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風次郎のColumn『東京楽歩』  
   No228T−049)
     
独標頂上からピラミッドピーク・西穂・奥穂           前穂と明神岳(11.10.04)

                                                          2011年11月13日
       東京楽歩 (49) 乗鞍と西穂高行(11.10.02~4) (その6)独標登頂 

              時間はあった。
              素晴らしい天候に恵まれて、このまま西穂山荘での景観だけを楽しみ下山するの
             ではとても惜しかった。仲間達はここでゆっくり昼食を採り、近くの丸山の頂上へ
             登って景色を楽しみ下山する予定を続けることになっていた。私は、今日の穂高へ
             の誘いは、何か神様が与えてくれた絶好のチャンスとでも思いたい心境に駆られて
             いた。
              仲間の了解を取りつけた私は、一杯のお茶を飲んだだけで独標行きに発つことに
             した。西穂山荘からの独標行はポピュラーなコースであるとは聞いているが、そう
             は言うものの登山者にとっては崇高な穂高の稜線である。往路90分、帰路60分
             と見て約3時間の山歩きとなる。
              他の3名には2時になったら携帯電話で必ず連絡を取る約束をし、私が遅れた場
             合は先に西穂山荘からの下山を開始してもらうことにした。好天だし登山者も多く、
             単独歩行とは言え視界に人を見なくなることは無いだろう。それは何よりも安心
             なことだった。

              山荘からはすぐに急激な丸山への登り坂で、日当たりの良い岩場の道を進むと汗
             が出てきた。15分の登りでその坂を終える。峰は平らなお花畑のある広い場所だ
             った。
              山荘の周辺からは穂高連峰の続く北側の風景が、この丸山に遮られたかたちにな
             るから、多くの登山者はここまで登って穂高の景観を眺める、と言うことになるの
             だろう。手前に鎮座する独標、西穂高岳の向こうに奥穂、北穂、そして誰にでも解
             る槍ヶ岳が手に取るように姿を見せていた。また奥穂から右手に連なる前穂高岳と
             明神岳が稜線と共に荒々しい山肌をみせて並んでいた。上高地は見えないが、焼岳
             への入り口となる大正池のあたりからの梓川の筋は視界にあった。
              歩く登山道がお花畑だと言っても、季節はずれになってしまい色香は無い。這松
             の中に伸びて行く道を2つほどの小山になった一帯が、夏の盛りには美しく輝くの
             だろう。私は岩の間を少しの起伏を楽しみながら進んで行った。
              お花畑の先にちょっとしたピークがあり、そこからの下りは急激な岩場になって
             いた。警戒しながら互いに注意を喚起して声を掛け合う登山者達が、岩毎に歩行を
             止め、登山道は混雑していた。不慣れな人が多いようだった、が晴天の下でとても
             楽しんでいるかの雰囲気は共感を呼んで、何故か嬉しい気がした。
              私は目前の独標の登り道を眺めつつ、ひとわたりのグループが先へ行く時を待っ
             てゆっくりと降りればそれで良かった。
              たるみの場所を越えると独標への最後の登りであった。30mのガラ場と30m
             の岩登りと言って良いだろうか。穂高らしい岩だけのもっこり山である独標、その
             南壁は、午後の陽が照りつけて息切れと汗を伴った。だが、期待の実現に向かって
             進む者に、それはとても気持の良いことであった。
              3回ほど左右の葛篭折れ道をやり過ごして、割れた大岩を渡り、よじ登るように
             最後の岩の重なりを乗り越えるようにして立つと、そこが頂上だった。           
            

    
富士山と南アルプス連峰                中央アルプス連峰

              ついにやって来た。小さい峰ではあるが、立派な北アルプスの一つの峰である。
             大きな達成感があった。
              頂上はゴツゴツとした岩の散らばったようなところで、20人ほどが岩に腰を下
             ろして周囲を見渡しているのだった。風が無く穏やかな恵まれた午後であった。
              嬉しかった。
              私はリュックを下ろし、カメラを出して隣に座っていた人に記念撮影を頼んだ。
              頂上標識につかまって振り返るようにカメラに向かうと明神岳の向こう彼方に蓼
             科、八ヶ岳の連山までが雲を従えて浮かんでいた。さらに右へ眼を向ければ、南ア
             ルプス連峰甲斐駒ケ岳と並んで遥かに富士山の姿も見えた。礼を言って場所を譲り
             カメラを受け取ると、今度はその人から撮影を頼まれ、言葉を交わす機会を得た。
              私は北アルプス稜線が若いときからの念願であったことを話した。私より少し若
             く見えたその人は暫くこの場を楽しんでゆっくりと西穂山荘へ引き返し、1泊する
             とのことだった。逞しくは見えなかったがゆるりと山の空気に浸っていそうな人柄
             に好感が持てる人だった。羨ましく思った。
              さらに西穂高岳へ向かう人の数は少なかったが、急激な北斜面の岩場を降りてい
             く人が見えた。視界に入る眼下のたるみ沢から先にはピラミッドピークという正に
             三角形の峰へ続く長い急峻な登りの道が見えていた。後ろに西穂、間ノ岳、さらに
             ジャンダルムと奥穂高岳が見えた。朝からずっと視界にあった笠が岳への山なみが
             左に続いていた。
              時計を見ると1時15分だった。予定は1時30分だったから随分早かった。先
             へ進むことは控えねばならなかった。私は周囲を見渡し5〜6枚の写真を撮って名
             残を惜しみ、帰路を辿ることにした。
              南側の崖を降り、ガラ場を過ぎたところで振り返ると、頂上に4〜5人の影をと
             もなって、最早懐かしい存在となった私の独標が真っ青な空の下に陽を浴びていた。
              私が西穂山荘に着いたのは2時を少し廻ったがばかりだった。丸山を登って来て
             一休みしている3人の仲間達が笑顔で迎えてくれてとても嬉しかった。

              順調に西穂山荘から下山した。あっと言う間に1000mを下るケーブルカーに
             乗ってまだ輝き続ける穂高の山々をあとに、Y氏の車で鍋平を帰路に着いたのは4
             時だった。
              安房トンネルを越え、158号上高地線を下り、中央道に入ったのは5時30分、
             諏訪湖サービスエリアで諏訪湖周辺に輝くライトビューを楽しみながら、素晴ら
             しい3日間の思い出を語って胸に仕舞いつつ夕食の時を過ごした私たちだった。
              その足を帰宅に向けた。
                                                               風次郎 

    
  陽の当たる独標

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