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サクレクール寺院 ルーブル美術館
モンマルトルとルーブル
パリの3日目は自由時間が与えられていたので。私たちは世界で一番わかりやすいと言われている地下鉄(メトロ)を
利用して歩いてみることにしていた。地下鉄もホテルの近辺は地上、しかも高架なっていて、西にサン・ジャック東にグラ
シール、どちらの駅も窓から見えた。どちらの駅もホテルから100mぐらいにだったが、グラシールの駅の近くにはちょっ
としたマーケットがあり駅前の風情を囲っていた。
8時30分を過ぎていた。ゆっくり朝食を終えておもて通りへ出ると、朝陽の当たるサンジャック通りはまだ通勤の人々
が忙しく行き交っていた。
表通りの人波はグラシールの方に向かっているようだった。私たちの足も知らずそちらに向いた。
郊外を走るこのラインは右回りにモンパルナス、凱旋門へさらに市街地の北西にあたるビジネス街へと通じている。
東京のラッシュほどではないが満員電車にもまれてランファートロチェルーで乗換えを果たした。初めての街では、目標
がひとつ達成できれば「果たした!」という感じになる。
ここからは北へ向かえばいい。先ずモンマルトルの丘へ登ってみようとスタートしてきたものの、やはり不安だ。地下鉄
は外の様子もわからない。
乗り合わせた近くの人に次の乗り換え駅を確かめてみようとしたが、さて話しかけた英語が通じない。若い通勤途上と
見られる女性だったが、あちらが恥ずかしそうにしていた。むこうも一生懸命聴こうとしてくれたのに失礼なことをしたと思う。
さらに、地図で読む名前と駅名のアナウンスがとても同じには聞き取れない。とてもやさしい話し方でほんとに囁くような
のだが、“フランス語ってそうなんだ!”とこちらはため息ばかり。各駅の矢のように走る駅名の横文字を追ったりしてそれ
でももう一度の乗換えを果たし、Barbes.POchechuart駅に着いた。この駅がモンマルトルの丘の麓のはずである。それだ
けは間違っていなくてよかった。
――仏語は難しいなー。読めない。メトロは楽だと聞いたし、何の事前準備もしなかったが、――
一般的に英語が通じなくて参った。駅からの出口も良く判らなかったが、朝の混雑したラッシュの波に流されるようにして
いたら地上に出た。 ちょうどうまく、そこから丘の上のサクレクール寺院の屋根が見えた。
麓の細い路に並ぶ商店街が店を開ける準備に動き出している。その店々の間をぬけてヴィレット公園に入り白い石の階
段を登っていった。
階段のところどころにはまだ昨夜の雨の水溜りが残っていた。階段の中腹で振り返るとパリの街が朝陽に照らされて広
がっていた。オペラ座があり、ノートルダム寺院があり、セーヌ川を挟んで並ぶルーブルとオルセーの美術館が大きく見えた。
石段を登る人はまだ少なく、ほとんどはなと二人きりのようだ。
登り切ったテラスのようになった場所で二人並んでパリの街をゆっくり眺めた。エッフェル塔は薄い靄を晴らしてシャンゼリ
ゼ通りの先に立っている。雨上がりの街が次第に活気を帯びてくる時間だ。穏やかで暖かい日になりそうで良かった。
白いサクレクール寺院に入ってみると、祈りの人々が数人、横並びの椅子に背を丸めていた。普通の教会の雰囲気があ
った。
観光客の姿は少ないようだった。明るい朝のモンマルトルの丘に静かな時を過ごせることを幸いに思った。
白い石の手すりに沿って歩き、寺院を離れテルトル広場の方へ歩いていく。 植え込みの垣根がつづき、坂道を折り返し
て長い階段の上に出た。そこがユトリロの絵になったガス灯の並ぶ階段であることはすぐに解った。
古い時代、自由を求め、素朴な芸術家たちが集いを重ねた丘にいることを思うだけで、満たされたように思った。そこに
パリの何処からも目にとまる白い教会が出来たということは偶然であろうが、絵画的な美しい丘の構成を変えていく時の流
れを思うのであった。
ゆっくり階段をおりた。
2軒ばかり脇に建つ喫茶店があり気を引かれたが、開いている店を見つけられないまま降り切ってしまった。
私たちはアニュルス広場からメトロに乗りルーブルへ向かった。
ピラミッドの広場に少々の行列があったが思ったほどの混雑ではなかった。地下一階へのエスカレーターで降りていくと、
ホールの中央にインホーメーションがあり、右手に入場券売り場があった。キャッシュを切らしてしまったので、カードの利
用を申し出ると現金のみだと言う。奥の方の郵便局の脇にキャッシュ・ディスペンサーがあると教えてくれた。その機械ま
で行くが、ここでもまた書いてあることがフランス語なのでよく解らない。
仕方なく隣りの郵便局カウンターに申し出て、局員に無理やりそこで手続きしてもらい200フランを手にした。局では下
手な英語が何とか解ってもらえて良かった。
焦りの汗もかいたが、館内は暖かいというより人いきれも手伝って暑いくらい。カフェテリアで缶ジュースを買って喉を潤
したが、何とこれが1000円にも相当する値段、中身の価値が高いのか、間違えたのか、とにかくさっぱりすれば良いと飲
み干す。そして入場。
さて、先ずモナリザを見ようと正面エスカレーターを上がる。館内は元の宮殿だというから、なるほど広い。入り口でもら
った案内図を見ながら人だかりの多いガラスの中のモナリザを鑑賞した。次は何処だ。全部はとても廻りきれないとのこ
とだから部屋を探すのにも一苦労があった。
ヴィーナスの像、ニケの像、マネやモネの作品を見れば、今日は良いとしていたのだが、中世前の歴史画や神話から
抜け出てきた神々の姿を描いた巨大な画面が、昨日のヴェルサイユでやロンドンのウィンザー城で見た作品を呼び戻し
て繋がり、気を取られて随分時間がかかってしまった。
ルーブルはやはり好きな、なじみのあるロマン派、印象派の絵が心を和ませてくれた。その面ではあらためてオルセー
を観なければなるまいと思う。
3階のフランス人のコーナーにコローの絵が沢山あって楽しかった。
約2時間ルーブルで過ごした。ほんの一部しか見れないことは覚悟していたが、それでも行き当たった部屋の王家の宝
石コレクションなども見たりして草臥れてしまった。
腹が減った。
暑苦しいほどの館内から外の空気に触れると、明るい陽も射していて清々しかった。ピラミッド広場の噴水の前で腰をお
ろして一服し、食事を思案した。またフランス語か!と、尻込みしそうになったが、この近辺なら何とか英語が通るだろうと
立ち上がる。
広場に面したところにカフェがあったので入ろうとしたがそこは満員だった。
それではとルーブルに沿った北側の小路に出て、すぐ近くのレストランに入った。表にテーブルを置いたちょっと洒落た店
で、テラスのウインドウにお菓子が飾ってある。品も良さそうで高いかもしれないと思ったが、ハラペコには勝てない。ドアを
押して入ると、内部は奥に向かって3つ4つのテーブルがこじんまりとを配置しされている。
私たちが何となく遠慮がちに入り口に一番近いテーブルに座ると、少々年をとったマドモアゼルがにっこり笑って近づいて
きてメニューを出す。しかし何も読めない。英語で“パスタはあるか?”などと訊いてみたら、ありそう。パスタとビールを注文
する。どうやら通じたらしい。
しかし、15分くらいしてもなかなか出てこない。そこで声をかけるともう一人のマドモアゼルが来て何か言う。だけど解らない。
お互いにきょとんとするばかり。 そこへボーイが来てたどたどしく、
「日本人ですか?」
「Yes!」、ホッとして答えると、彼は日本人用のメニューを持ってきた。
その中から選べという。
“えっ!これからなの?”
先ほどのやり取りはまったく無意味であったらしい。仕方ない、 “えいやっ!”とばかりページの真ん中にあるメニューを
指差した。
ところが先の2人のマドモアゼルが、近くのオーブンをガチャガチャやりながらブツブツ言っている。
私はそれでやっとオーブンの中のものがパスタとわかり、指差しながら日本語やら英語やらで、
「それでいい。すでに注文したままと変えないでいい」と繰り返した。
これでやっと決着した。すぐにパスタとビールが運ばれた。ハラペコには両方ともとても美味かった。またもや冷や汗をか
いたが、店の人々とのやり取りも楽しかった。
やがて1番先のマドモアゼルがケーキのメニューをもってきた。どうも何か選べといっているようだ。解らないで困っていると、
手まねで表のショウケースへ来いと言う。はなと二人で立って行くと、“オススメ”と日本語で言った。おどろき!こいつにはも
ちろん“OFF CORSE”の答えしかない。
やがて豪華なパフェケーキが現れた。
会計は先のボーイがレジでカードでの精算をした。私はチップを申し出たが、彼曰く、「No, We welcome Japanese!
」とのこと
であった。
私たちは気分良く店を出た。その店の名は『LE REGUENEAU』忘れられない。
丘を降りてルーブルへ向かうメトロの入り口
* 10.パリの印象(D)シャンゼリゼとムーランルージュ
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