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風次郎のColumn『東京楽歩』
No224(T−045)
乗鞍岳畳平から富士見岳取り付けへの道、ガスと霧氷(111003)
2011年10月16日
東京楽歩 (45) 乗鞍と西穂高行(11.10.02~4) その2畳平は強風霧氷
朝は皆で5時に起きた。朝食は昨日のうちに夫人達が用意してくれてあったので、南天
寮の戸締りをしてY氏の車に乗り込めば良いだけだった。
外に出ると朝靄が少し漂って、まだ明け切らない高原の秋は冷たさを感じさせていた。
何よりも天候が気になったが、朝靄はむしろ好転の予兆であるのが普通だ。
静まり返った町の商店街を抜けて諏訪南インターから中央道に乗っかる。
すぐに通過する中央道最高地点の原村SAあたりからは諏訪湖に向かって下りとなり、
諏訪湖を隔てた正面に塩嶺の峠が見える。その上空に大きなやや厚い雲が広がっていた。
「あれがいつも諏訪湖から上ることの多い上昇気流の雲なら、まったく心配が無いのだが
――」と私は思わず呟いた。上昇気流の雲とすれば少し色が暗すぎる――、でも雨は無い
だろう――と、ホッとした。最早10月である。雨が落ちてくれば、穂高の山は不慣れな
者には歩くことも難しいであろうから。
案の上塩嶺のトンネルを抜けて眺める松本平は見通しは良いものの、雲が広がっていた。
しかし風は無い。山の平穏を願うばかりであった。
松本インターで下り標識通りに国道158号線、いわゆる野麦街道を上高地に向かって
行く。松本電鉄の新島々駅までは線路に沿った道路である。その終点である新島々駅を見
やって過ぎると、谷合の登りの山道になる。そして梓川の流れと、両岸から迫ってくる急
斜面を見ながら奈川渡ダムまで行って朝食をとることにした。
まだ7時前のダムを見下ろす駐車場には私たちの外1台の車も無かった。
時々、下から上ってく車がここで分岐して左側は奈川温泉から野麦峠へ、右側はダムを
渡って安房峠方面や上高地へ向かって行く。
私たちは2個づつの海苔巻きのおにぎりとお茶で、緑を写す水面を眺めながら静かな時
を過ごした。そして対岸の高い崖の上に朝陽が射して来たのを見てホッとした。
朝食を終えた私たちはダムを渡って進んだ。
上高地がマイカー規制をしているので設けられている沢渡の駐車場には、既に沢山の車
が上って来きていた。それを横目で見ながらさらに進み、朝陽と丁度向かい合う山の斜面
の道路を安房トンネル(有料道路)に入った。
国道158号線の安房峠は大型車のすれ違いが困難なため、従来、観光客の多い時期の
通過には5時間以上もかかることがあり、また、冬季は積雪で通行ができなかった所だ。
しかし、今ではその安房峠越えをわずか5分と言う短時間であっと言う間に通過できる。
まったく夢のトンネルである。
安房トンネルは、現地調査が始まってから33年・着工からは実に18年の歳月を費や
して、やっと1997年12月に開通したのであった。これにより、長野県と岐阜県飛騨
地方との間が年間を通して行き来できるようになっり、また中央道から北アルプスの山や、
岐阜側の温泉地、観光地への利便は飛躍的に高まったのである。
今回の私たちにクケジュールもそれに肖ったものと言わねばならないだろう。
私たちは平湯温泉のあかんだな駐車場に車を置き、8時30分始発の乗鞍スカイライン
経由畳平行きのバスに乗ることができた。
バスは平湯バスターミナルとほうのき平駐車場で乗客を乗せるとほぼ満席になった。す
ぐに国道158号線の平湯峠を通過したが、そこが標高1684m、終点畳平が2702
m、だから標高差1018m延長14.4Kmの山岳観光道路である。かつては岐阜県道
路公社の管理する有料道路であったが、2002年(平成14年)の無料開放と同時に、
マイカー規制が布かれた。理由は、ここは、日本一の高所を走ることのできる雲上のスカ
イラインとして名高く、景観も格別で、夏季は観光客のマイカーで溢れかえる渋滞が続い
ていた。その上、付近は高山植物の宝庫でもあることから、マイカーによる著しい排気ガ
スによる自然破壊が問題となっていたからである。また、排気ガスによる悪影響以外にも、
マイカー客による高山植物の摘み取り行為やゴミの持ち込み行為、鳥類など動物への威
嚇行為(マイカー客が連れ込んだペットによる威嚇なども起きる始末であった)などの問
題もあり、自然保護が叫ばれていたのであった。
この渋滞解消と自然保護の観点から、乗鞍岳は中部山岳国立公園の特別保護区に指定さ
れて規制を厳しくし、2003年(平成15年)5月15日からは(実質的には無料開放
されたと同時に)通年マイカーを規制し、一般車両は走行する事ができなくなったのであ
る。バスが乗鞍スカイラインに入ると、必ずこうしたマイカー規制の趣旨・目的がテープ
によって乗客に説明されているのである。
窓から見える稜線にガスが流れ、上の方の山が見え隠れする。かなり強い風が吹いてガ
スが舞っているようだった。
次第にカーブも多くなってきて、バスが揺れた。路線は大半がカーブ区間を走るため車
掌が乗務しているが車掌は何も喋るわけではない。乗客は窓から視線をやや上に向け続け
高山に来た感激に浸っているようだ。
やがて窓から見える山肌は幾分白んで見えるようになった。「霧氷」だった。外は氷点
下の世界に違いない――と思った。「さすがに標高3000mの世界だ。」私は心の底で
少しばかりの緊張を覚えた。そして「これでは登頂は無理かもしれない」と――。
バスは畳平駐車場のほぼ中央に停車した。目の前に2階建ての大きなバスターミナルの
ビルがあった。駐車場の奥には2つのホテルと郵便局があった。
乗客はドアから降りようとして、煽られる強い寒風に尻込みしつつ首を竦めてターミナ
ルビルに駆け込んでいった。私たちもそれに倣った。
ガスは巻き上げるように吹いているが、その上からは陽が射していて、天候がそう悪い
わけではないらしい。窓から外を見ると、南側のお花畑から不動岳の方は良く見えている。
一息ついてから私たちは登山道へ向かうことにした。
気温がマイナス5度と表示されていた。冬物ジャンバーにフードをつけたり、私などは
フードの無いジャンバーだったから、帽子の下にタオルで頬被りして耳を覆わなければな
らなかった。
氷点下の風は辺りに生えている這い松は勿論、安全囲いの金網や路上の小石にまで霧氷
を絡みつかせている。
「すげーなー!」と呟きながらとぼとぼと駐車場を出て、富士見岳の登山口まで行った。
そこからは南に深く乗鞍高原が見下ろせる場所だった。ガスはそこから上に抜けている
ようで乗鞍高原には陽が当たり朝露に緑が光っているようだった。そして左から右に梓川
の渓谷、今朝朝食に休んだ奈川渡ダムが見え、さらに下には松本平、彼方の美ヶ原まで見
えている。
私たちの居るすぐ下には乗鞍高原から上ってくるバス道路が見えてはいたが、その南側
乗鞍岳の主峰側は、切れ目無くびゅうびゅうと吹く風がガスを巻き上げて行く手を遮るば
かり。視界が無い上じっとしていられない状態であった。立ち止まっていると突然ガスと
強風に襲われ、霧氷が絡み付いてくる。
晴れているからこその安心感はあったが、冬山の怖さはこれである。腰が下ろせない。
リュックを下ろしただけでも飛ばされそうだし、手袋や帽子を直そうとするのも気をつけ
ないといけないのだ。
覚悟を決めてきているグループは富士見岳へ登っていく。が、風の少ないコロナ観測所
への広い道路の方へ進路を変える人、引き返す人さまざまだった。
私たちも暫くは寒さをこらえて身体を動かしながら東の谷や山々を眺めていたが、結局
私以外の3人は引き返してバスターミナルで暖を取ることになった。私はせめて富士見岳
だけでもと思い、「無理だったら途中から引き返すから」との条件付で、皆の了解を得て
登山道を辿る事にした。
風次郎
乗鞍スカイライン近辺のマップ
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