☆☆☆

風次郎の世界旅
 カナダの秋
(7-1)

music by KASEDA MUSIC LABO

      
             風次郎が集めた紅葉(1)     

7.メープル街道(@)

                       快晴の清々しい朝を迎えた。
                       ホテルはまるで広々とした平地の中心にあるかのように窓から見る高速道路の先、彼方は地平線の
                      薄雲が青空とつながっていた。
                       フロントを出て、芝生の先に立つ大きなメープルの下に向かう。
                       ひんやりとした秋の朝の空気がダウンタウンからのゴーッと響く都会音を交えて少しよどんでいる。
                       “暖かいんだ――”
                       ホテルの周辺は新しく進出してきたビジネスビルがそれぞれ広大な敷地を芝生と植樹によって環境を
                      整えていた。近くにはpolice Associationなどの公共建物もあった。隣にあるYORKLAND BILDING を覗
                      いて見ると、1階はコンピュータ関連のビジネス機器ショウルームだった。 Hyreddpakkadのものが多く、
                      残念ながら日本のメーカーのものは見あたらなかった。
                       いくつかの大きなビルの間にビジネスグッツ、生活用品のショッピングモールがあった。アメリカやカナ
                      ダのこの種のショッピングモールは殆ど2階建てということがない。駐車場から大きなショッピングカートを
                      押してぐるりと周回するスタイルのショッピングセンターは最近日本の郊外や田舎にも出来始めたが、規
                      模が違う。大陸の発想と言うか、生活様式の違いが良くわかる。ここには家具の展示されたコーナーや、
                      診療所までもが混じっておりガラス張りの待合室が見えた。
                       建物と建物の間が遠いので、私は芝生を横切りながらメープルの紅葉を確かめつつ歩いた。なんと数十
                      本の木下を歩いたのだが殆ど木の葉の形が異なっているのだった。芝生に散り落ちた数枚を集めてホテ
                      ルの部屋に持ち帰り、宣伝用に持ち帰ってよいと書かれた分厚い不動産広告の冊子に挟んで押し花にした。

                       ホテルのビュッフェで朝食を済ませ、バスに向かう。
                       今日はオンタリオ湖に沿って東北に進み文字通りメープル街道を辿る旅である。
                       ホテルのすぐ傍が、空港へのアクセスとダウンタウンから北に延びるハイウェイの交叉する場所に設けら
                      れたゲートになっていて便利だ。ハイウェイに乗ったバスはトロント郊外の平坦地を、先ずはオンタリオ湖畔
                      へ向かう。
                       高速道路に乗ったら視界がさらに開け、「トヨタトロント」と画かれた看板が眼に入った。また、広い敷地の
                      中に木々と芝生に囲まれた絵になるデザインの贅沢な住宅がいくつか見えた。
                       しばらく進むうちに、少しの起伏を持った森の間には入っていった。
                       寺山さんがマイクを手に持った。
                        「サー皆さんどうでしょう。この美しさ!」と、
                       だいたいがアスペンポプラと呼ばれる種類の木々だとのことである。
                       すらりとした幹に、真っ赤に染まったもの、黄色から橙を保ち、それぞれの木の個性を表そうかのごとく深
                      紅に交じる物、いずれも鮮やかに、今日初めて色を染めたごとく一斉に広がっている感じだった。
                       そしてその彩りは、私たちの乗ったバスが地形の軽い波の上をうねる度に角度を変えて煌き、内陸深く何
                      処までも続いているように思われた。 
                       カナダの秋、本当に美しい秋の広がる世界だった。

                       メープル街道はナイアガラとケベックを結ぶ全長800kmにわたって続く、このさとう楓(メープル)の森の中
                      を走る道路である。オンタリオ湖からセントローレンス川沿いに、もともとはヨ−ロッパの冒険者が開き、移民
                      者が開拓を進めたルートであることから「ヘリテージ・ハイウェイ」と呼ばれていたそうである。したがってこの
                      素晴らしい紅葉だけでなく、街道に開けた街、すなわちトロント、キングストン、オタワ、モントリオール、ケベッ
                      クといずれも歴史の背景を醸しつつ、伝承の美しい都市であるとの事である。
                       街道を進むバスはオンタリオ湖のほとりに出て、しばらくはそれらの都市を結んでいる鉄道越しに湖面を眺
                      めながら走った。
                       やがて再び森の中を鉄道と並行して進んでいった。
                       道路が木々に囲まれた水辺の畔に出たところで休憩時間がとられた。いかに豪華な紅葉風景の中を走ると
                      はいえ、2時間もたつとリラックスした車内では眠気に襲われる。ちょうど良いタイミングだとばかり、車外へ飛
                      び出していくと、そこはセントローレンス河というより、オンタリオ湖の入り江が沼地のように近づいている場所
                      で、大きな植物園の入り口の隣に建てられたレストランであった。
                       壁に『Big Apple』と画かれている。レストランは昼にならないと開店しないらしく、Apple pieを作る職人がガラス
                      越しの製造工場の中で作業をしていた。観光工場兼レストランといったところだろうか。直売店は開いていて、
                      飲み物と一緒にApple chippsが私たちの仲間に飛ぶように売れている。さっそくそれをほうばりながら、好天の
                      戸外で寛ぐ旅人風景も良いものだった。
                       私は陽の注ぐ建物の壁に身を寄せて、遠い川面に眼をやっていたが、そこに至る目前の大きなアスペンポプ
                      ラの木の下で、仲間内の2人の男性が煙草をくゆらして会話している姿に引かれた。日陰になっておりコートを
                      つけた一人とブレザーの一人のお互いに肩をすくめたようなシルエットが紫の煙の筋を飛ばしていた。
                       開放されきって、異国の地に休日を楽しむ男たちの姿を観たように思った。

                       『Big Apple』のエントランスには茅のデコレーションを背景に大きなかぼちや地元産の果物類野菜などが荷車
                      に山盛りに載せられて、間近に迫った感謝祭を知らせている。ここにもカナダの秋があった。
 


街道沿いのレストラン『BIG APPLE』にて

* 7−2.メープル街道(A)へ
* 『風次郎の世界旅』 トップページへ戻る