KL(クアラルンプール)市内散策(3)

ブキッ・ピンタン(KL終章)

                  ホテルからコンレイ通りを西へ少し坂をあがり、ラジャ・チュラン大通りのイスタナホテルの南を少し歩くとブキッ・ピン
                  タンの繁華街がある。

                   夕方の6時半はまだ明るい。しかし、やはりここでも5時頃が仕事を持つ人達の離業時間のようで車も人出も賑わっ
                  ている。

                   左にKLプラザ、右にブキッ・ピンタンプラザと2つの大きなデパートとマーケットが合体したようなショッピングセンター
                  があり、その先は10数軒のホテルと、公園も配した歓楽街になっている。

                   風次郎は妻はなと「LOT10」と壁に大きなイニシャルを張り付けたKLプラザに入って行く。LOT10は若者がいっぱい。
                   日本の伊勢丹も広いスペースを確保しており、このファッション店舗はごったがえしている。伊勢丹はLKへの進出を
                  積極的に行なってきたんだな―と思う。

                   この国の人々は、大部分の人が国教イスラムの習慣で、女性は薄手の民族衣装にスカーフを身につけ、足元まで
                  覆っている。見慣れない私たちには余計目立つのかもしれない。もちろん女性教徒達は、そのファッションで外出する
                  ことが多いようだが、他の衣装を着ないかというとそうでもないらしい。民族の色分けはマレー民族が50%、中国系が
                  30%インド系が15%だという。これがイスラム教、仏教、ヒンドウ−教それぞれの普及にリンクしているので風習もま
                  ちまちなのだから、いろいろなことが影響しあうのだろう。ただ日本に比べれば信仰に対しての姿勢がそれぞれ直向
                  であるとの感じがする。


                   靴屋をのぞく。
                   世界の一流ブランドに加えて、当地特有のスリッパのような履物があちこちに並べられている。
                   衣装屋さんのほうは、南の国らしいカラフルな柄物に眼を引きつけられる。ローケツ染めのバティック、レーヨンか絹
                  かなど風次郎には見分けがつかないけれど、これに刺繍を施して、綺麗に仕上げたものをひらつかせて街を闊歩する
                  女性の織物衣装「ソンケット」姿も、数日の滞在で眼に馴染むようになった。

                   雑貨の土産品店に入り、ピューターの製品を品定めした。
                   錫の銀色の静かな輝きは見ていて落ち着くものがある。コーヒーカップか、ワイングラスかビールグラスかと迷ったが
                  表面に凝った民芸調の彫刻が施されたものが多く、迷ったが、結局シンプルなビールグラスを記念の土産品にした。

                   道路を隔てたKLプラザへも足を伸ばしぶらぶらしていると、その2階にある海鮮レストランの若者が“近海で捕れた美
                  味い魚がある”と誘いかけてきた。ちょっと早いかな、と思ったが引き込まれて夕食をすることになった。

                   まだ7時まえ、割合早い時間なので客は誰もいなかった。

                  通りを斜めに見下ろせる窓側のコーナーの席に座ると、ビルの隙間から漏れる夕陽が街路樹の影をつくっている。通
                   りを見下ろしながらゆったりした気分で、はなとビールを口にした。

                  そう言えばアルコールは駄目な国とのことだったが、結局どこのレストランでもビールは出してくれた。プリンスホテルは
                  勿論KLタワーのスリアKLCCでも、スリ・マライユでもマラッカのニョニャレストランでもOK だった。外国人に寛大なのか
                  それとも商い大事なのか、次第にその風習は解けて行くのだろうか。一方で“郷に入っても自分の行きかたは変えない”
                  というのがモダニズムなのかもしれない。

                   運ばれた難しい名前の魚は、白身でカレイに似たかたちをしていた。ドロッとした色濃いドレッシングでだされたが、辛
                  いものでなく少し塩を振って美味しく食べた。

                   薄暮の街は人の動きも雑踏も薄い揺らぎをともなってロマンチックである。
                   新しいドラマでも創り出されそうな南国の夜気が流れている。
                   少しの酔いもともなって、ガラス越しに見るブキッ・ピンタンは、一日の活動の心を癒す人々を誘いこんでいる公園その
                  ものの映りだった。

                   “街全体を公園にして−−−−”が政府のヴィジョンであると聞いた。
                   カーブした道の多いKLの街、長い直線道路はない。公園と公園が丘の上の街と川沿いの街を結んでいる。
                   常夏で湿度の高い気候は、がゆえ緑の多い美しさを保っているのである。気温も32〜23度位の平均気温が思ったよ
                  り快適に過ごせそうな感じをもたらす。

                   灯りで満たされたブキッ・ピンタンをはなれて、涼しくなったプドー通りをプリンスホテルに戻り、再び部屋の窓からペトロ      
                  ナスの夜景に見入る。

                   これから未来の夢の国づくりに向けて歩む国、石油も、椰子も、錫もみな国の宝。美しく逞しく発展して行って欲しいと思
                  う。この煌く静かな夜景がいつまでも続くように、と祈りつつ‐ ‐ ‐。

                   私達はその日の夜行便でKLを発って帰国した。
                     朝の成田には明るい陽が射していたが、少し前に降った雪が街を覆い、数日過ごした夏の国の日々を夢物語に追い
                    やって行った。平成15年の1月21日の朝だった。

                                                 ☆☆☆☆☆☆☆☆

   * 風次郎の「東京ジョイライフ」ホームページのトップへ
* 『風次郎の世界旅』 トップページへ戻る
* 風次郎の『八ヶ岳山麓通信』へ
* 風次郎の『善言愛語』へ