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風次郎のColumn『東京楽歩』  
  (No345H−016)
           
              馬酔木(2014.04)    

                                                         
       東京楽歩(H-016)  私的花語り(No16) 馬酔木                                  ─2014年春─
                              
                                                

                                   「わが背子に わが恋ふらくは 奥山の あしびの花の 今盛りなり」
                                                                           ――万葉集――

                                   古くから日本で広く親しまれている馬酔木の愛らしい房状の花木に魅かれる。
                                   この花は、盆栽、鉢植えにしても楽しまれるようだが、私は生垣や庭木に、この花で春を見
                                  るのが好きだ。
                                   早春になると枝先に複総状の花序を垂らし、多くの白くつぼ状の花をつける。そのまま桜が
                                  終わるころまで長く咲き続ける。この頃は「アケボノアセビ」と言うピンクの花を付ける品種
                                  も現れた。

                                   「あせび」の言われは、馬が食べると酔って足がなえることから「足癈(あしじひ)」と呼
                                  ばれ、しだいに変化して 「あしび――アシシビレ(足痺れ)――」そして「あせび」となっ
                                  たとのこと。
                                   漢字「馬酔木」もその由来による。有毒成分は、枝葉に含んでいる「アセボチン」だそうで、
                                  強い中毒症状になると、吐く、下痢、腸からの大量出血などが挙げられるから怖い。その毒性
                                  を使って、かつては葉を煮出して殺虫剤としても利用されたとの言われもある。

                                   とは言うものの、楕円形で深緑のつややかな葉のなかに、スズランに似た形の小さな花を沢
                                  山つけた花房は何とも可愛らしく、山里の素朴さを香しているかのように思う。
                                   それらしく、万葉集にはこの花を「恋」に絡めて詠んだ歌が多いが(大伴家持、大来皇女な
                                  ど)、詠み人知らずが詠んだ上に掲げた歌や、同じく

                                   「河蝦(かわず)鳴く 吉野の川の 瀧の上の 馬酔木の花ぞ 末(はし)に置くなゆめ」
            
                                   など情感よりも馬酔木の存在する情景を取り上げたものの方が、そのほのぼのとしたところ
                                  を感じさせるにふさわしい歌、と私は思う。
 
                                   自分の家を持った時に植木屋さんに頼んで背の低い木を庭に植えてもらったが、5年ぐらい
                                  した頃枯れてしまった。日の当たらない塀際だったのが良くなかったのだろう。しかし近くの
                                  公園や道路脇の生垣には沢山の馬酔木があって、この季節の和みを戴けるのである。

                                   今、咲き始めるヤマブキのあまりに鮮やかな黄色が、この花の風景を隠そうとしている。
                                  何となく、急に桜が咲き、あっという間に桜が散って、――すぐに初夏に移ってしまうかの
                                  ような焦りを、季節が齎すかのように――。
  
                                                                                  風次郎             

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