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風次郎のColumn『東京楽歩』  
  (No339T−70)

                                       東京の街に降る雪(2014.2)                                                                                                    

                                                                                   2014年3月2日
          東京楽歩(No70)雪(1)

                                「今年の冬は寒い。」そう思って過ごしていた。
                                東京は晴れた日が続いていたが、毎朝土の表面には霜が立ち、ちょっとした水溜りには
                               氷が張り、まだ若い我が家の愛犬は、散歩に出て初体験のその氷の上を歩くのにビクつい
                               ている様子を見せたりした。
                                関東が晴れている分、裏日本、北日本は雪が降り続いていた。彼の地の豪雪のニュース
                               は連日のようにテレビの気象番組で取り上げられていた。
                                2月に入り半ばの週末、14日の朝に東京にも雪が降り始めた。
                                実は前日あたりから太平洋沿いにも雪が降りそうだとの予報が立ち、それが大雪警報に
                               変わっていくのであるが。

                                金曜日は毎週日本橋まで“経済倶楽部”という勉強会に通っている。
                                それは昼からだが、その日は歯医者に通うのと、アメリカに居る長男から青山学院に寄
                               って資料を取り寄せておいて欲しい、との序で仕事を頼まれていたので、朝から家を発っ
                               た。
                                小雪であった。
                                「これが1日降れば、東京の交通は唯では済まされまい」との懸念があった。
                                青山通りに向かって渋谷駅から宮益坂を登ったのは11時半頃であった。
                                雪は小粒で舞雪ではなく、湿り気が多いのかほぼ真っ直ぐに空から落ち、地表に当たっ
                               て濡れてゆく。次第にあちこちが白い面に変わりつつある状態だった。
                                「もし積もれば重い雪、冷えてくればボタ雪になるかも知れない」青山通りを歩きなが
                               らそんな風に思って傘で避けながら青山学院の門前に立つ。と、コートを纏った守衛が、
                                「今日は入学試験をやっているから」と、別の入場門を案内している。
                                「学生も気の毒に、どうやら例年入試の頃、雪の降ることが多いようだ――」
                                構内に入り、キャンパスの食堂の前を通ると、さすがに大勢の受験生らしき集団があち
                               こちに出来ている。
                                試験は丁度昼休みに入ったところなのだろう。
                                整然としているキャンパスではあるが、外の空気を吸って体調を整える訳にもいかず、
                               窓から雪景色を眺めて過ごす受験生の気持ちも思いやられるといったところ。
                                私は、青山から日本橋に足を運んで、午後1時には東洋経済新報社のビルに入ったので
                               あるが、その頃はまだ街は一面の白さを見せている訳ではなかった。
 
                                “経済倶楽部”は3時には終わった。いつものことだと、仲間内でtea timeを談笑するの
                               であるが、大事をとって早めの帰宅を心掛けることにした。
                                雪は牡丹雪になっていた。
                                「積もるかも知れない」と思った。

                                東京駅から中央線の電車に乗って帰る筈であった。席を得て、窓を見ると、ぶつかる感
                               じの大粒の雪が降り続いている。
                                電車が遅れ始めていたところに、時を合わせたようなアナウンスが入った。
                                「国立駅で人身事故が発生し、出発を見合わせます」とのことである。さらに「発車の
                               目途は立たないから、他の手段をとってほしい」由、参った。
                                大体こんな時にはそんなもので、直接雪の原因でなくとも、何かの影響で渋滞の如く電
                               車のダイヤ不調は拡大する。
                                取りあえずは2〜30分の遅れは覚悟せねばならない。さもなくば順調に運航している
                               他の路線ルートで帰ることを検討しなければなるまい。
                                私の場合は、川崎経由南武線で「谷保」又は「立川」行ってあとは歩くか、京浜東北線
                               で南浦和に行き、武蔵野線に乗り変えて西国分寺を目指すということになる。
                                郊外路線の雪の状況も分からないのだから30分位辛抱強く待つ手もある。
                                乗客はうろうろと、電車から降り、或いはホームを変える為エスカレーターへ向かい始
                               めた。
                                こんな時は、生来のセッカチがなかなかジッとして気長に待つことを許さないから、結
                               局は山手線に乗り変えて川崎に向かうことにした。しかし、途中品川までの車内放送は中
                               央線の運航異常を何も言わない。
                                私は心中、「もう復旧したのかも知れない」等と不安を探りはじめ、期待を込めてその
                               まま新宿へ行くことにした。ところが、案の定、新宿駅ではまだ中央線は止まったままだ
                               った。
                                残念だったが、今度は埼京線で武蔵浦和に向かいそこで武蔵野線を使って西国分寺まで
                               を辿ることにして歩きはじめると、「間もなく中央線が復旧する」旨の放送が入ってので
                               あった。
                                「やれやれ――!」「やはり落ち着いて待つ者の勝か」と、
                                「大混雑かも知れないが――」と、色々な思いが巡ったが、覚悟を決めてホームで待つ
                               ことにした。
                                思いのほか、10分後には電車は入線して来た。人混みの中で幸い私も流されるように
                               乗り込めて復旧後の1番電車は新宿駅を発車したのであった。
                                この電車が国立駅に着いたのは19時ちょっと前だった。
                                国立駅は何事もなかったかのように、人身事故の痕跡は雰囲気の中にも無かった。
                                この遅延は雪の為ではなかったのかも知れない。だが、私にはこれは雪のせいと思えて
                               ならなかった。
                                首都圏の交通機関はその頃から至る所で混乱に陥ったのである。

                                国立駅から我が家までの歩行は、最早足首が埋まるほどに積もった雪の中であった。
                                雪は雨混じりの小粒に変わっていた。湿気の多い、重い雪だ。
                                まだ止みそうにはなかった。大雪警報が発せられていた。
                                どうなることだろうかと思った。

                                                                                風次郎                    

  
雪晴れの空の下の蝋梅(2014.2)

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