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道中のインターバルは旅の大きなアクセントになる。
タバコを吸う人のかっこよさがこんなところで目についた。青空の中へタバコの煙はとても軽くすばやく消
えていった。白い煙の線の消え去るのが清々しかった。
バスのドライバー、ブルースさんはトロントの空港から一緒だったから、メンバーは次第に打ち解けて仲間
同士ように声を掛け合っていた。背が高くてスマートで、きちんとネクタイを締めた品の良い紳士で、添乗員
の寺山さんと話している雰囲気もとても穏やかで楽しげだった。
私も乗る時と降りるとき一言づつ声を掛けていたが、彼も律儀に言葉を返してくれた。彼は日本は知って
いると言っていたが、日本語もそう得意ではなく、日本人は礼儀が正しいということに拘っているようであった。
しかし、欧米人特有の味付けセリフを交えて明るかった。
ビッグアップルの駐車場でバスのステップに足をかけながら、「素晴らしい天気じゃないか!」と声を掛けると、
「実に気持ちの良い日だ」と言った。私は、
「暖かい日にもなったし、これはブルースさんの力によるものか?」
と半ジョークを飛ばすと、
「皆様が仕でかしたものじゃないの。」と言った。
外国でのこんな他愛の無いやり取りは、楽しさを増してくれる。
再び美しい紅葉の中の道路をバスは走り続けた。車中では「ビッグアップル」でみんなが買ったアップルチッ
プスの口ではじける音がしていたが、私ははなが買うと思って買わなかったので、口寂しいような気がした。ア
ップルチップスは日本でも何処にでもあるものだが、皆が頬張っているとなぜか欲しくもなった。はなの所為に
するわけもなく仕方なく我慢した。
しかし、私は良いものを手に入れてきた。
それはカナダ全域の「道路地図帳」だ。売店の回転棚にあって$9.5というリーズナブルなものである。開くと
この店のある「コルボーン」という場所の名前がすぐに見つけられたので即座に欲しくなって買った。バスに乗
るとき、寺山さんが「それ良いわよ!私も買ったの」と言ったので、ツアーガイドが使っても良いものなら、と満
足だった。ツアーの最中、その後時々この地図帳を開くと良くわかった。心の中で、アップルチップスよりかな
り良いものを買った、とほくそ笑んだ。
バスは古い時代カナダの首都がおかれたキングストンの街はずれを過ぎてからは、セントローレンス河に
沿った道路となり、ガナノーク、ブロックビルなどの静かな町を川面の風景と入り交じって眺め通過した。
やがてオグデンスブルグから、オタワへ向かう416号線への分岐を経て、セントローレンス河に別れを告げ
た。地図を見ると、この416号国道に「Veteran's Memorial Highway」と書いてあった。何故だろうか?いまだに
誰にも聞いてない。
それから1時間、秋の陽の降り注ぐ穏やかな紅葉の中を走り続けた私達はカナダの首都オタワの市内へ向
かう416号線へ到達し、オタワ川に沿った416号に乗って市内へ入っていった。と言っても川沿いのハイウェ
イというのではない。また市内といっても都市市街のビルが林立する光景ではなく、のどかな自然の田園風景
の中を走っていく感じがした。
もう正午を過ぎて1時に近い時間になっていたと思う。
私たちはカナダの首都オタワの市街の中心地、バイワード・マーケットに降り立った。
風次郎の集めたメープル(2) (3)