BGM by ASSO 「虹の音色」
オルセー美術館
朝食のあと、私とはなは田上さんに断ってお昼までの時間、グループを離れオ
ルセー美術館を見学することにしていた。ツアーはベルサイユ宮殿を見学するこ
とになっていたのだが、一度も行っていないオルセーの体験と何よりルノアール
のムーラン・ド・ギャレットを見たかったからである。
私たちは9時にホテルを出た。
タクシーの運転手は英語が理解できなかったが「オルセー」だけで分かってく
れた。セーヌを渡り、真っ直ぐ左岸を下れば良いだけだから何も不安はない。
試すつもりで、はなに向かって英語で「英語が話せないらしい」と言ってみた
が運転手は黙ったままだった。こちらはフランス語がだめだから仕方ない。
早朝歩いた図書館の前を通り、シテ島のノートルダム寺院を見上げながら10
分程度でオルセーに着いた。
「メルシー!」気前良くメーターの5割り増しでユーロを渡し、
「Have a nice day!」と言ったら、
「Thank you so much!」と、若い運転手は笑顔で握手してくれた。もしかした
ら、彼は出稼ぎの外人でフランス人ではなかったのかもしれない。
オルセーの前にはすでに入場者の行列が出来ていて、最後尾で係員が整列を
促している。「切符を持っていないんですが?」と聞いたつもりだが、「この列に
並べ」と言うので、そこが入場券を買う列だろうと並んだ。周りはフランス人ばかり
で、中々日本人が見つからず、切符のことが気がかりだった。そのうち列が動き
出し、先のほうの人がドアの中に入っていくのが見えた。そしてちょうどジグザ
グの列の反対側の日本人らしい父子と対面になったので、
「この列で切符買えるんでしょうか?」と聞くと、
「私たちも持っていないんですよ。今日は市民デーで開放されているので入場無
料だから大丈夫ですよ。」と、教えてくれた。やれやれと安心した。そして、
「ちょうどうまい日に当たったものだ」と、はなと一緒に喜んだ。
オルセーは元オルレアン鉄道の終着駅の駅舎を使っている。入ってすぐ見上げ
る天井が駅舎の雰囲気を語るに充分だ。話すことが反響してきそうで、声を潜め
なければと思わせる感じさえする。
1階でミレーとコローを観た。両者ともバルビゾン派の人気の高い作家である。
私はミレーの「晩鐘」が好きでコピーを信州の「南天寮」に飾っているので本
物を篤と眺めた。バルビゾンはフォンテンブローに近いイル・ド・フランスに集
まった印象派の面々が、自然風景や農民の姿などを好んで描いた地域である。ミ
レーの作品では「種まく人」を山梨県美術館でも何回か観たが、彼の持つ農民を
対象にしたモチーフは、今でもとてもユニークで信仰的だと思う。彼は農民の子
として生まれ教会の唱歌指導をしていた父の子であるから、生涯信仰心が彼のど
こかに潜み心をとらえていたのかも知れない。
その点同じバルビゾン派でもコローの絵は人の動きも含めて風景描写がとても
滑らかでナイーブに感ぜられる。
中階を通り越して上階で念願のルノワールを観た。勿論「ムーラン・ド・ギャ
レット」に時間を割いたが、私はこの絵こそヨーロッパ、殊にパリを代表とする
社交的市民文化に憬れる人々の風景を適切に表したものだという気がしている。
この絵こそヨーロッパと言いたくて1度本物のお目にかかりたかったのである。
ルノワールはこういった主題を好んだと言われるが、多くの人々がいて楽しさ
の溢れる風景には絶賛を贈らざるを得ない。好きな絵だ。
モネの貴重な作品「日傘の女」も良かった。さすがに人だかりは「ムーラン・
ド・ギャレット」の次くらいだったろうか。
思っていた通り、オルセーはフランス絵画が最も華やいだ時代である印象派の
良い作品を集めて素晴らしい。ドガやモネの観賞にも充分浸ることができた。つ
い先日プロバンスで、彼らが遊んだ現場を味わってきたゴッホやゴーギャン、セ
ザンヌの絵もたくさん見ることができた。
最後に2階のロダンの彫刻を見て喫茶室に空席を見つけ、はなと2人のコーヒ
ーを楽しんだ。明るい外の光が一杯に広がる大きな窓の下に設けられたレストラ
ンは大混雑だったが、この窓がセーヌ川の向こう岸からも見える窓かと思うとひ
とつの記念でもあった。
オルセーはとても開放的で写真撮影が自由である。最近の国宝級を飾る美術館
では珍しいと思う。写真では作品の雰囲気は殆ど味わえないが、沢山の写真を撮
った。
オルセー美術館を出て、セーヌ川の左岸に沿ってはなと歩いた。
昼食時間の待ち合わせまで1時間くらいあった。陽射しは薄かったが風も無く、
大勢の人の中から出てきて歩くにはちょうど良かった。昼食会場がエッフェル塔
とアンヴァリッドの中間あたりに当たるボスキュート・アヴェニューにあったか
ら、私たちはコンコルド橋、アレキサンドル3世橋、アンヴァリッド橋と歩き続
けた。晴れた日曜日のセーヌ川は満員の観光客を乗せたクルーザーが頻繁に行き
来していたが、左岸は歩いている人もまばらで静かな昼時であった。
河岸の通りを離れて2〜3の街角を折れボスキュート・アヴェニューの中華レ
ストラン「フォンテーン・デ・ジャーデ」に着くと、丁度ヴェルサイユの観光を
終えたジョージのバスがグループ仲間を乗せて到着したところだった。
オルセーは撮影OK、念願のムーラン・ド・ギャレットを観た
風次郎
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