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風次郎のColumn『東京楽歩』  
  (No295H−003)
       
             

                                                         
       東京楽歩(H-003) 私的花語り(3) 「辛夷」      ―2013春―

 
                               ――白樺(しらかば) 青空 南風
                               「こぶし」咲くあの丘 北国の ああ 北国の春
                               季節が都会ではわからないだろうと
                               届いたおふくろの小さな包み
                               あの故郷(ふるさと)へ帰ろかな 帰ろかな

                               なんといっても「こぶしの花」だ。春の「季語」でもあるという。
                              春が訪れるとついつい口ずさみたくなる千昌夫が唄うこの歌「北国の春」は、私も
                              とっても好きな歌であるが、こぶしの花を連想しながら歌う。
                               作曲は遠藤実、信州に故郷をもつ作詞者のいではくが信州(長野県南牧村出身)の
                              情景を描いた牧歌だと思う。
                               歌は故郷の遠い思い出へ誘う。

                               ――雪どけ せせらぎ 丸木橋
                               落葉松(からまつ)の芽がふく 北国の ああ 北国の春
                               好きだとおたがいに言いだせないまま
                               別れてもう五年あの娘(こ)はどうしてる
                               あの故郷へ帰ろかな 帰ろかな

                               ――山吹(やまぶき) 朝霧 水車小屋
                               わらべ唄聞こえる 北国の ああ 北国の春
                               兄貴も親父(おやじ)似で無口なふたりが
                               たまには酒でも飲んでるだろか
                               あの故郷へ帰ろかな 帰ろかな
 
                               「北国」それは、寒さに冬を耐えて春を待つ山里の代名詞のような響きを持つ。
                               その山里に咲き始める辛夷の花は青空を背景に大きく白く輝くように見え、まさに
                              殺風景だった野山に開く希望の花のようにも見えた。
                               日毎に暖かさを増す陽春の頃は子供にとっては、新学期であり、学校を終えた青年
                              たちには出発(旅立ち)の季節であり、大人たちには野外の労働に勤しむ期待の時で
                              ある。今のようなコンクリートの無い道路は、凍った土が解けて歩くとどろどろに汚
                              れたが、それでも暖かい道を飛んで歩くのは嬉しかった。

                               八ヶ岳山麓では、梅の次にこぶしの花が咲いた。まだ枯れたままの野芝の中にはク
                              ロッカスを見つけることはあったが、スミレより前で、水仙やチュウリップもまだ芽
                              が出ればよいほどの季節であった。山々は緑と言っても松や杉の濃い影を見るだけで、
                              ところどころに残りの雪があったり、ボウとした落葉樹の枝が山の端を殺風景に描い
                              ている頃である。
                               畑脇に辛夷や木蓮の花が咲く八ヶ岳山麓で、その枯草の上にしゃがみつつ、家から
                              農作業の頬かむりをし、叔父や叔母と一緒に鍬を携えて出てくる母を待った幼い頃の
                              記憶がよみがえる。
                               コブシは遠くから見ると桜に似ており「田打ち桜」(この頃水田の準備で耕す=田
                              打ち)との別名があった。花を咲かせる季節が桜よりずっと早い。

                               花を待ち焦がれる北海道ではヒキザクラ、ヤチザクラ、シキザクラなどと呼ばれる
                              こともあると聞く。九州、本州、北海道および済州島に広く分布し、日本中に3月か
                              ら5月にかけて花を咲かせる。
                               花は純白で、直径6‐10cmと割合に大きい。基部は桃色を帯びている。日本の花
                              だが「コブシ」がそのまま英名・学名になっており(辛夷、学名:Magnolia kobus)
                              モクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木とされている。
                               花弁は6枚。枝は太いが折れやすいので強い風で折れているのをよく見るが、折れ
                              た枝を手に取ると、変わった芳香が湧出している。それを理由にアイヌの言葉では「
                              良い匂いを出す木」という意味の木名だそうだが、私には好きな匂いではない。樹皮
                              は煎じてお茶の代わりや風邪薬として飲まれるそうだが、それも試したことはない。
                               つぼみが開く直前の形が子供のにぎりこぶしに似ているところからこの名前になっ
                              たらしい。また、辛夷の実はゴツゴツしており、その実の具合から「こぶし」と命名
                              されたのではとの説もあると聞いた。

                               ちょうど辛夷の花が咲く頃に、白木蓮そして木蓮(紫木蓮)が咲く。いずれも木蓮
                              (もくれん)科。モクレン属ではあるが、別の花種で混同しやすい。
                               白木蓮は、辛夷と似た白い清楚な花で、花びらの幅が広く、厚みがある。
                              花は上向きに閉じたような形で咲き、全開しない。これが辛夷と違うところなので
                              ある。開花しているときの風景は、白い小鳥がいっぱい、賑やかに木に止まっている
                              ように見える。しかし、辛夷にはこういった印象はない。辛夷は開いて咲く。
                               白木蓮の花びらは太陽の光を受けて南側がふくらむため、花先は北側を指す(「つ
                              ぼみ」の頃は片方にそり返っている)ことから、「磁石の木」と呼ばれることもある
                              らしい。

                               一方木蓮は白木蓮よりも少し遅れて10日ぐらいあとから咲き出す。辛夷や白木蓮と
                              似ているが紫木蓮とも呼ばれ、こちらは花の外側が赤またはピンク色だか
                              らわかりやすい。しかし、内側は白で外側と内側のコントラストが美しいと言えよう
                              か。だが、れっきとした原産地中国の花木であり、唐木蓮(とうもくれん)など、い
                              ろいろ種類がある。
                               大きな花は、葉っぱが出てくるちょっと前に咲きだす。 
                               木蓮科の漢名である「木蘭」の音読み「もくらん」が「もくれん」に変化したとの
                              通説で、漢名の「木蓮」は、花が蓮(はす)に似ている木、の由来であるらしい。
                               木蓮は、地球上で最古の花木といわれており、1億年以上も前(!)からすでに今
                              のような姿であったとつたえられ、香水の材料としても使われる。
                               欧米では椿(つばき)類、躑躅(つつじ)類とともに3大花木とされているそうだ。
        
                                                      ○

                               今年は急激な暖気の到来で、辛夷も白木蓮も紫木蓮も梅と一緒に咲いてしまった。
                               とまれ、辛夷の花言葉は「信頼」である。
                               春の始まりに何と高貴な花言葉の花が咲くことか。信頼こそ人と人が世の中で過ご
                              すために語らずして守り抜くべき絆の根源であろうかとは思うが。
                               それにしても「こぶし」をどうして「辛夷」と書くのだろう?「しんい」とも読む
                              ようだが、辛い冬を収めていく状況とでも読めば良いのだろうか。

                               近所の公園の辛夷を眺める。 
                               青空の下、辛夷の花の咲くを見て、朝の空気を胸いっぱい吸い込むことができるの
                              は何と幸せなことかと、両手を挙げて背伸びをしてみた。
                                                                           風次郎
            

               
            辛夷                  白木蓮                  紫木蓮

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