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ナイアガラの滝は圧巻であった。
そしてまた、カナダの秋は今絶頂である。
ナイアガラでは公園をバスで散策しヴィクトリア公園、花時計、滝から渓谷にかけての眩い紅葉を楽しんだ。
そしてトロントではユニオン駅に近いオペラ劇場街で街路樹を、オンタリオ州議事堂、トロント大学構内の公
園など街中の紅葉を観て歩いた。
今回のツアーは『カナダの秋“紅葉を思う存分に”楽しむ旅』である。
名高いメープル街道を征く。メープル街道はナイアガラを西基点にケベック・シティーまでセントローレンス川
沿いに800kmつづく。残念ながら今回の旅ではケベック・シティーまでは行かないが、私達の向かうモントリオ
ールまででも500kmある。まだその途についたといったところだ。
バスがユニオン駅の近くで鉄道を渡る大きな陸橋にかかった頃、すでに陽は西側に傾いて前の窓に広がる
カナダ第一の商都を誇るビル群の先端に近かった。
添乗員の寺山さんがマイクを持って右手のスカイドームを案内する。その巨大なハンググライダーが休んで
いるような屋根に続いて、塔の先端を陽に光らせ、天に伸びる剣のようなCNタワーが立っていた。
スカイドームは地元トロント・ブルージェイズのホームグランドであるがブルージェイズの成績は冴えない。そ
れにひきかえ、球場は巨大である。日本では人気の高い松井選手がメジャーリーグで初めての開幕戦を迎え
た場所として有名だ。
カナダ特産の毛皮などの製品を扱う店(James Moto Enterprises)に寄って休憩時間がもうけられた。店内で
は古い大きな熊の毛皮が飾られていたり、鹿の剥製などが目についた。ついでに鉱山業の町とかで金の首飾
りなどを執拗に売り込んでご婦人方の気を引いていた。伝統ある生産の歴史が説明されはじめたが私は街を
歩きたいほうが先行、ビルの外に出た。
この界隈は駅の近くまでカナダきっての劇場街のはずである。それにバスの窓から眼に入った街路樹の紅
葉が美しかった。
駅の方にワンブロック歩くと道は突き当たりになり、左側に劇場街がつづく。すぐ先はプリンセス・オブ・ウェー
ルズ劇場、その隣がロイヤル・アレキサンドラ劇場であった。私は涎を垂らしてガラス窓から出しものの写真を
眺めただけ。今回この街にはちょっと1泊するのみ、諦めざるを得なかった。顔を上げると目前の高いビルのさ
らに上にCNタワーの先端が見える。このランドマークがあれば市内を歩いても方向を誤ることはなかろう。それ
で世界一の高さに建てられたことは報いられる。
裏通りをJames Motoの方へ帰っていく途中、5〜6段の階段をつけた、入り口がお洒落なレストランが目につ
いた。わざわざ床を上げた建築、、装飾を凝らした窓枠には、布製の日除けが綺麗だった。Motoからはなも出
てきたところだったから時間があればコーヒーの一杯も欲しいところだったが、彼女は時計を気にして私に戻る
ことを促した。
レストランの入り口に立ち上がった2本のメープルは風に紅葉の大きな葉を揺らしていた。
バスはきちんと区画された中心街を東へ進み、Le Roiyal Meridien KingEdward
Hotelの角を北に折れて曲が
った。英国のエドワード王朝様式の内装でその雅さを謳い、オープン以来100年、マーク・トウェインやビートル
ズも泊まった老舗高級ホテルであると紹介された。
この町も数々の歴史の波を乗り越えてきている。カナダという国が多く異種の人々が渡り来て築き上げた今
日であろうと思えば、英米戦争以来の禍根を常に念頭に置いて建国の思想に悩まされた国であった。今日の
カナダの人々の思想は比較的穏やかで、自然主義、平和主義であると私は思う。そこへ導いた、時の人何人
かがここを拠点に、或いはこの界隈に居て、活躍したのであろうか。ひとつのホテルにとって100年は長い。
しばらく摩天楼の中を進んだバスはもう一度左へ折れて、芝生の広がる公園を見渡す場所に来た。クイーン
ズ公園、オンタリオ州議事堂が置かれつつ市民の憩いの場となっている由である。
バスを降りて議事堂の正面に立った。石造りのいかめしい風貌をもった古い建物は隣に連なるトロント大学
の校舎と群を分かたず、大きな城を連想させた。貫禄と言うか、地味だが格調の高い味わいが伺える芸術品
だと思った。
真っ直ぐ続くアプローチを皆で歩いた。
アプローチの両側にはここにも大きな楓の木が、紅葉のあでやかな朱を沈みかけた陽に煌かせていた。
私はいま医療に関係する職場に身をおいているが、トロント大学はインシュリンの発見であまりに有名である。
現代病の代表、糖尿病はインシュリン無くしてどうにも立ち向かえない。あの薬がここから来たのかと思うとど
こからか畏怖の念が漂うのを覚えた。構内の外れにMOUNT SINAI HOSPITALの看板があったのが印象的だ
った。この国は医療費が無料である。羨ましい限りだが、診察や治療をうけるのに費やす人々の悩みは大きい。
待つ時間がかかるのである。あちら立てればこちら立たず、豊かな世の中を築くのは難しいことだ。
トロント市庁舎の建物もユニークだった。湾曲した高層ビルが貝殻あわせのように向かい合って立っていた。
囲まれたその中に議事堂が建てられ、市民の為の公園もあると言う。バスはその脇を通って鉄道と高速道路
を潜り抜け、ハーバーフロントエリアのレストランでのディナーに向かった。
薄暮に到着したレストランは、鉄道列車の車両を改造した変わった建物であった。ヴァイキング形式、時節柄
ハロウィンのスペシャルメニュウで、ターキーも並ぶカナダ料理をたらふく食べた。
トロントの宿泊はラマダ・ドンバレー・ホテル。国際的なレセプションにも応ずる大きな建物で、市内を少し離
れてピアソン空港へアクセスする401号と、ハーバーフロントから北へ伸びる404号ハイウェイの交叉が見渡
せる場所にあった。夜の街を探索するエネルギーも衰えていたので繁華街に未練もなく、広々とした窓の外が
眺められてほっとした。
RAMADA TORONTO HOTEL