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風次郎の世界旅
 ヨーロッパ・メモリアルツアーin1996
(12)

music by KASEDA MUSIC LABO

  
アリタリア航空の窓からアルプスを眺める

ヨーロッパ・メモリアルツアーin1996(12)

(@)ローマ

             ロンドン、パリとツアーの人達が一緒に過ごすと、個々の旅を楽しみつつも自ずから仲間になってくる。お互いが顔がわかって
            信頼関係が生まれ、ちょっとした移動のときなど荷物の監視を頼んだり、食事の席が何回か一緒だったりしているうちに気の会
            う友人になれるのも旅の楽しみである。
             同じ年恰好の千葉に住むというT氏夫妻と気があって談笑するようになった。話しているうちにたまたま出身校が同じこともわ
            かった。学部は違うが同期だった。縁は異なものである。ローマのあとスイスへも一緒だとわかり、ますます打ち解けて旅が楽
            しみになってきた。

             12月8日、今日はいよいよローマへ移動するのだ。
             天気の良い朝だった。7時にホテルの前からバスに乗り、ドゴール空港へ向かう。ドゴールはさすがにヨーロッパの中心ハブ、
            空港は朝のラッシュで大混雑だったが、添乗員の金井、渡辺両嬢も手際よく、まるで国内線に乗るように10時5分のアリタリア
            航空に乗り込んだ。ロンドンから着いたときもスルッとバスに乗り込んでしまったので“この空港の雰囲気はよくわからないな”と
            思っているうちに機上の人になってしまった感じだ。しかし、ここはもう一度帰国時最後のフライトに立ち寄ることになる。
             添乗員の金井さんに声をかけると、「今日は時間正確でほっとしたわ!アリタリアは1時間遅れるなんて良くあるから。」と喜ん
            でいた。帰りのトランジットでは困るほどドゴールで時間があるようだ。そのときはうろうろして見よう。

             機内のアナウンスがしきりに「セニョル、セニョリータ」と呼びかけるような気がする。他のイタリア語はまったくわからないが“イ
            タリアだな!”と思わずアテンダンスを眼で追った。目鼻立ちがはっきりして鼻がつんと高い青年が乗客のベルトを確かめていた。
             機がアルプスの上を通過しているようだ。はなが窓側の席だったので、私も身をよじって下を覗くと真っ白に覆われたアルプス
            の山並みが一面に広がっていた。
             2時間の飛行であったが、アルプスを越えると雪景色は途絶えて、大きな町や小さな山を見渡す飛行だった。やがて高度が下
            げられ、海岸線の村を見ながら、機はレオナルドダビンチ空港に着陸した。太陽の国、歴史の国、カンツオーネの国、イタリア、
            ローマに着いたのである。

ローマ市内観光

             ローマを訪ねるにも特別の思い入れがあった。歴史の国、ファッションの国であるのは勿論だが、伝統的な芸術ばかりでなく有
            名になった馴染みの映画の舞台が多いのも事実だ。ローマの町の中には古い舞台と新しい人の心が混在している。「ベン・ハー
             」や「ローマの休日」のイメージが違和感なく混在しているようだった。 そしてその舞台にワクワクとして上るように、私たちのバ
            スは昼間のファミチーノ(レオナルド・ダビンチ空港を現地ではこうも呼ぶ)空港をあとにして早速市内に入っていった。
             現地の池田さんという女性ガイドが乗り込んでいた。勿論日本人だが、何となくローマ化したというか顔つきが古典的ラテンタイ
            プに見えた。時々ヒステリックな語りもあり、浅黒い肌で日本語の上手なローマ人見たいな気がした。しかし、バスが走り出して話
            が展開していくうちに、博識、真面目な日本人ガイドであることがわかった。彼女が日本で思っていたこの国のことを話したりした
            からである。
 
             「観光の前に先ず昼食です!」と案内があり爆笑を買った。市内のある街角にあるホテルの前にバスが止まり、地下にある「ボ
            ストン(BOSTON)」というレストランへみな流れ込むように入っていった。パスタの簡単なメニューだったが、久し振りに美味いもの
            を食べたような気がした。ビールも美味かった。何故か周りの人達も同じようなことを言った。イタリアの油が良かったのか、日本
            でも食べなれた味だったのか皆口に合ったようだ。

             腹ごしらえが出来て、美味しくて気を良くしたメンバーを乗せて、バスは市内巡りりを始める。しかし、何だか街の中をグルグル
            (そんな風に感じた)廻っているような気がする。町の旧くて似通った建物が区別つかなかったからかもしれないと思った。それ
            に空も曇ってきて明るいローマの印象は拭われ、影の少ない旧さの目立つ光景を見ることになった。
             道は狭いところが多く、縦横また斜めに走っている道路がいたる所で交差してとても複雑のように感じた。広い通りが少ないか
            ら目的地へは、常に幹線を選ばねばならない。幹線はどうもヴェネチア広場から通ずるのがわかり易いようだ。車窓からはエマ
            ヌエル2世記念堂が何回も見えた。

             トレビの泉へ行った。街の一角、建物の谷間のようなところにあって人で溢れていた。伝説に習って、もう一度来ることが出来
            るようにお賽銭を後ろ向きで泉に投げ入れる。後ろ向きなので人にぶつかる。スリが多いのだそうだが、“そうか!”狙いやすそ
            うだ。ローマの人の目つきがやけに窪んで暗く、悪人相に見えてきた。
             しばらくしてバスに戻り、今度はコロッセオへ行った。バスはコンスタンティーノの凱旋門の手前に止まり、歩いて凱旋門の前を
            通って高い観客席の壁の下まで行った。ここも人の群れが沢山で、限られた入り口は閉鎖される時間を目前にして混み合って
            いた。たくさんの物売り人が押しかけ喧騒の中だった。
             私たちは全員で記念撮影をしてから池田さんの解説を聞いた。円形大闘技場、良くこんなものを造れたものだと技術や権力
            に驚嘆しつつ、猛獣も人間も人の目に触れながらここで死闘を繰り返していたかと思うと、建造物に感心するだけでは済まされ
            ぬ思いでいっぱいだった。
             ローマのガイドブックと絵はがきを買ってバスに戻った。
             車窓からチルコマッシモが見えると、ローマ帝国時代の競技場の跡であり、またローマ時代を背景に描かれた有名な映画「ベ
            ンハー」の車上の戦いの場面がここで撮影されたことが紹介された。
             このチルコマッシモと道路を隔ててパラティーノの丘がある。丘の土手のようなところに作られた旧い建物の中にヴェネチアン
            グラスの工場があって、芸術名産加工品工場の見学をすることになっていた。精密な彫刻を技師一人一人が丁寧に仕上げて
            いるところを見た。高価なものに相応しい青く輝く光が美しかった。
             当然のことだが、そのあと作品紹介と熱心な販売が行われていたが、私は飛び出してチルコマッシモを見に行った。カーブは
            150mトラックのもの、ストレートは200mはありそうな赤土のトラックだった。“よし、明日の朝走ってやれ”と、密かに誓いを立
            ててバスに戻った。
             と、建物の入り口に頑丈そうな皮ジャンパーの男がうろついているではないか。
             私と同じように早々ヴェネチアングラスの場を引き揚げてきた高井さんと目配せしながら、“ちょっとヤバイネー”などと交わし
            注視していたら、出てきた私たちの仲間の男性が不審を顕にした。ところがその男は、われわれのバスが店の出入り口をかな
            り離れたので、店の回した案内人であることがわかり互いに苦笑した。
             ついついいローマはヤバイとの意識が上滑りしたようで可笑しかった。
             買い物の吟味は勿論、トレビにもコロッセオにもトイレがなかったから、ご婦人方がその用を済ませるまで、その後さらに怖い
            案内人は門番をつづけなければならなかった。時間がかかったが、ヴェネチアグラスもいくつか売れたようで、怖い案内人も満
            足の様子だった。

             私たちは日が落ちるのを待ってたようにヴァチカンへ向かった。そこは今日が特別の日なのであった。

  
チルコマッシモ(手前横の線がトラック)とパラティーノの丘(バスの車窓から)

* 13.ローマ(A)ヴァチカンのマリア懐胎祭とカンツオーネ
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