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風次郎のColumn『東京楽歩』  
  (No253T−54)
     
      レンガの家の薔薇−その1−

                                                          2012年5月20日
       東京楽歩 (54) 薔薇の季節 

                           薔薇の季節になった。
                           坂を下り国立の街へ向かう通りに2軒の薔薇を育てている家がある。
                           一軒はレンガ塀の上に、もう一軒は2階にある玄関に至る階段の手摺に、両家とも
                         つる薔薇を這わせているのである。
                          どちらも土から延びる枝を上手にリードした見事な薔薇垣だ。

                          階段の薔薇の家の方は白薔薇である。
                          ご主人が手入れをしており、この季節が始まって燦々と降り注ぐ5月の陽の光の中
                         に咲く花たちと向かい合うのは何と愛らしく感ずることか!みんなで並んで煌めく緑の
                         葉の中で微笑んでいるように見える。
 
                          この通りで薔薇を見せてくれる家は、以前は階段の手摺に薔薇の枝を広げた家だけ
                         だったのだが、4〜5年前にレンガをデザインに取り入れた、ちょっとイタリア調の
                         家が新築され、こちらでも夫人が庭の薔薇を丹精に育てている。
                          道を歩いていると薔薇は手に触れたくなるほどに庭の外壁に這っていて、ちょうど
                         歩いていく顔の高さで続いているので、歩行者に香る。
                          私だけでなく、通りがかりに眼を向ける人達は「綺麗に手入れされた花を楽しませ
                         ていただいて有難うございます。」と、つい挨拶を交わしている風景も微笑ましい。

                          薔薇は時に美の象徴でもある。そして薔薇には棘があってうっかり手を触れたりす
                         ると痛い。世のたとえに「棘ある薔薇は美しい」と言われたりするが、それが美しさ
                         を破壊されないための防衛体制なのだと思えばいたしかたない。
                          そして花言葉は一般的に「清浄潔白」であるが、赤い薔薇につけられた「情熱」と
                         いう花言葉のほうが、私には強い香りとともに印象深い。
                          赤い薔薇を見ると、ビゼーの「カルメン」でヒロインが真紅の薔薇を咥えて強烈に
                         舞い踊るのを思い浮かべる。棘と情熱が連想的に巡るのである。

                                                     ○
 
                          薔薇のことでふと高崎のEさんの家の庭を思い出した。庭というより200坪余も
                         ある広いバラ園を婦人が手入れしていたのであった。
                          10年以上も前のこと、仕事のことがあって何回かEさんの家を訪れたのであった
                         が、その折一面に咲いた見事な薔薇の中でただ一人見え隠れしながら、婦人が無心に
                         手入れをしている姿に見とれ、人は言わずもがな、生活の一端に心の内を表現するの
                         だなあと、感じ入ったのだった。
                          花言葉の「清浄」を感じさせる対応の優しい穏やかな方だった。
                          玄関前にバケツに切り取った薔薇の枝がザックリと入れて立てられており、来訪者
                         には分けて与えられた。
                          それまで薔薇の花に関心を持ったことなどなかった私は、その赤い薔薇の花びらの
                         集まりの中心に黄色の中心があって、糸の集まりのように花芯が構成されているのを
                         観察しながら、上がってきた婦人に「精が出ますね」と声をかけると「薔薇が可愛く
                         て、綺麗で――」と、あからさまに笑ったのが初対面だった。
                          その夫人は数年前にがんを患い早逝してしまった。
                          花は時期のものであるし、仕事を終えた後に寄り道する都合が上手くつけられず、
                         夫人の育てた薔薇の花をもらうことが出来なかったことを残念に思っている。
                          あの薔薇園は今はどうなっているだろうかなどと巡らす。

                                                      ○

                          思いを巡らせたのは、私の近くの家で薔薇の手入れをしている人の姿からである。
                          薔薇は虫がつく、そして木に棘があるから、つまり始末は注意深く行わなければな
                         らないのであろう。いかにも丁寧な手の運びようでにみえる。
                          道沿いの2軒の家では、階段の家はご主人が、レンガの家は夫人が手入れをしてい
                         る姿にお目にかかる。
                          レンガのの家では庭から建物の壁を伝って2階のベランダに沿って薔薇の弦を這わ
                         せているのでシーズンになると屋敷が薔薇で埋まるとでも言いたいほどになる。
                          ベランダの家の方は黄色、庭垣の家は真紅と白、それに薄いピンク、美しい薔薇屋
                         敷だと思う。
                          艶やかに咲き、親しく通行人を楽しませてくれる。

                          気をつけていると、あちこちで薔薇つくりは盛んのようだ。作って愉しむだけでな
                         く、他人に見てほしいとの思いもそこに加わる薔薇つくり熱が盛り上がっているのだ
                         ろう。

                          中央線に乗って八ヶ岳山麓へ向かうとき、石和駅では下りホームに高さ5メートル、
                         長さ100メートルに及ぶ薔薇垣に満開の薔薇が咲いていた。大半が白薔薇で、端の
                         ほうに真紅とピンクのものが少しあった。全体の規模が凄く、なんとも華やかで見事
                         である。これならわざわざ見に来る値打ちもあろうと思った。

                          我が家でも妻はなが、棘のない新種のモッコウバラという薔薇を探してきて玄関脇に
                         植えた。
                          3年になるが、今咲き誇る普通の薔薇より1ヶ月は早く、私の書斎のベランダの手
                         摺のほぼいっぱいに広がって可愛い黄色の花をつけ愉しませてくれる。同時に咲くや
                         まぶきより淡い黄色と、棘がないので優しいイメージが好い。

                          初夏のキラメキの季節、どこへ行っても眼に入るようになった薔薇の風景も楽しい。 

                                                                           風次郎
            

         
           レンガの家の薔薇−その2−

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