風次郎の世界旅
   南フランスからパリ2007秋
   
   

                                                    BGM by ASSO 「虹の音色」



法皇宮殿最上階から旧市街を眺める(南ローヌ川下流方面) 

          5.アビニョンにて

アビニョンは旧市街地が城壁に囲まれたままの姿で市の北に位置し、城壁の南
側にあるアビニョンの駅から新市街地が南に広がっている。
 私たちの泊まったホテルは新市街地の東南、幹線道路ピエール・マルセド通り
とロカデ・チャールス・デカーレ通りが交叉する角にあった。
 若い女性のコンサルジュにたずねると、旧市街地までの道はマルセド通りを真
っ直ぐに30分で行けるとのこと、地図をもらって私は早朝散歩にそなえた。

 翌朝5時30分、眠そうにしている若いフロントマンに「おはよう」と声をか
けて外に出ると、昨日アルルで身に受けたままの冷たいミストラルが街路樹の下
に落葉を煽り立てるように吹いていた。
 少し寒い。手も冷たいくらいだった。
 しかし歩き出すと朝のさわやかな空気の方が心に和み、体の寒さは離れていっ
た。
 この地域にはスポーツセンターが幾つかあるようで、大きな屋根の建物に向か
って最早センターにトレーニングに行くのだろうか、スポーツウェアを着た若者
とすれ違った。
 私もマルセド通りを早足で北へ向かう。
 4車線に歩道のついた広い通りであった。右手に大きな丸屋根の、これは何か
の市場だろうか、それとも資源の保管施設なのだろうか、鉄道の引込み線のある
建物の脇を通った。
 やがて城壁をぐるりと取り巻いているセント・ミシェル通りへぶつかり、それ
を突っ切ってリンベルト門から城壁内へ入った。ホテルから丁度30分だった。
 ピエール・セマルド通りには幾つかの店に灯かりが灯っていたし、数人のすれ
違う人にも会ったのだが、城壁の内側はまだ眠ったままの街で、それが古い時代
の街の空気をそのまま残しているような不気味な静寂が漂うような感じだ。
 道は狭くなったり、広くなったり、なかなか地図を見たイメージとは一致して
いなかったが、学校があり、教会があり、町の公会堂など古い建物を確かめて歩
いた。
 公会堂を先に進むと地図上は宮殿の方に向かうのであったが、あまり時間に余
裕が無かったので私は反対方向の駅に向かって戻ることにした。城壁内の様子を
少し知ることができただけで満足だった。
 そのあたりにはすでに駅から職場に向かうらしい通行人があった。
 そして、朝食の出そうな小さなカフェがあった。
 少し大きな教会のそばを曲がり、セント・ミシェル門から城外へ出た。
 駅を右に見てガードをくぐり、セント・ルフ通りを南下してホテルへ向かった。
 そのあたりは商店街であった。丁度朝市の開かれる日らしく、トラックで運ば
れてきたさまざまな商品を路上に広げている人々の雑踏ができていた。
 近寄ってみた。農産物、食料品、医療雑貨であり、どこの国もこのような市の
雰囲気はかわらないかな、と思った。時間に余裕があれば品定めも面白いし、何
より地元の人々との会話はたどたどしくとも楽しいのだが、割愛せざるを得なか
った。
 いくつも街角を曲がって7時にはホテルに戻った。
    
       ○

 バスは予定より早めにスタートした。調子が出てきたようでメンバーは皆張り
切っていた。アビニョン旧市街地の観光である。
 バスの駐車場はローヌ門をくぐり、城壁内の北側、宮殿に並ぶロシェ・デ・ド
ン公園の真下にあった。
 法皇宮殿の開城時間に余裕があるとのことで運転手のジョージが「ローヌ川の
対岸まで行ってみよう」と添乗員の田上さんに同意を求めた。もちろんOK。
 アビニョンが有名になったのはローヌ門に接続する場所から川中に突き出して、
今も半分残るいわゆるアビニョンの橋「サン・ベネ橋」であるが、その少し下流
にある近代的な大橋ダラディール橋を超えて向こう岸の公園まで行った。
 風はまだ少しあったが、快晴の晴れ上がった空の下にアビニョンの城山一帯を
見渡せ、その上にそそり立つマリアの塔が朝陽に光る風景が素晴らしかった。
真っ青な空がローヌ川に映りアビニョンの橋も風雅を満喫させるモチーフそのも
のであった。

 世界遺産「アビニョン歴史地区」の中心をなし、丘の上に聳える法皇宮殿は巨
大な城塞のような建物であった。
 14世紀フランス王フィリップ4世の威嚇によってローマ法王庁がここに移転
され、以後70年にわたる法王庁宮殿としての歴史を綴る。
 古い歴史をそのまま物語る木の門扉や、荒れたままの内外壁が時の流れを感じ
させるに充分だった。法王庁時代は贅沢な生活の場であったらしきその居室の調
度品や飾り物が残されていたが、フランス革命による開放は、破壊と略奪に任さ
れたまま、今は管理されているとは言うものの荒れている部分が多かった。

法皇宮殿はくまなく歩いた。建物にあまり手が入っていないのが私には返って
修正のない自然な印象だったように思う。古いままの朽ちた門扉の前で写真を撮
った。
 最上階マリアの塔の下に眺めが絶好のレストランが設けられていた。中へは入
らず、皆でベランダからの眺めを楽しんだ。自分たちの歩いてきた坂道が見えた
し、ローヌ川の延々と続く景色が、アルルやプロバンスへの懐かしさを誘った。

 丘の上の法皇宮殿を出て、大きな楓の木のある坂道の洋品店で、はなと仲間の
女性たちはカラフルなショールを買った。そして、表通りの角にあった土産品店
では子供たちへのおみやげに人形を買っていた。
 坂道を抜けてくる風は少し弱くなったように、紅葉した木の下で日向ぼっこを
している私にはやさしく感じられた。

 法皇宮殿から街並みへ出たところにある高さも幅も2mもありそうな、薔薇を
形どった石の彫刻が噴水になっていて、そこが昼食へ向かうときの待ち合わせ場
所に決められていたので、噴水の縁は皆のベンチと化した。薔薇の噴水が良かっ
た。
 昼食のレストランへは坂道を下って駅の方へ歩いた。
 国際色豊かに色々な国から来た人たちが窓外のテーブルを囲んで賑やかに昼食
時を寛いでいる市役所前の広場を通って、ホテル街のツーリスト案内所近くにあ
る「LE PICHEI」という店でポークを食べた。
 ここでもプロバンスの野菜が豊富にでて安心して腹を膨らませた。

                                             風次郎


国際色豊かな人々で賑わう市役所近くのカフェの並ぶ広場

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