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風次郎の世界旅
 ヨーロッパ・メモリアルツアーin1996
(17)

music by KASEDA MUSIC LABO

    
ル・パノラミック訪問 ブレバン登頂証

ヨーロッパ・メモリアルツアーin1996(17)

ジュネーブ(A)モンブラン展望ツアー

              朝食もそこそこといった頃、大きなバスがフロントにやってきた。 「へー、こんなに大きいのに乗るの、たった8人(添乗員を
             いれても10人)だよ!」と、誰かが言った。
              中は半分が普通の椅子で後方がサロンになっているデラックスなバスだった。私とはなは仲良しになった高井さんご夫妻と
             一緒にサロンのテーブルを囲むことにした。空がどんよりしていて雪でも降りそうな気配だと高井さんも心配そうなことを言っ
             ている。運転手にようすを聞いてみると、ジュネーブの冬は大体こんな感じの日が多いとの事だ。日本の裏日本的な様子かと
             思った。しかし、「山はかなり高い処にあるから、天気の良いことが多いよ!」と、気休めとも取れる付け足しがあった。ものは
             考えよう、そうかもしれないと皆期待に胸を膨らませて車窓を眺めていく。
 
              ジュネーブの市街地を離れると、すぐにスイスとフランスの国境にさしかかった。運転手が降りて行き、簡単にリストの提示で
             越境する。私達はバスに乗ったまま旅が続けられるのだ。EU構想は着実に進行していると思った。
              バスはシャモニーへ、シャモニーへと高速道路を進む。道路は少し凍っているようだったが、まったくバスのスピードは変わら
             ない。シャモニーの手前で深い谷に掛かった橋を越えた、その先のトンネルを過ぎたあたりから霞んではいるが雪を纏った高
             い山の景色が見え始めた。
              「うわー!」と、車内から歓声があがり、とたんに元気の良い声が飛び交い始めたのだ。それもその筈、霞んでいるのは山麓
             の霧で、山の峰に陽が射しているのが見えるのだ。
              私も胸がスウ-として、“良かった!”と思う。天気のことは誰にもどうにもならぬ心配の種だったのだ。思わずニヤリとしてしま
             った。

              バスはシャモニーの街へ入っていく。スケート場が見えた。雪も深くはないようだが積み重なっており、道は凍っている。バス停
             の広場から早速ロープウェイで山へ上ることになった。コートに防寒用の裏地をしっかりとつけて着込み胸を躍らせた。
              モンブランのロープウェイは、シャモニーの街からモンブランの山頂直下にあり標高も3842mと高い場所へ上るエギ−ユ・デ
             ュ・ミディへのルートが有名だが、今回は工事中とのことだった。モンブラントンネルを抜けてイタリア側から上るルートも面白い
             とのことだったが、午前の良い天気を掴んだうちにモンブランを見ようと渡辺さんと金井さんはル・ブレバンへのコースを推奨した。
              私は東京の観光局のパンフレッドでブレバンの山頂は見通しがよく、山頂のレストラン『ル・パノラミック』はフランス映画の撮影
             には良く使われることを読んでいた。何の映画だったか、ケリー・グラントとオードリーヘップバーンが、あのテラスで絡み合いを
             演じたシーンを思い出し、むしろその方が好ましいと思っていた。だから、“シメタ!これでいい!”と内心で叫んで、又ニヤリとし
             ていた。“標高だって2525mあるし、OK、OK!”。
              2本のロープウェイを乗り継いで30分、いたるところスキーの滑走が出来そうな真っ白な斜面がつづく。天気が良いので滑走
             コースには何組ものスキーヤーがターンを楽しみ降りていくのが見えた。家族連れでゆっくり固まって滑っているなど微笑ましい
             風景もあった。
              山頂は正に素晴らしい絶景パノラマ。太陽が、シャモニーの街のある谷を隔てて対面した山波の上に白い山肌を見せている
             モンブランの左手から、丁度上がる時間だ。
              煌めいた稜線が瞬く間に光を集めて、照らされて輝く山肌に変えていった。
              風もなく穏やかに晴れて、見渡すかぎり、文字通り360度の展望である。
              ロープウェイの駅にはスキーヤーがどんどん到着して朝日を浴びながら思い思いの方向に滑走していく。
             レストラン『ル・パノラミック』は、ロープウェイの終着に隣して設けられていた。数々の名作映画に登場しているだけあって山頂に
             あるとは言え整った見栄えであった。
              よく映画の舞台になるのは建物の谷側、モンブランを正面に望むエプロンのように丸く張り出したテラスだが、開店時間が12時、
              通常は予約制とのことで、眺めるだけのつもりでいた。山を眺められたことで悦に入り、喜びを隠せないで皆ではしゃいでいた時、
              レストランの若い女性が入り口のドアを開けはじめていた。近づいてみたものの話掛けられないので、金井さんに頼んでテラスま
             で入らせてもらえないか聞いてもらうと、なんと軽くOK。
              皆喜んでテラスに入っていった。日を浴びるテラスは暖かくて、私達はコートを脱ぎ捨ててモンブランに見入った。そして、ほんの
             暫くすると、なんと、レストランの彼女が「コーヒーのサービスくらいならOKよ」とのこと。私達は待ち構えたように挙って注文した。
              “テラスにはやはりコーヒーがなくちゃー”
              室内のカウンターにいてそれを待つ間に、誰かが壁に張ってある「パノラミック来店証明書」を見つけてそれを欲しいと言い出し
             た。結局店の彼女はそれもOKして私たちのグループは大満足。
              開いてない事になっている時間だから貸切同然だ。
              名もないスター達は名優も使っただろうテーブルを前に、ゆったりとテラスの椅子にもたれて、朝陽の溢れる冷気の中「コーヒー
             つきのアルプス展望」をゴージャスに過ごしたのだった。
              皆雪に塗れて遊び、写真撮影を楽しんだ。清々しく、美しく、楽しい場だった。恵まれて、好日に登頂できたことに満足し、降りる
             ロープウェイの中は喜びと感激の言葉で溢れていた。
              高山へのケーブルカー設置は世論がいろいろと批判する場合もある。しかし、昨今このように簡単に旅行客が高地に立ち、自
             然の美しさを直感できることは社会的善だと思う。
              それにしてもこの地の夏のシーズンは大変だろう。その意味では冬の比較的空いた時期は、静かに眺めを楽しむ絶好に機会
             だと思う。それもロープウェイあってこそだ。
              山を降りて、麓のシャモニーの街のレストラン(LE BLANCHOT RESTORANT)で昼食を採った。その後シャモニー市内を散策し、
             モンブランを望む広場に寄ったり、恒例のスーパーマーケットでの買い物を楽しんだりした。
              このツアーの最後の目的地かと思うと満足のうちにも名残惜しいシャモニーの街であったが、2時には再びバスに揺られてジュ
             ネーブに向かった。

              市内へ戻りバスはひととおりの観光名所を廻った。オービーブ公園、英国公園にはかなりの観光客を見た。ヌーブ公園では屋
             外で大きな駒を抱えて動かすチェスを楽しむ人々の姿も見た。グランテアトル、世界のブランドを連ねるマルシェー通りから、モン
             ブラン橋を渡って国連地区の様子も見た。
              モンブラン橋の畔、ビュッケラーの土産店へ寄って一日のスケジュールを終わりホテルのロビーに寛いだら、誰かが「スイスへ
             来たらチョコレート!」と言ったのをきっかけに、添乗員の2人が有名なチョコ製造店を案内してくれることになった。駅前通りにあ
             る小さな店だった。試供品を口にしながら幾つかを土産に買い求めた。
              私達は高井氏夫妻と一緒にここでもコロナバン駅の地下にあるスーパーへ行き、地元らしいリーズナブルを幾つか求めた。
              高井氏は私がローマの空港で買った皮製のブックカバーをどうしても探すと言って、熱を入れたがなかなか見つからず、ホテル
             に戻ってからフロントに聞いて近くの『SUWAN』というデパートへも一緒に行ってみたが、靴やジャンバーなど皮製の名産がいろ
             いろある中、ついにブックカバーは見つけることが出来なかった。私は気の毒になってしまって持っているものを一つ譲ると言っ
             たが、それは面目が立たないとのこと、彼は残念、泣きの泪を土産にすることになった。

              グループにとって、ツアー最後の晩餐の時がきた。コロナバン駅を通り抜けた反対の街にあるホテルの1階にある「モンブラン
             ・レストラン」のミート・フォンデュでとのことだった。鍋を囲んでの話は、ほとんどこの旅を振り返る思い出語りだった。どのテーブ
             ルも盛り上がって声高な響きも聞こえるようになった頃、数人の子供達が客席の脇に来て歌を唄い始めた。それぞれのテーブル
             ではチップをはずんでいる。
              “何だろう?”添乗員の二人も知らないと言う。 
              後で聞いたら、「昔、住民の夫人が兵士の押し寄せる足音の響きを察知して、それを周囲の人々に知らせ、皆で応戦に準備が
             間に合って助かった。その出来事を、記念日には子供達が唄って思い起こす風習」だとのこと。民族の結集を讃えているのだそ
             うだ。
              私たちもほかの客と同じようにニコニコと握手をして、チップを渡した。
              子供たちはいくつかの歌をあちこちのテーブルで唄って帰っていった。
              最後の時にスイスの民族に伝わる風習を味わうことが出来て良かった。


全員でブレバン山頂の記念写真
 

* 18.ジュネーブ(B)パレ・デ・ナシオン 終章
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