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風次郎のColumn『東京楽歩』 (No510T−122)
    
                                                漱石山房入り口                                                                                                                                  

                                                                                   2017年9月
          東京楽歩(No122) 漱石山房開館


                          地下鉄東西線を早稲田で降りて、漱石公園へ向かう。
                         「漱石公園」は、漱石が作家として本格的な執筆活動をした晩年の9年間を過ごした「漱石山房
                         」と呼ばれた屋敷(借家)の跡である。敷地340坪に60坪の和洋折衷平屋建て、庭には大きな
                        芭蕉の木があったという。
                         早稲田駅の東口を出て早稲田通りを渡り、小径漱石山房通りを歩いて下る。

                         公園を入った左手に復元されていた白いテラスの旧「漱石山房」が、昨年の漱石没後100年、今年
                        (2017年)生誕150年という年に因んで、新宿区の肝いりで「漱石山房記念館」として生まれ変わり
                         今日(9月24日)一般公開されるのである。
                         私は待ちきれず2日前に訪ね外観を眺めに行ったのだった。
                         記念館の名誉館長を務める半藤末利子氏は、漱石の弟子にして娘婿松岡譲氏の娘に当たる方で
                        ある。
                         末利子氏によると、漱石の遺品などをそっくりそのまま残すことは松岡氏の悲願であったとのこと、
                        多くのファンの思いと通じている。これまでも、園内には富永直樹の手による漱石の胸像や、「猫塚」
                        があり、また、「道草庵」に展示された漱石や漱石山房に関する資料は訪れる人々を愉しませてく
                        れた。

                         先般来、私は岡崎義恵による「鴎外と漱石」(昭和48年=宝文館)を手にしていた。鴎外の
                        Resignation(諦念)、漱石の則天去私、夫々の作家が心底に秘めていたモットーを、相互の意思疎通
                        の中で交し合っていたであろう交流のやりとりや、作風における論評を興味深く読んだ。
                         酒も好まず、論壇風発といった趣の作家だったと言われつつ、漱石の座視にあるどこか堅い処は、
                        彼の「美学」にも通づるところかと思う。
                         この「山房」と称した仕事場にあって、日向の暖かいところが好きだった漱石は、冬の間は日差し
                        のあたる縁側に机を運んで執筆をし、日が照りすぎる夏は、麦わら帽子をかぶって原稿を書いていた
                        という。
                         白いテラスで思いに耽ったであろう漱石を想像することは、とても親しい思いで近づける感慨である。
                         新宿区は、この公園の平成のリニュウアルに力を入れ、一般の寄付も集めて取り組んで来た結果、
                        資料もさらに充実して今日開館に至ったのである。さらにファンで賑わうことだろう。 
 
                         道路側から会館の中央に設けられた入り口を入ると、1階は無料の導入展示場(グラフィックパネ
                        ルや映像などにより、漱石と新宿の関わり、漱石の生涯、人物像、漱石の家族など、漱石を知る上で
                        基本的な情報の紹介)、そして有料の再現展示場は、「漱石山房」の一部、書斎・客間・ベランダ式
                        回廊などが再現され、この客間で毎週開かれた「木曜会」のことや、この書斎で執筆された随筆『硝
                        子戸の中』の世界、「漱石山房」再現の取り組みなどについて紹介されている。
                         2階は、有料の常設展示場で、グラフィックパネルや映像などによる漱石とその作品の世界、漱石
                        を取り巻く人々、漱石と俳句、漱石と書画などについての紹介である。また、新宿区が所蔵する草稿
                        や書簡、初版本などの一次資料を展示公開することになっているとのことである。

                         室内ではスタッフが、庭園や玄関の外回りでは庭師たちが仕上げを急いでいた。
                         1階にはショップやブックカフェもあるから、訪れるファンで賑わうことだろう。

                         開館後改めて訪れることとし、私は初秋の午前のひと時を、市ヶ谷柳町から牛込神楽坂へ向かい、
                        神楽坂で一服して文豪を偲びつつ散策の時を過ごした。
                                                                          風次郎


漱石の胸像(富永直樹作)脇から庭園に入れる

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