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風次郎のColumn『東京JOYLIFE』  
   No307(C-30)
     
   日野春駅からの山は美しい
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          中央線各駅停車 30.日野春                                                   

                         もともと中央本線の工事は、思えば山あり谷ありの山間部に路線を設けるという難行であ
                        ったであろう。
                         トンネル鉄橋は言うに及ばず、さらに当時は重量級の蒸気機関車を走らせるので勾配への
                        配慮は欠かせず、駅もスイッチバックなど工夫を凝らさねばならなかった。
                         この地域、韮崎から長坂に至る七里岩と言われる釜無川東岸は、さらに東の塩川及び支流
                        に挟まれた狭い丘陵地である。したがって難工事だったであろうことは否めないが、反面、
                        列車は高台を走るのであるから見通しは良く、東に八ヶ岳、金峰、甲武信そして南は富士か
                        ら南アルプス、ことに甲斐駒ケ岳の嶮しい北壁など山の姿を車窓からあくなく眺めて堪能で
                        きる。山懐には田畑も多く、集落はのどかだ。列車を降りて集落を繋いでいる俗称「七里岩
                        ライン」と呼ばれる街道を歩いても、楽しめる景色が広がる。中でも日野春駅近くは周辺の
                        山が開けて四周の風景が絵になる眺めであると思う。
                         
                         日野春駅(ひのはるえき)は、山梨県北杜市長坂町富岡にある、東日本旅客鉄道(JR東日
                        本)中央本線の駅である。標高は615メートル。駅名は開業当時の村名、山梨県北巨摩郡
                        日野春村に由来する。
                         当駅は中央本線が韮崎駅から富士見駅まで開通した際、開業した。
                         当時、韮崎駅と富士見駅との間にはこの駅と小淵沢駅しか設けられていなかった。そして、
                        七里岩の急勾配の途中にあって、蒸気機関車の給水をする駅としてこの駅は重要な役割を有
                        していたのであった。だが、1964年(昭和39年)8月、甲府駅から上諏訪駅までが電
                        化されたことによって、給水駅としての役割は終わった。 
                         ホームを2面3線有する構内は広く、駅舎の長坂方の脇に側線が敷かれている他、昔の給
                        水塔の附近などには線路を撤去した跡も見える。甲府方面からの列車が七里岩の台地をのぼ
                        って来る途中にあるので、蒸気機関車時代にはこの駅で機関車に水を補給したのであった。
                         給水塔は、当駅の開業時に出来たもので下部がレンガ、上部がコンクリート、タンクの直
                        径はおよそ2メートル、容量はおよそ2万6千リットル。3番線の長坂方、北側の脇に残さ
                        れている。
                         2つのホームの穴山方の端と駅舎を、跨線橋が結び、駅舎は構内全体から見ると穴山方の
                        端に近い場所に置かれている。木造の駅舎は開業当初からのものを手直ししながら使ってい
                        る。待合所と駅事務室があるが、この駅は小淵沢駅の被管理駅となっている。

                         景色が良いのと、駅の近くに八ヶ岳の姿(南八つ)が優れるオオムラサキ自然公園がある
                        ので、私は、時々立ち寄ることにしている。
                         美しい蝶「オオムラサキ」は、昭和32年に日本昆虫学会において、世界に誇る日本の代
                        表的な、格調高い華麗な蝶として国蝶に決まった。中国、朝鮮半島、台湾に生息するが、日
                        本の生息地としてはこのあたり長坂町が日本で一番多いと言われている。
                         雄は羽の表側が美しい紫色に輝き、雌はこの紫色の輝きがないが、羽を広げると10セン
                        チ以上にもなる大型のタテハ蝶である。成虫は6月下旬~7月下旬にかけて羽化し、国内で
                        は北海道から本州、四国、九州に、国外では中国、ベトナム、台湾、朝鮮半島に分布すると
                        いう。
                         この辺りは昔から炭焼きが盛んで、炭の原料となるクヌギ林が多く残っていることや、八
                        ヶ岳高原に流れる水辺にエノキが多く生えていること、冬は寒く適度に雪が降るため乾燥が
                        少ないことなどの条件が重なって生息が多いのであろう。公園には資料館も併設されている
                        ので沢山の標本を鑑賞することができる。


                         列車は、同じ風景を見ながらまだたんたんと標高を上げて西行する。
                         6月の高原は美しい。爽やかさこの上ない列車は丘の上を走っていく気がする。時々こん
                        もりした小山がさえぎるが相変わらず両方の車窓の見通しが良い。
                         田に水が張られる頃だが、今年は水不足で田植えが出来ないで困っているというニュース
                        を聞いた。確かに5月の終わりから6月の初めにかけて車窓からも水の張られていない田を
                        見た。しかし、月半ばからの雨でそれも解消したようで良かった。

                         相変わらず掘割、起伏に富んだ地、沢には段々になった田=棚田を眺めながら長坂の駅へ
                        向かって行く。
                                                                             風次郎                                                                                    

      
           古を偲ぶ給水塔とオオムラサキ自然公園の航空写真(資料から)     

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