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風次郎の世界旅
 2011冬のドイツの旅
(2)

music by TAM Music Factory

        
          ローテンブルクの市役所(王様の絵と螺旋階段塔)
     

     2)再訪の城壁都市ローテンブルグ

                           
                            星のたくさん見える夜空の下に連なる城壁。駐車場に近い門をくぐると、とんがり屋
                          根の街並みがあった。10年ほど前に一度訪れたことがあるというだけで懐かしさが伴
                          う街であった。
                           真っ直ぐ北にゆるい坂道を上がって行くと、ロマンティック街道では最も名所と言わ
                          れるプレーンラインの三叉路であった。コンダクターはすかさずこの街の象徴的景観を
                          夜景で眺められることを皆に知らせ、振り返るメンバーは名所の景観に長かった一日の
                          旅程の疲れを癒すのであった。その先には丁度シーズンでクリスマスマーケットが催さ
                          れているマルクト広場に並ぶ屋台が明るく賑わっている。
                           その日の宿泊先ホテルROTER HAHN(ローターハーン)は民宿風のプチホテ
                          ルといった感じの落ち着いた外観である。小さな入り口を奥まで入り、まだ初対面同志
                          の旅仲間たちと見事な彫刻を施した大時計や書棚の印象的を語りながら部屋割りの鍵を
                          待った。 個人の経営だというが、高尚な趣味の程が伺われる。
                           外観の民宿風にしては部屋の内部は思いのほか広く、廊下から見た様子では客室もツ
                          インで50を越えるほどあったし、ベッドや調度品も清楚で感じが良かった。
                           玄関ドアに鍵を掛ける由、朝の散歩はどうしたらよいかなどと思案しながら、クリス
                          マスマーケットに出かけて行く仲間を見送ってシャワーを浴びて床に就いた。

                                                 ○

                           「ロマンティック街道の宝石」と謳われる中世の街並みがそのまま遺る美しい町ロー
                          テンブルグの朝を迎えた。戻る頃にはホテルの表玄関も開くだろうと、私は非常口から
                          外に出る。細い月が浮かんでいる。暗いが寒さは感じない。
                           ロマンティック街道は、ドイツのヴュルツブルクからフュッセンまでの366kmの街
                          道ルートである。もともと「ローマへの巡礼の道」の意味であるが、第二次大戦後、駐
                          留したアメリカの将兵たちが家族とこの地方で盛んにバカンスを過ごしていたことから、
                          観光地として開発するために、この名でコースが設定され、現在の恋人たちの語らいの
                          ような「ロマンチック」という表現がまかり通るようになったらしい。ちなみにそうい
                          う意味で初めて使われたのは、ジャン・ジャック・ルソーの『孤独な散歩者の夢想』の
                          「第五の散歩」の冒頭で使われたからということのようだ。街道中ローテンブルクの人
                          気度は殊に高い。
                           ドイツの観光街道は、マンハイムからチェコのプラハまでを結ぶ全長1000kmに及
                          び、この街で交差する古城街道や、ゲーテ街道、メルヘン街道などみな旅心を誘うよう
                          に思う。

                           マルクト広場に出てみた。市庁舎前の広場はクリスマスマーケットのテント屋台がい
                          っぱいに設置されている。昨夜も遅くまで賑わい続けたのであろうが、さすがに早朝は
                          閑散として眠りこけているように静かだ。
                           前の旅では、城跡の公園から見下ろすタウバー川の渓谷に広がる秋の景色をしみじみ
                          と眺めて過ごしたことを印象深く覚えている。今回私は城壁の外に出て高台に浮かぶ町
                          全景を眺めてみたいと思っていたので、通りを真っ直ぐ進んでいった。途中のシェラン
                          ニー広場は奥に建つホテルの玄関から漏れる薄明かりに照らされて、ここも静けさばか
                          りだった。
                           門の近くでジャンパーを着た男とすれ違って挨拶を交わした。5時前である。城壁外
                          から通う飲食店などを開けるために通う人なのだろうか。
                           城壁を出て、地図を頼りにタウバー川のほうへ向かったが、城壁沿いの道は林にぶつ
                          かり低地にはなかなか出られそうになかった。仕方なく、渓谷へ下るのは諦めて城壁の
                          外のベツォルド通りの緑地を歩いた。駅に向かう道路との交差点に近い広場には林檎の
                          木が立っていて、前に来たときそこで小さな林檎の実を一つ拾ったことを思い出したり
                          した。
                           城壁内への門はあちこちに開けられているようだ。そこから一番近い門を入るとマル
                          クト広場への広い真っ直ぐな通りであり、ホテルや洒落たカフェが並んでいた。
                           あたりが少し白んで来る頃、店々にポツリポツリと明かりが灯り出し、朝が始まって
                          くることを知らされた。 

                                                      ○

                           昨夜遅かったこともあって、この日のスケジュールは午前中をこの街で過ごし、ニュ
                          ルンベルクへ移動することになっている。
                           朝食後はなと再び街の中を歩くことにした。
                           まずは懐かしいブルク庭園へ行った。そこはタウバー渓谷を見渡す神聖ローマ帝国に
                          君臨したホーエンシュタウフェン家の居城跡である。見下ろすのどかな渓谷の豊かな緑
                          は、今回は細い枝が描く透けたグレーの林になってタウバー川を取り巻いていた。
                           私たちはブルク門から城壁内へ戻り、細い路地を歩いて反対の東側の城壁に登りワン
                          ブロックほど歩いてみた。あちこちに大勢の観光客が歩いており、兵士の見張りと窓か
                          ら攻撃するために設けられた城壁の回廊は、今や往時を偲ぶ街をぐるりと眺めて過ごす
                          為の散策路と化しているのだった。
                           クリスマスマーケットやみやげ物店を覗きながら、10時にマルクと広場の参事会宴
                          会場建物の壁面にある仕掛け時計のオルゴールが鳴り、ビールを飲む人形が現れるのを
                          見るのも懐かしいひとときだった。当地の大酒飲みで町を救ったというのはマイスター
                           ・トルンクの故事を伝えるものであるが、カラクリ時計の旅人に与える印象も和やかで
                          楽しいものだった。
                           第2次世界大戦終了直前の米爆撃で6割を消失したものが甦った中世の帝国自由都市
                          である。このおとぎの国を訪れることは、まったくタイムスリップした憩の時であろう
                          か。
 

  
HOTEL ROTERHAHN

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