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風次郎のColumn『東京楽歩』  
  (No319H−011)
         
         ムラサキシキブ   

                                                         
       東京楽歩(H-011)  私的花語り(No11)「紫式部」                                  ─2013秋─
                              
                                                

                                時々しっとりと雨が降って、秋が秋らしい季節感を漂わせる。花は季節暦の象徴であり、
                               人を自然のなかに詩的に誘う先導者のようだ。
                                それぞれの花に対して好き好きは人によって異なろうが、美しく咲いた花に辟易する人
                               はまずいまい。平常心であれば、花を愛でて歩くなど救われた気のする時の過ごし方だと
                               思っている。

                                秋が来れば「ムラサキシキブ」の咲く(実る)を見るのが楽しみである。
                                たいがいに紫色の花は好きだ。それに早春に咲く「馬酔木(あせび)」と形が似て緑の
                               葉に包まれた感じに小さく垂れ下がった花房(実の房)が、枝垂れた木全体で奏でるよう
                               につくり上げるふんわりした体様が良い。両者とも季節の気配をあたりに広げているよう
                               にさえ見える。
                                公園にあっても、道路沿いの垣根にあっても、周囲に気を齎す感じの花が好きである。
                                武蔵野、多摩にも咲き始めたので家の近くのムラサキシキブを眺めては秋らしさを感じ
                               ている。
                                平安の作家紫式部がペンネームに用いたのは、この花が好きだったのだろうか?などと
                               考えながら、結局は紫の小さな玉粒の花模様を華麗に筆に託して思いを巡らし書留めたの
                               であろうと、こちらは想像を巡らす――。

                                ムラサキシキブ(紫式部、学名Callicarpa japonica=ギリシア語で「美しい果実」と
                               いう意味)はクマツヅラ科の落葉低木ということになっている。秋には花に見える果実が
                               紫色で美しく観賞に耐えることから栽培木にもなった。
                                高さは3m程度、小枝がやや水平に伸び、葉を対生する。葉は長楕円形、鋭尖頭(先端
                               が少し突き出す)、細かい鋸歯のある黄緑、薄くて表面につやはない。
                                実は本当の花は6月頃咲くのである。淡紫色の小花が散房花序をつくり葉腋から対にな
                               って出て、秋に果実が熟して紫色になるのである。
                                果実は直径3mm位の球形が連なるように、私はこれを花と見立てる。
                                栽培品種には白実のものもあると聞いた。

                                この植物にこの名が付けられたのは、もともと「ムラサキシキミ」(「シキミ」とは重
                               る実=実がたくさんなるという意味とのこと)と呼ばれていたその訛りからとの説がある
                               そうだ。
                                江戸時代の植木屋が平安時代の女流作家『紫式部』になぞらえて付けたと言う植木屋説
                               もあるとのことだが、これは洒落たのか、イメージをよくする商品名として名付けたのか?
                               とか、とかく巷にはよくわかりませもせず、である。
                                また、余談で、コムラサキの別名コシキブは平安時代の女流歌人、小式部内侍(こしき
                               ぶのないし)にあやかって付いたともされたりしている。

                                日本各地に自生しており、国外では朝鮮半島と台湾に分布する。
                               低山の森林にごく普通に見られるが、荒地、崩壊地などにもよく育っているというから
                               美しく、紫色は奥ゆかしさを思わせるが、実は逞しいのだろう。
                                まだ訪ねたことがないが、京都・嵯峨野の正覚寺(正覚寺と言う寺は全国にたくさんあ
                               る)がこの花の名所として有名だとされている。おそらくは紅葉の赤と並ぶ色合いが豪華
                               だろうと思う。

                                園芸に庭木として良く育てられているコムラサキを指してムラサキシキブと呼ぶことも
                               多いらしいが、実際はこの2種(ムラサキシキブとコムラサキ)と、それらの変種・園芸品
                               種をまとめてムラサキシキブ(の仲間)と呼んで一般化しているのだろう。
                                少し丈が低いコムラサキ(コシキブとも呼ぶ)は場所をあまりとらず、果実もみっしり
                               と付いてボリュームがあり美しいので、庭用に人気がある。
                                ただ、ムラサキシキブとコムラサキはいずれも淡い紫色でよく似ているが、ムラサキシ
                               キブは果実が葉の付け根あたりに付くのに対し、コムラサキは葉の付け根からやや離れた
                               場所に付く。
                                大概、ぱっと見で弓状に枝をしならせて重たそうに果実をびっしりつけているのはコム
                               ラサキ、大きくなっても丈は人の背丈より少し高い程度で育てやすいのだ。
                               一方、ムラサキシキブは枝が直立して果実の付き方がまばら、そして木が大きい。

                                栽培種の白実をつける変種のコムラサキをシラタマコシキブと呼ぶ。
                               濁りのない白は普通種とは違う趣があるが、白地だけに果実が完熟を過ぎて変色してく
                               ると、果実の表面に出てくるシミや汚れのようなものが非常に目立ち、汚れた感じがする。
                                ムラサキシキブは紫で眺めたい。          

                                                                                 風次郎            

                 
                ムラサキシキブノ花(6月)                  ムラサキシキブの実     

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