゆっくりと昼を過ごし
ていると、西山の麓に住む K君から連絡があった。 K君は小学校からの友人で、東京
で働いていたのだが50歳を過ぎてからこちらに戻り、夫妻で景色の良い西山の麓に
家を建てて暮らしている。小生も枝払いの後始末を頼んだり、時々連絡を取りながら
お茶を飲んで語る間柄である。
暇があったのを捉えて午後は西山の彼のところへ出かけることにした。
富士見は坂の街、何処へ出かけるのも坂を上ったり下りたりだ。だから普通自転車
は適さない。しかし、車を控えるようにしているので列車で来ると、自転車を頼らな
いとすると歩きしかない。道はほぼ登り一筋だが、思い切って自転車で出かけて行っ
た。
案の定、国道と中間点の小学校のあるあたりまではどうにか漕いでいったが、ふう
ふう汗びっしょりになってしまった。やがて2kmを残す急坂まで来ると諦めざるを
得ず、あとは自転車は曳いて上ることになった。
汗を拭きふき、K君と笑いあいながら、世間話をした。「世の中変わりが早すぎて
ついていけねーな―」などと−−。只、私にはもう一つ狙いがあった。天気は良かっ
たし、彼の家からの午後の八ヶ岳は抜群の見栄えなのである。数枚の写真を撮りなが
ら、彼の家の背後に陽が隠れるまで過ごした。
雪が中腹まで広がり、冬の装いの八つは厳しさと険しさを表し始めている。
帰りは、行きで苦労した分、快適に滑り降りるように、自転車にまたがったまま、
風を切って駅前まで降り切った。
日帰りに乗る列車は富士見発16時58分、小淵沢で「あずさ46号」に乗り換える
ともう車窓は真っ暗、通過駅の灯りが暗闇に尾を引いて去るように見える。
夏の時は、甲府までの間、夕日に映えて輝いている富士の眺めを楽しみつつ、車中
コーヒーを味わうのだが、それもない。
イヤホーンに音楽を流して帰路を過ごすのであった。
今年の山麓通いはこんな風にして終わった。
風次郎
西山山麓からの落日前八ヶ岳全景(21・12・15)