風次郎の世界旅
 アフリカ南部の旅
(7)

      
バオバブの木                            ボマディナー

7.ビクトリアフォールズ市にて

 
                       ジンバブエのガイド・ブライトンが国境まで迎えに来てくれて同乗した。実際のところは、朝私達を
                     ボツアナに送ってからその辺で暇潰しをしていたらしい。仕事もそう沢山ある訳ではなく、緻密に働く
                     ことができる国ではないようだから致し方ない。
                      仲間が希望すると、南部アフリカを特徴付ける樹木であるバオバブの木の見事な処を案内してくれる
                     という。ホテルへ戻る途中の砂地の盛り上がった丘に直径3メートル程の見事な大木があり、バスを止
                     めて皆で眺めた。
                      幹は徳利のような形をしているのが標準形である。ホテルの中庭には優しい感じのスマートのなもの
                     があったが、そこの木は周囲5mもありそうな太くて、そうスマートではなく、枝が豪快であった。
                      「バオバブ」はサバンナ地帯に多く分布し、幹は堅いが空洞なので、年輪が無いため樹齢を知ること
                     が難しいようである。太いものは数千年に達すると言われ、白い大きな花が咲き、幹の上部に繁る葉は、
                     乾季に落葉する。スワヒリ語では「ムブユ」と呼ばれるとのことである。

                      市街地に入っても、夕陽は沈んだがまだ辺りは充分明るかった。
                      ホテルへ戻る前にブライトンの友人も居ると言う民芸品のマーケットを案内したいとのことで、萩原
                     さんも私達も賛成し立ち寄ることになった。チョベのロッジにも売店があり民族の商品が並んでいたが、
                     髪が風にばらけないように使うスカーフをはなが買っただけだったし、私も民芸彫刻を見たいのは山々
                     だった。
                      街外れの広場に簡素な建物を連ねたマーケットには、地域の黒人たちが自作の作品を持ち寄ってバス
                     から降りた私達を取り巻くようにアピールしてきた。
                      地面のシート上には石の彫刻、木彫りの彫刻、が並べられ、柱や屋根から下がったロープにはスカー
                     フや首飾り、日傘帽子、肩から掛ける織物などがあった。絵画的なものは見当たらず、ここの作品全体
                     は無彩色の世界のようであった。石の彫刻には素地を生かしたものが多く、従ってカラフルなものは少
                     ない。元々ジンバブエは「石の国」であるから、理屈は合っている。
                      私は石の飾り彫刻を欲しいと思っていたので物色した。最も好もしいのは人物のマスクであったが、
                     なかなか気に入った顔のものは見当たらなかった。やっと、通路を中ほどまで入った店で、荒削りの原
                     石の痕を周囲に残したまま少女の顔を彫った手ごろなものを見つけた。手彫りを磨いたものであろう、
                     厚い唇と静かな目元がジンバブエの人の印象そのもので気に入った土産になった。
                      一緒にアフリカのビッグファイブ(像、サイ、ヒョウ、バッファロー、ライオン)が、アフリカ大陸
                     を模った板に彫られた壁掛けを買った。はなは小さなキリンの木製置物を手にしていた。
                      持ち寄りのマーケットらしく、各人が観光客向けに精を出しているのだろう。時間をかけて楽しみな
                     がら物色すれば、中には随分優れた良いものが有るように思った。グループのメンバーも夫々に楽しみ
                     ながら買い入れた作品を手にしてバスの中は賑わった。
                      買物は米ドルを使ったが、話題が転じて、萩原さんがジンバブエのハイパーインフレを話題に、ゼロ
                     が沢山並んで数えきれない10,000,000,000ジンバブエドルの紙幣を見せてくれた。この紙幣は今は使わ
                     れない語り草になってしまったものだ。
                      この国の人々はつい数年前に襲ったばかりの極端な世情変化に、まだ戸惑いながら生活を送っている
                     のであろうことを想像した。このマーケットに生活を委ねる大勢の人々も――。

                      この日の夕食は民族ショーが行われるディナーに出掛けた。ディナーは野生動物の肉も含まれるバイ
                     キング=ボマディナーである。
                      暗い原野の中に草葺きの大きな屋根の現地風の建物があって、「THE BOMA」と描かれた看板の前で酋
                     長の衣装を纏った大男が歓迎してくれた。
                      入り口で私達にも民族風の肩掛け衣装が着けられて中に入ると、中央にはステージが誂えられ、それ
                     を取り囲んだ手前に料理の置かれたテーブルがあり、奥には食卓が並んでいた。
                     13人の仲間が民族衣装を着けたまま席に着くと、添乗員の萩原さんが、丁度今日はメンバーのT氏
                     の誕生日に当たるのでと紹介をし、プレゼントが渡された。恭しく受け取るT氏に拍手喝采で私達のデ
                     ィナーは始まった。
                      T氏に伴って料理をコーナーに採りに行くと、数人の料理人が揚げ物をしている場所があった。そこ
                     は芋虫を料理しているところで、食べれば証明書を出すと言うことだ。西洋風の客が並んで皿から撮ん
                     で食べていたが、私はどうにも手がでなかった。T氏も狙っていたようだが成功しなかったようだ。
                      隣のコーナーはワニの天ぷらで、T氏が先ず手をだし、「これ美味いよ!」と言うので私も思いきっ
                     て口にしてみると、成る程、予想に反して、エビのような感触の舌触りで美味かった。
                     訳の分からないものが、他にもいくつか並んでいたが、端の方にあった鮨コーナーに巻き寿司があっ
                     たので、私はそれをいただいた。美味とは言えないが酢は利いていて違和感は無かった。
                      結局普通のステーキをメインにしたが、肉はこちらへ来てから何処でも比較的固く、焼き方も強いの
                     で沢山はいただけない。ここでもいきおい豊富でみずみずしいフルーツを中心に楽しむことになったが、
                     驚きの料理もあって面白かった。
                      宴半ばに民族ダンスショーが繰り広げられた。ジンバブエの民族楽器ムビーラ(親指ピアノと別称さ
                     れるショナ人の伝統的な楽器)を太鼓に合わせて奏でながら、登場した男女ダンサーの激しく腰を振る
                     踊りが繰り広げられた。大地を踏みつつ肢体を奮わせる迫力あるステージであった。
                      最後には、場内至る所に置かれている民芸太鼓(日本のツヅミの大きいのを半分にしたような形)を
                     来場客に取り上げさせて、演奏者のリードで叩かせるという嗜好で会場を盛り上げ終了した。
                      私達は9時過ぎに引き上げたが、この会場は深夜まで開かれているという。
 
                                               ○ 

                      ジンバブエの「ホテルキングダム」で2夜を明かし、11月の1日になった。
                      5時に起きたがまだ暗い空だった。外が明るくなるのを待って、曇り空だったが私は少しの散歩を試
                     みた。
                      フロントを出ると左手にカジノの大きなドーム状の建物がある。最近はあまり開かれていないようで
                     あるが、昼間はレストランやショップも開かれているとのことで、しかも24時間出入りは自由になっ
                     ていた。
                      中へ入ってみると、ロビーの天井は高く、中央円形の台上には民族の伝説にでも登場するのだろうか、
                     6mはある3人の木で彫られた人物像が立っていた。長髪の顔は抽象的な目、鼻、口、縞馬の変形かと
                     も想像したくなる程横縞模様が体を覆い、手に槍を持っている。黒と茶が使われた色彩で、何よりも寄
                     木ではなく一刀彫のように仕上がっているのがすごいと思った。
                      恐らく名士の大作ではなかろうか。丁寧に写真を撮った。

                      建物から外に出て歩いて行くと、先にある宿泊棟の方から、聞いていた猿のような集団がこちらに来
                     るようだ。暫く立止まって見ていると、かなり多数のの集団で、しかも大きい。「これはヒヒだ!」と
                     思って警戒し、正門の守衛に声を掛けると、「近づかない方が良い」と注意された。100頭を超える
                     集団が朝の移動を開始したようだった。守衛は他の人足を呼んで追い出しに躍起になっていた。私は仕
                     方なく一旦部屋に戻ることにした。
                      今日は移動日なので、朝食後荷物を整えて再びはなと一緒にホテルの前に出てみた。ヒヒの集団はと
                     うに姿を消していたし、曇っていた空は青空に変わっていた。良かったと思った。
                      ホテルの正面玄関の前にもモニュメントがあった。ここのものは鉄で創られた5体の狩猟をする人た
                     ちのようであった。夫々に槍と盾を持ち、構えている様が、歴史を抱く民族の象徴とも言えるのだろう。
                      逞しくもあり、尚々素朴な民族史を思うのであった。
                      正門の前の道路越しに真っ赤な満開の花を付けたフランボアイアンの樹と、紫のこちらも満開のブー
                     ゲンビリアの木があった。美しい花を背景に、ここまでは、中々次に来ることはあるまいと思いながら
                     記念の写真を撮った。 

                                                     ○

                      ジンバブエ、ビクトリアフォールズでの最後のスケジュールはヘリコプターに搭乗して上空からの観
                     覧である。
                      ホテルの前をバスで出発した私達は国立公園の入り口を先に進み、ヘリパットに向かった。ヘリパッ
                     トは待合所を兼ねた小高い丘の上の広場にあった。
                      すでに観光遊覧が始まっていて欧州人らしい数名がハウスの裏のちょっとした広さのヘリパットを行
                     き交っていた。一回の飛行は6人とのことで、私達も3組に分かれて順番を待った。
                      天気が良かったし、次々に帰って来る他の客の表情も笑顔ばかりだったので、最初旅行スケジュール
                     で見た時にあった不安はなくなっていた。4〜5人の黒人のスタッフが乗客のメンテナンスをしており、
                     グループ毎にハウスの壁にある飛行予定ルートを見ながら説明を受た。概ねビクトリアフォールズの上
                     空を上流の西側から東へ、さらに南へむかって北へ戻る約15分の飛行とのことである。
                      私達は一番先の飛行だった。ベルトが確かめられ、ドア―がしっかりと閉められると、一瞬の緊張感
                     があったが、エレベーターに乗っている感じで飛び上がり、眼下にフォールズの広がりが見え始めると、
                     爽やかな気持ちになっていった。
                      ビクトリアフォールズは地上に出来たクラックが始まりであるとの証が、1目瞭然で示されるといっ
                     たような、サバンナの平面的な大地に広がるザンベジの川があり、滝の部分がそのほんの一部である様
                     子を上空から眺めて行く。
                      機は1昨日観たデビルズ・キャトラクトかに近寄り、滝の流れ落ちるクラック上を飛んで対岸のザン
                     ビア側で回転し、ザンビア側の今は枯れているイースト・キャトラクトからナイフエッジとジンバブエ
                     側のデインジャーポイント辺りを南下していった。
                      ビクトリア大橋より下流は鋸の歯のようにジグザグな深い川筋が続き、川の底が見えないほどである。
                      何十万年、滝は浸食を続けてこの筋を上ってきたのであろう。上空から見るも、その先は遥か彼方に
                     霞んで続いていた。
                      ヘリパットに引き返す途中、私達の宿泊した「ホテル・キングダム」が見えた。上からの眺めはおそ
                     らくホテルの設計が想定した世界遺産グレートキングダム遺跡を思い浮かべるイメージなのであろうか、
                     たった2日の滞在であったが懐かしい思いがした。 
 
                      朝の曇りはどこえやら、気温がどんどん上がっているようで、ハウスのテラスでは霧吹きを加えた大
                     型扇風機を廻していた。
                      ヘリコプター遊覧を終えて、他の人達の搭乗が終わるのを待ちながら、私はハウスの売店で土産物の
                     品定めをしながら絵葉書を買っていると、誰かがジューススタンドでカウンターに山積みされたオレン
                     ジを絞って提供してくれることを聞きだしてきた。数人の仲間と注文すると、傍にいた従業員が鼻歌を
                     謳いながら機械に取り付き、早速1カップに4個もオレンジを使って絞ってくれた。
                      氷は入らないが、4個のオレンジのうち2個は大型冷蔵庫から出したものを使ったので、冷たさも程
                     々に素晴らしいフレッシュジュースの御馳走を、皆$4払って飲んだ事も楽しかった。

                      気持ち良くヘリコプター遊覧飛行を終えた私達は、ヘリパットを後にしホテルへ戻った。
                      私達は、3日前に来た道を、今度はジンバブエからザンビアへビクトリアフォール大橋を渡り、ザン
                     ビア側の国境検問所を通過する。そしてリビングストン空港に向かい、ザンビアを離れ南アフリカに飛
                     んで、次の目的地首都プレトリアを目指すのである。    
                                                                          風次郎
                     アフリカ南部の旅(8)へつづく

  
ホテルの鉄製モニュメント                   上空からのビクトリアフォールズ

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