風次郎の世界旅
 アフリカ南部の旅
(1)

  
像のファミリー                         喜望峰

1.(前章) サバンナの大地へ 

 
                   そこに像たちの大家族が、子象を囲みこんで草を食んでいる平和な世界があった。カバが川を泳ぎ
                  私達の20メートル先の茂みには、2頭のキリンが首を延ばしてこちらを眺めている自然の世界であ
                  る。 
                   生態を乱さないようにお互いに譲り合って過ごすことこそが平和であることの実感。危害を離れつつ
                  そこに入り込んで来た人間たちも只、まなこ(眼)を開いて過ごすだけ。と、知らされる清々しいひ
                  と時であった。
                   エンジンを切ったジープの上からではあるが静かで雄大な世界である。あれ程の信じられない近さ
                  で動物たちと過ごせたあの時間が、今回の旅の最も素晴らしい体験であったように思う。
                   確かに画像では何回も同じ場面を体験してきたのだし、動物園では身近に寄ることもあった。だが、
                  ここの、彼らが棲息するサバンナの大地の、日常のままを感じ取ることは出来ていなかったからだと思う。
                   体格の良い大きな像が群れを警護し、数頭の子象を仲間の間に守っている自然の情景には、自然の
                  中、故にしみじみとしたものがある。他の動物たちの群れにもそれぞれの生きる術(すべ)が、おざ
                  なりにできない掟のように存在するのかも知れない――。
                   澄み切った青空の下で、チョベ国立公園のサバンナを行くゲームサファリ。ジープの上で、初夏の
                  心地よい微風を感じながら時を過ごす――。

                                      * * * * * 

                   広大なサバンナに悠然と搖蕩う河、現地2日目の朝、ジンバブエのヴィクトリアホールズ市から国
                  境を越えてボツワナに入った。目的地はチョベ川(ザンベジ川上流)に隣接する1万平方キロを超える
                  自然公園、チョベ国立公園である。
                   ここも昨日ザンビアとジンバブエ国境で見たように、大きな荷台を繋いだ検問を受けるトラックな
                  どで長い行列が出来ていた。
                   昨日ザンビアのリビングストン空港から私達のガイドに加わったブライトン(英系黒人=ジンバブ
                  エ人)が案内にたってくれ、一人一人がパスポートのチェックを受けて通過した。現地語の「こんに
                  ちわ」に該当する言葉は「モロイー」だそうだが、国境の係官は私達に「おはよう」や「こんにちわ
                  」と言ってみせ、日本人への親しさ強調してみせる雰囲気もあった。、
                   そこから約20分、茅葺の民族家屋風の建物をあしらった公園内のロッジに寄り、望遠鏡を出した
                  り、女性はスカーフを巻くなど準備を整えてからジープに乗って公道を5分走る。簡素なゲームサ
                  ファリ(公園内のジープによる観光をこう呼ぶ)の入場ゲートを潜り抜けてなだらかな砂丘を登り切
                  ると、ブッシュの彼方にチョベ川が見渡せた。
                   砂地をジープがゆっくりと川辺に出て行く間に、最早中洲の緑地に群れる像が見えてきた。さらに
                  インパラも沢山いることが解った。
                   私達は望遠鏡を出して、しきりに右手の中洲の方を観察し続けたが、ジープが進むと、やがてこち
                  らの陸地側にも木陰に色々な動物たちがいることが解った。ホロホロ鳥や、イボイノシシであること
                  をガイドを兼ねたジープのドライバーが教えてくれた。少し離れたところに、カモシカに似た感じの
                  動物が2頭立っていた。角が捩じれているところがカモシカとは大いに違う。すぐにドライバーが「
                  グーズー」だと教えてくれた。グーズー(現地ではKudus)はジンバブエの国章に用いられている象
                  徴動物である。
                   又、誰かが「あッ、キリン!」と叫んだので左の砂丘の上にある木の方を見ると、2頭のキリンが
                  こちらを見て立っている。驚いて逃げるわけでもなくじっとしている。
                   その辺りの茂みの中には、インパラの群れが10頭余りの家族でまとまっていた。尻のあたりに縦
                  の線が入っている特徴のあるインパラ達である。
                   私達は興奮を抑えながら静かに進んだ。走行跡のある砂漠の砂のような細かい砂地がチョベ川に沿
                  って続いていた。
                   やがて私達の行く手、前方左の木陰から20頭もの像の家族が川に向かって移動し始めるところに
                  遭遇した。ドライバーは目前までジープを近づけたが、像の一団は動きを止めずむしろ砂煙をあげて
                  道を横切ってくる。最後尾の大きな体躯の像が、家族を守る為に、ややこちらに体を向けながら彼等
                  の万一の危機に備えているかの様子が伺えた。家族の象たちは子像を列の中央にしながら川に入り中
                  洲に渡って行った。

                   広い中洲はかなり上流まで続いており、多様な動物の群れが雨季から乾季への移動の季節の食を得
                  ているのであった。
                   この一帯で棲息するのは像が多いとのことであったが、他にもインパラ、バッファロー、サイ等の
                  群れも多かった。数等のシマウマも見る事が出来た。
                   そういった大型の動物の周辺には鷺の類や小鳥が集まって、掘り起こされた草地の虫を食んでいる
                  のであった。そればかりか、像など大きな動物たちの糞は鳥たちの餌にもなっているのだと言う。鳥
                  は50種類に及ぶそうだ。なかには大型の動物に親しそうにまとわりついき、頭や背中に乗って啄む
                  鳥もある。和やかさと共存の絵図を見るようであった。
                   私達は砂丘の高台に上がり、初夏の風に汗を拭った。添乗員が持ってきてくれた清涼飲料水が暑さと
                  興奮で乾いた喉を潤してくれた。

                   この日の午後には、休憩地からは遥かに見えるチョベ川からザンベジ川の本流にかけて、今度は船
                  で巡り(ボートサファリ)、動物たちにさらに近寄って観るもう一つの大きな楽しみが控えていた。
                   ジープは来たルートを引き返し一旦ロッジに戻る。

                   旅はまだこれからだと、私は期待に胸を膨らませていた。

                                                                     風次郎
                   アフリカ南部の旅(2)へつづく


バオバブと像のファミリー


       
                                                                

* 『アフリカ南部の旅』のトップページへ
* 『風次郎の世界旅』 トップページへ戻る
* アフリカ南部の旅(2)出発へ
* 風次郎の『東京JOYLIFE』TOPへ