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風次郎のColumn『東京楽歩』  
  (No330T−69)

                                           富士(2013.12南天寮近くから)                                                                                                    

                                                                                   2014年1月2日
          東京楽歩(No69)年頭所感

                                 謹賀新年
                                 本年もよろしくお願いいたします。 

           《年男・年頭所感2014》
 
                                "力が抜けると楽になる。"
                                昨年はそんな風に心がけて少し方向転換できたのかな、と自分では思っている。今までだって出
                               来たことなのに、同じ暮らし方が、心の目線を変えるだけで随分余裕を得たことになった。

                                自分の行き方や、生き方が、他との良好な関係を思いつつも、結局は自分の世界に他を引き寄せ
                               ることに力を注いでいたにすぎなかった。我が半生をそう見ると儚い。
                                これではいけないと、自分の世界に自分を平穏に置けばそれで良いのに、とそう思いつつ結局は
                               力んでいたということなのだろうが。

                                昨、晩夏の頃、辻邦夫の「西行花伝」を読んだ。
                                保元平治の乱を前に、背景は痛み始めた院政の末期。世間では西行の生き方を世俗離れ、或いは
                               もっと限定的に心情美学の実践のことととらえた向きがある。現代に至っても、それはそれとして
                               是としないのではない。
                                が、私はかって歴史の中で西行を識った頃から、「北面の武士」が「覆面の志士」に変じた姿と
                               見る一面を確保していたから、これを世阿弥の教本になぞらえて語る辻の解説的展開は面白かった。
                                そして、この度は何より辻邦夫の文章の美しさに魅かれて読破したという風にも思う。
                                これも多少読書を嗜むようになってから、多分に世評に影響されつつも漱石の文章に対する憧憬
                               を意中に納めてきた者にとっては、好感的驚異とでも言おうかページを進める度にそれを凌駕する
                               辻の美文の香りを期待しつつ読めて楽しかった。
                                こんな感じ方を自分では余裕と言えるのかな、と思っているのだが――。

                                                               ○

                                それはともかく、西行への関心も一段と深まった。
                                彼の女院への思慕の折り込みは小説的と割り切るとして、この「覆面の志士」と対比して浮かび
                               上がってくるのは、徳川を背負いつつ幕末から維新への人心を調節した勝海舟の心情である。
                               両者に相通ずるものを感じたのは些かこじ付けだろうか。いや、あながち共通のものがあると思
                               っている。
                                このところ私の狭い脳裏の中に存する偉人の中で、勝海舟の占める場所は大いに広がっているか
                               ら、恐らくはその影響かも知れない。海舟の心情美学は彼の心を拾ってくれた一橋慶喜に対するも
                               のでろう。

                                方や、乱世へ向かい武家政治が導入されようとの時代、方や武家政治から再び天皇制への交代時
                               であった。言わば入り口と出口、その間700年の時が流れ、社会に政治の骨格を組み立てる時か
                               ら国政のグローバル化を睨んだ時の隔たりもある。
                                そして後者は現今にも繋がり至っている。
                                いずれも人材が広い情報の交流を得て、「人を動かすこと」に変わりがない。そしてこのことは、
                               人間社会活動の根本原理であり、登場させる人物の質、性の集得と配置である。
                                さらにつきつめれば、配置はともかく集得に要す引力は、中心となる、核となる人材、人物、す
                               なわちリーダーを要請された者の「魅力」につきるのであろう。

                                勝が交わり得たのは敵対的参謀力とでも言うべきか。行動派西郷隆盛、坂本竜馬も含め、甚大な
                               開国の業に於いて、明治の海防に投じた一石を確たるものとする為に賛同した人々であった。そし
                               てその姿は幾多であった。しかるに彼は後退する組織の参謀であったのだ。
                                一方の西行は自分の心を鎮めるとして、往来行脚を重ねたのである。姿は世捨て人。

                                現実の目線は、ともすると勢力争いに行きがちであるが、支配と同時に最大の関心事を「民心」
                               に置いた人物が常に歴史を動かすことができた。
                                「敗者を作らない」ことが民心の安定なのだと思う。
                                ドラマはどんなに小さくても遠大に展開する要素を持っている。だからこそ大志を叫ぶのであろ
                               う。
                                脇役に徹するとはそういった立ち位置を心得ることなのかも知れない。

                                もっと歴史を学びたいと思う。
                                時間を得たのであるから、それを追って私はもう少し歴史の中に入って行きたいと思っている。
                                一つの年が過ぎ、新しい年が明けた。
                                区切り、けじめは心の中を切り替えるのに好もしい。このようにして過去の人々も人心一新を心
                               がけていたのが新年であろうと思う。
                                その習慣を美しいものと受け次いで、この年も新たに心の開かれる年にしたい。
                                心を穏やかにして―――。
                                                                                    風次郎                    

  
富士見からの八ヶ岳(2013.12)

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