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風次郎のColumn『東京楽歩』
(No373T−89)
ル・アーブル、ウール停泊地(ブーダン)パンフより
2014年10月
東京楽歩(No89)
ノルマンディー展
ノルマンディーは第2次大戦の激戦地(映画「史上最大の作戦」など)で有名だが、風
光明媚な海岸地帯からセーヌ河口一帯は19世紀前半、印象派への流れの中で自然の風景
を描き始めた近代の風景画家たちに好んでモチーフにされた。
今回の展示は「印象派のふるさと・ノルマンディー展−近代風景画のはじまり−」と題
され、損保ジャパン美術館が仏ノルマンディーのセーヌ河口の町ル・アーヴルの「アンド
レ・マルロー美術館」の協力で9月から開催されている。
友人からいただいたパンフレッドの表面に掲げられたブーダンの「ル・アーブル・ウー
ル停泊地」があまりに魅力的で、それにこの夏はミレーからバルビゾン派の作品をよく見
たので、それに至る過程にあった海の風景画の巨匠たちに触れるのも楽しかろうと出掛け
て行った。
海の風景画では私はターナー(ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775
−1851))が好きだが、彼は英国人でノルマンディーには馴染がないと思っていた。
しかし、マルロー美術館の収集品であろう、展示室に入ったばかりのところに小さなタ
ーナーの彫刻版が2枚飾られていた。『セーヌ逍遥』と題したアルバムのなかの「ル・ア
ーブル」と「ラ・エーヴの灯台」は小品であるが輝く作品に見えた。
しかし、何と言っても展示室に堂々と明るく光を放つような雰囲気をもたらしていたの
は1.5×2mの大キャンパスに描かれ、入江に帆を巻いて停泊する船を、雲を明るく染めた
空が照らしているウジェーヌ・イザベイの作品「トゥルーヴィルのレ・ゼコーレ」である
と思う。
展覧会のテーマからしてノルマンディーであるから、同じような停泊地のモチーフを扱
ったものは多く、ジャン=ルイ・プディの「嵐の中のオンフルール」などは迫力があった。
作家的に小生の感覚と合うのかなと感じたのはウジェーヌ・ブーダンで、勿論パンフを
飾っていた「ル・アーブル・ウール停泊地」(65X90)の画の前に張り付いて観た。
帆を降ろした帆船が、低い陽に照らされて穏やかな水面に立ち並ぶ風景は、オンフルー
ルで生まれ、生涯をかけて雲を理解しようと絵に取り組んだと言われるブーダンの現わす
雲の下に、静かな反射光を漂わせているのである。
ブーダンの作品は「コーのセーヌ河」も36x58とやや小さいが、気に入った一つである。
ノルマンデーで「海の景色」を生み出したと語られるギュスターブ・クールベの、端正
に描かれた「波」の絵は浜の草地と空の調和が絶妙で、たまたまこれはオルレアン美術館
の所蔵しているものを唯一展示されただけに、貴重なものと受け止めて帰ってきた。
美術史を紐解くとこの頃(1827年)写真が発明されている。
絵具が発達し、さらに絵画の教育に及び、絵画の産業化まで促される一方で、写真は瞬
く間に改良されて、肖像写真として利用されるようになる。それは画家たちが職にあぶれ
るようになる一因でもあったが、一方でこれは新しく印象派、印象主義へ向かう動機づけ
ともなったのであろう。
19世紀後半のフランスに発した絵画を中心とした芸術運動(印象主義)は、当時のパリ
で活動していた画家たちのグループが起源である。
フランスの保守的な美術界からの激しい批判にさらされながらも、独立した展覧会を連
続して開催することで、1870年代〜1880年代には存在が認められてくる。この運動をクロ
ード・モネの作品『印象・日の出』に由来したとして印象派と呼んだのである。
それに先立つ、モネに端を発する印象派へと引き継がれる以前のロマン主義の画家たち
は風景に対する新しい感覚を取り入れたのであった。
19世紀に入ってからの芸術への関心の高まりの中で、ノルマンデーは画家たちにとっ
て新しい方向性を見出した地だったのである。
セーヌ川を下った河口の港町に広がる処、オンフルールの農の地を含め11c〜12C
のアングロ・ノルマン王国時代の歴史遺産と共に広がっている風景は、古代の建造物や廃
墟とともに絵になる美しさに満たされていた。
バルビゾン派から流れてきた美術への傾倒は、ノルマンディーの地からやがて広く印象
派の時代へと広がったのであった。
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会場には1955年生まれの写真家オリヴィエ・メリエルが、第2次大戦後に印象派の使った
モチーフを求めてノルマンディーの地で製作(撮影)活動した写真の展示がある。「写真
で見る描かれたその場所の今」と言った嗜好である。写真としての芸術味も加えられてお
り、ユニークで興味をそそられた。
風次郎
「ジュミエージュ修道院の眺め」
作者不詳の油彩(81x65)パンフより
素晴らしい画でした。
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