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風次郎のColumn『東京楽歩』 (No531T−130)
    
                                      すみれの花(花言葉=謙虚・誠実)                                                                                                                                        

                                                                                2018年3月
          東京楽歩(No130)  T君逝く



                              入社以来、会社を勤め上げてからも親しくしていたTがついに逝ってしまった。

                              万能のスポーツマンで、いつも元気で日焼けした逞しい風貌で、いかなる病気も近づき
                             難いと思っていた彼が、やや元気をなくしたのは3年くらい前であった。
                              呼吸が乱れる病で体調が思わしくなく、一昨年からは酸素ボンベを頼りにして生活して
                             いた。
                              見舞いに行くと酸素のパイプを鼻につけたまま居間のソファーで、それでも快活に話を
                             展開し、私はホッ胸をなでおろして引き揚げたものだった。
                              夫人の話では血液中に酸素が不足してくるという奇病で、千葉大学病院で「間質性肺
                             炎」との診断が出て治療が続けられたが、現在のところその病気の治療の決め手はなか
                             ったのだという。肺の間質に炎症が起こる病気で、肺胞のやわらかい壁の構造が壊され、
                             硬い組織が増える線維化が進む。これを「肺線維症」といい、線維化した肺胞は硬く縮
                             んでいくため呼吸ができなくなるのだとのこと。

                              切ない報を受けて、寄る年並みの仲間と言うか、親しく過ごした同期入社の5人で先般
                             焼香に訪れると、夫人から、2月の始めに悪化し、10日ほど過ぎたころから苦しさが
                             増して、3日ほど苦しんだとの沈痛な話を聞いた。
                              病を知ったころからTは俳句を嗜むようになり、NHKの俳壇にも時々佳作が放送さ
                             れるほど上達し、それを愉しみに打ち込んだ毎日だったのか――。そんな日々のいくつ
                             かの作品が祭壇に掲げられているのも切なかった。

                              3月に入ったとはいえ、その日は曇り空の下、ピューピュー風の吹く寒い日だった。
                             仲間は同じ年の76歳、友の死はまだまだ早かったと言わざるを得ないだろう。
                              面影を偲ぶ写真の前で香を焚くと、写真の陰から語りかけてくるかと思いたくなるし
                             ばしの時間だった。
                              千葉のT宅を辞し、遠来の友もいたので東京駅に戻って夕刻まで痛飲した。懐かしい
                             Tとの思い出は尽きることはなかった。
                              帰りが同じ方向の仲間、Kと連れ立って帰り道をたどりつつ、――他人事で無くなっ
                             てきたね――と呟やきつつ歩いた。

                                               ――――――――――――

                                    彼人の 姿無けれど 草萌える        
                                                                         風次郎
 
                                   

                        

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