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風次郎の『八ヶ岳山麓通信』 No303
秋の気配の八ヶ岳
秋色
東京ではまだ真夏のように気温の高い日もあるが、10月も10日過ぎになって
富士見を訪れてみるとやはり秋色が漂っていた。
9月の終わりにやっとの思いのコロナ禍の緊急事態宣言解除に、若干のゆとりを
感じて朝の列車に乗った。
その日は雨が上がったばかりで、笹子トンネルを抜けた勝沼あたりから見渡す甲
府盆地一帯には爽やかな朝陽が射しこんでいた。
ただ、楽しみにしていたその先に高く連なって見える筈の南アルプス連山が、麓
から広く湧き上がる上昇気流のガスに隠されて、全く観ることが出来ず、残念だっ
た。
しかし、甲府駅を出て韮崎を過ぎたあたりから、甲斐駒、鳳凰三山が姿を現し、
対面の南八ヶ岳もすっかり青空のもとに観ることが出来て良かった。
富士見高原からの八ヶ岳は西岳、編笠岳を目前にして、右側に権現岳左背後に阿
弥陀岳、赤岳を見上げて望み、さらに横岳、硫黄岳と北八つに続いている。
南北の連なる雄姿はいつもと変わらない。
まだ午前8時前、南の低い位置からの朝の陽光が、山肌をくっきりと照らし出し
て、季節感が映える。そして中腹に点在する広葉樹林のあたりには、もう色づきが
始まっているのが伺えるのであった。
広い裾は大半が落葉松林であるから、11月がその黄葉の絶頂なのであるが、今
の時、暑かった今年の夏を振り返りつつこの八ヶ岳の秋色を眺めることに、ひと時
の安らぎを思うのであった。
若い時代、こんな青空の下に八ヶ岳を見上げると、躊躇なく山懐に向かい、汗を
掻き掻き一日の尾根歩きを楽しんだものだ。富士、北アルプス、浅間、御岳と遠方
まで四方の山々を眺めつつ歩く八ヶ岳の尾根歩きは、私の夏の年中行事で、紅葉が
始まると終了した。秋から冬は富士見高原からの西八つを眺めて過ごしたのだが、
最早、夏とはいえ尾根歩きも叶わず、見上げて懐かしむ―――。
昨年来、めっきり人気の少なくなった南天寮ではあるが、この夏も草刈りだけは
欠かさず務めてやり過ごすことが出来た。秋が深まれば来年の賑わいを期待しなが
ら静けさを楽しむこともできるだろう。
季節の変化が愛惜しい季節である。
風次郎