メイン・フォールズ リビングストンの像
ヴィィクトリア瀑布は、ジンバブエ共和国とザンビア共和国の国境にあり、現在、ジンバブエにお
いては「ヴィクトリアフォールズ」、ザンビアにおいては「モーシ・オワ・トゥーニャ( Mosi-oa-
-Tunya、「雷鳴のする水煙」という意味)が公式名称である。ユネスコ世界遺産の登録名はこの2つ
を併記している。
世界中から年間30万人が訪れる有名観光地である。
英スコットランドの宣教師であり探検家でもあったデイヴィッド・リヴィングストンは、1852年か
ら1856年にかけてザンベジ川の上流から河口にかけて探検し、1855年11月16日にヨーロッパ人として
初めてこの滝を目にしたのであった。そしてカヌーで川を横切り、滝上の島にも上陸した。
そこで、彼の島は Livingstone Island と呼ばれているのであり、イギリス人達は当時のイギリス
女王の名 Victoria を冠して滝の名を「Victoria Falls」と呼びはじめたのである。
長いザンベジ川の上流は玄武岩台地で、砂岩で満たされた大きな割れ目(クラック)が数多く存在
しており、そこに流れ落ちる水流が滝となっているのだ。現在の滝のある場所には、東西(いくつか
は北東―南西)に走る大きなクラック群と、それらを接続するように南北に走る小さなクラック群が
あり、滝は過去10万年以上もの年月をかけてこの砂岩のクラックを侵食してきたのだという。また、
滝は今も北に後退し続けているのだとのことである。
上流は砂岩の上に堆積した平坦な玄武岩の層を流れるが、川には樹木で覆われた小島が点在し、滝
に近づくにつれてその数が増している。
通常、滝を形成するのは山地や断崖、渓谷などであるが、ここにはそういったものは一切見られず、
滝の周囲数百kmにわたって平原が広がっているのだ。私はその状態をリヴィングストン空港着陸の直
前に機上から眺める事が出来た。
滝の下流では、滝の辿ってきた侵食の地質学的な歴史を見ることができ、ジグザグに続く峡谷は、
それぞれが各時代における滝の痕跡であると言われる。これらの峡谷は、かつての滝が現在よりも大
きなものであったことを物語る証(あかし)である。
その落差=最大108メートルと幅=1,708メートルは滝の規模として、南アメリカ大陸にあるイグア
スの滝と並んで世界最大であり、3大瀑布と言われるナイアガラの滝もこの2つと較べるとかなり小
さい。また、増水期の水量においてもイグアスと並んで世界最大級とのことである。
[なお、落差世界一はエンジェルフォール(ベネズエラ)の 978m、幅世界一はイグアスの滝(アル
ゼンチン、ブラジル)の約4000mである。]
○
ブライトンという背の高い黒人のガイドがバスに乗り込み、ホテルから滝の観光に向かう。
写真つきのマップが各人に配られ、ブライトンは茶目っ気に「モロイー・こんにちわ―」と挨拶し
て皆を沸かせた。「モロイー」は現地スワヒリ(サファリはこれが語源化か)語だそうである。
10分もしないで到着した石柱の門のある簡素なジンバブエの公園入場口から喬木の林の中を進ん
だ。ジンバブエ側のヴィクトリアフォールズ国立公園、ザンビア側のモシ・オ・トゥニャ国立公園、
川を挟んでどちらも滝を取り囲むように有料の自然公園として整備されている。公園は高い柵で囲ま
れており、公園に入らなければ滝に近づくことができない。
すぐに、滝の轟音が聞こえてきた。
手にするマップには15のビュウポイントが示されており、その一つ一つを眺めていくのである。
ライトンの案内に従って、西側の滝から観て行く。サークル状の広場があって中央に滝の存在を
広めた探検姿、リヴィングストンの像が立っており、足下に解説のプレートと探検に使われたカヌー
の復元模型が置かれていた。
その先は轟音の主、デビルズ・キャトラクトと名付けられた滝であった。
デビルズ・キャトラクトはキャトラクト島と呼ばれる滝上部西側にある島を挟んで流れ落ち、水飛
沫をあげている。それが風を起して私達を覆って来るように寄せてくる。風も相当に強い。巻き込ま
れて濡れると豪快さが伴う。
一方で、林の背後からは丁度傾いた陽光が差し込み、霧の流れの中に美しい虹が生まれているのが
華麗であった。
夕陽が傾く好いタイミングであった。
虹は沸き上がる水飛沫の中に生まれ、流れる霧の中で大きくクッキリと見えたり、霞んだりした。
皆、水飛沫を、嬉々として避けながら、虹を背景に沢山の写真を撮った。
ビューポイントはそれぞれの場所で、対岸から流れ落ちる滝と水飛沫の沸き上がる滝壺が岸壁に近
づいて覗きこめるようになっていた。
全長 1.7Kmに及ぶ滝の淵には、水量が多い時期でも水没しない2つの島(Cataract Island
と、中
央付近にあるLivingstone Island)があり、流れは3つに分割されて呼ばれている。
西から順にそれぞれデビルズ・キャトラクト= Devil's Cataract ( Leaping Water)、メイン・フ
ォールズ=Main Falls、レインボウフォールズ=Rainbow Falls である。
私達は次に、キャトラクト島とリヴィングストン島のあいだにあるメインフォールズ、の前に立っ
た。
水飛沫はさらに激しく豪快であった。風とガスが沸き上がってくる合間をうまく縫って、陽に映え
る滝のカーテンが滝壺に至る様を覗き込むことができた。下から上がって来る水噴煙は巻き上げられ
るように高く青空に登っていった。
ヴィクトリア瀑布で最も高い100mを越える落差と、広い幅のある滝 はRainbow Fallsであるが、
今(9〜1月)が渇水期で、水量の少ない時期のため落下する滝は見る事が出来ないのである。しか
し、滝の水量が少ない故、滝全体を滝壺まで見渡すことができるということで、そこでは長い本来滝
の水流が覆う岸壁や滝壺の岩肌をとくと覗いて観る事が出来た。時間さえ許せば滝壺に下って歩くこ
とも出来ると言うことである。
又、この時期は、滝の淵にある小島が大きくなり数も増えて、噴煙も少ないため島の地表が乾き、
対岸ザンビア側からは滝の淵にできた小島に徒歩で渡ることができるという。
増水する雨季には他にも名前を付けて滝筋を呼び分けたりするようだが、滝の見物には必ずしも向
いている訳ではないようである。雨が鬱陶しいばかりか、噴煙が多すぎて晴れても滝壺はおろか滝本
体を見ることも困難で、滝の正面にある遊歩道には噴煙水がシャワーのように降り注ぐという。崖の
淵まで行くと立ち昇ってきた噴煙水によって「下から上に風雨に襲われた」ような状態となってしま
うことのようだ。
しかし、水量が豪大に流れ落ちる滝はより壮観であろう。
私達はブライトンに案内されて、最も深い滝壺が覗ける、デインジャーポイントまで行った。対岸
ザンビア側の鋭く突き出た岬、ナイフエッジとの間は狭隘な真さにクラックであり、眼下にはレイン
ボウフォールズの巨大な滝壺を、この季、少なくなった水流が通過しているのが見えた。文字通り危
険な場所、故に人気ポイントである。私は大きな石の上に立って夕陽を浴び、記念写真を撮ってもら
った。
近くに先ほど国境を超える前に通ってきた「ヴィクトリアフォールズ橋」を観る事が出来た。この
橋は、観光地として発展を見せるようになった1905年に架けられたのであった。当時はザンビア、
ジンバブエともにイギリス領だったこともあり、ヨーロッパからの観光客はすでに多かったようであ
る。しかし、1960年代から70年代にかけてのジンバブエ内戦勃発により滝の周囲は立ち入り禁止とさ
れ、1980年代になって情勢が安定してから、再び観光地としての人気を取り戻した実情がある。
国境検問所はこの橋を挟んで両国が互いに敷設しており、今、その間にあるこの橋の往来のみはビ
ザが不要とのことである。マニアだけでなく観光客のバンジージャンプなどでも人気のある由、平和
と共に美しい鉄橋である。
サバンナ地帯特有であろう、主にモパネ(マメ科の木である由)の、空からは草原のように見えた
森林の中を公園入口の方へ、帰り道を歩いた。滝の噴煙が、殊に雨季には降り注ぐことで熱帯雨林が
形成されたのだという。ガイドのブライトンが、ポッドマホガニー (pod mahogany)、コクタン
(ebony)、アイボリーナッツ (ivory palm)、サトウナツメヤシ (Phoenix sylvestris)等と教えてく
れた。
風次郎
アフリカ南部の旅(5)へつづく
虹とリビングストン島 デインジャーポイントから滝壺を見下ろす
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