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風次郎のColumn『東京楽歩』  
   No226(T−047)
   
豪華な新平湯温泉「本陣」の玄関

                                                          2011年10月30日
       東京楽歩 (47) 乗鞍と西穂高行(11.10.02~4) (その4)新平湯温泉「本陣」

              乗鞍スカイラインを下るバスが国道158号線の平湯峠を通過する頃、車窓から振
             り返ると今下りて来た乗鞍の山は雲に隠れていた。しかし、窓外の秋を終えようとす
             る高原には陽光が溢れていた。下界は風も穏やかで好天であった。
              私たちはバスが到着したあかんだな駐車場のターミナルに設けられた休憩所で昼食
             をとることにした。
              休憩所は主に夏のシーズンに訪れる沢山の観光客を受け入れるために、100人以
             上も収容できるほどの広さがあった。もっぱら乗鞍スカイラインへバスで向かう客が
             利用するのであろうが、このシーズンになれば、大半の乗客はすぐ近くの平湯温泉駐
             車場のターミナルを利用するらしく私たち4人のほかに人は無く閑散としていた。
              まだ古さも感じさせない整った建物で、サロン風に2台のストーブが暖房を利かし
             ており、地元芸術家のモニュメントも鑑賞できる洒落た雰囲気であった。朝通ってき
             た安房トンネル建設にまつわる資料の展示室もあった。
              私たちは2人の夫人達が作ってくれ持参した昼食をゆっくり戴いて、寛いだ時間を
             過ごした。
              その日は平湯温泉に泊まることになっていたが、折角の午後の時間をほうのき平の
             コスモス園へ行こうということになった。
              スキー場のヒュッテが立ち並ぶ平地の近くをコスモスで埋め尽くした開放的な楽園
             であった。コスモスの花は最盛期を過ぎて数を減らし、晩秋の寂しさを漂わせていた
             が、やがて来るシーズンに向けて整備を進めているスキーリフトの向こうから差し込
             む午後の陽に赤、青、白の清々しい花たちが優しく靡いていた。
              ヒュッテのデッキに座って静かな時を過ごすのは、それが正しく至福を感ずる、と
             いう時のように思った。

              宿泊先新平湯温泉の源泉の湯「本陣」には4時前に入った。
              Y氏夫妻は何回か来ているお勧めの宿である。玄関がまるで往時の本陣を装った創
             りで重厚な構えであった。
              まだ早い時間だったので、迎えの従業員は車寄せの脇にあった足湯場で暖めていた
             足を慌てて拭いて飛び出してきた。そして、車のトランクから4人分のリュックを一
             度に抱え、荷物だらけになって玄関に案内してくれた。
              フロントにはここが薬師温泉と言われる由来や、宿の由緒などを示した展示品が数
             々あった。従業員の対応が誰もがとても丁寧で、これは最後までとても気持のいい宿
             の印象をもった。
              私たちは7階建てに増築された西館と呼ばれる棟の4階の和室に案内された。案内
             の係りの人が宿の「うりもの」である温泉の説明をしてくれた。Y氏と私は早速温泉
             めぐりでゆったりと1日の疲れを癒すことにした。
              温泉は北アルプス温泉と銘打った大浴場がメインで、その外に東屋で囲った「医王
             の湯」(男性)、「瑠璃の湯」(女性)という露天風呂があった。別に権現の湯とい
             う露天風呂もあり壮大で見事であった。翌朝離れになっている湯屋にへ行ってみると、
             こちらは「日光の湯」という総檜の浴室に「月光の湯」という寝湯を楽しめる露天風
             呂であった。
              温泉での寛ぎを楽しみに掲げられることは日本人の特権のように思うことがある。
              入浴のしきたりもシャワーで身体を洗ったり、一人でただちょっと温まるために浴
             槽につかる習慣の異邦人では温泉を楽しむ気にはならないであろう。また、古いヨー
             ロッパにはローマ風呂とか、トルコ風呂を楽しむ風情があったが、静かにゆったり、
             大勢の人と共に、時には湯治などと言って過ごす日本人の楽しみ方とは異なるように
             思う。
              自然に親しみ大衆と共に寛ぐ日本の文化には時に惚れ惚れしてしまう。

              夫人達もゆったりとした入浴時間を過ごし、大パーティーを繰り広げていた大きな
             団体の隣の部屋で私たちも食膳を戴いた。なるほどと納得できる飛騨牛や岩魚、それ
             に山菜と飛騨の料理を美味しく戴きながら、寒かった乗鞍山上の思い出に 花を咲か
             せ、明日のプランは上高地か穂高かと天候への期待を語り合う楽しいひと時であった。
 
              翌朝、Y氏と2人で宿の近くを散歩しに出た。平湯温泉から栃尾温泉に向かって流
             れる平湯川に沿った旧街道を少し登ると、公民館を兼ねた観光案内所の建物があり、
             昔詠われた「奥飛騨慕情」の歌碑があった。良く流行った歌だったが、その流行歌の
             威力がかくも多くの温泉旅館街を造り上げたのであろうか。ざっと観て1000軒も
             ありそうである。安房トンネルの開通や当時の日本の余暇ブームにも乗ったのであろ
             うが、そぞろ歩きの眼には、休館、廃館の建物がいくつもあることが気になった。公
             の施設や、地元が力を入れたイベント用の建物も古く中には汚れて乱れているものも
             あるのだった。
              公民館の脇を平湯川に下りると、川幅いっぱいに人口の滝があり、その下にイルミ
             ネーションでアクセントを施したトンネルがあった。観光のために粋を凝らした施設
             なのだろう。滝にはそれなりの風情もあり、周囲は小公園に東屋なども施してあると
             は言うものの、寂れて荒れた雰囲気は観光の衰退を感じさせられた。
              時代の波はここばかりでなく、日本とだけでなく世界に厳しい経済環境を強いてい
             るようだ。
              思い方によっては静かな、或いは鄙びた温泉地に戻るのかとの見方もあるが、人々
             の生活面では複雑であろう。優しく宿の人々に接してもらったことと重なって寂しい
             思いがした。
              旅館街を歩き、山の手の「神明社」にお参りして散策を終えた。

風次郎 

    
  『本陣』医王の湯

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