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ボウ湖では雪に見舞われた
キャッスル山をぐるりと廻ったかのように走っていくバスが大きく左にカーヴしてレイク・ルイーズの街へ入るとすぐに
駐車場に止まった。カナディアンロッキーの宝石とまで言われる氷河湖レイク・ルイーズに着いた。
駐車場から少しばかりの森をぬけると、風の無いどんよりした空の下に透き通った色の湖が広がっていた。そしてそ
の先にはビクトリア山(3459m)から流れ寄る氷河の谷が見えた。氷河を伝わってきた湖の水は空の澄んだブルー
の輝きこそ映して見せなかったが、波も無い静かな漂いに、不思議なエメラルドグリーンを滲ませていることには変わ
りなかった。
岡部さんがビデオへの収録を意識しつつ、「何故この美しい輝きが生まれるのか」を解いてくれた。氷河の削った山
々の表面が微粒化して氷河に混じり、氷河が溶けて湖に流れ込むのだそうである。微粒子による光の屈折が水の色
を変える。氷河は夏に解けて秋に流れる。その美しさがもっとも高まるのは、すべてのものが凍りついてしまう前、つま
り冬を前にした今の季節なのだ、と語った。
エメラルドグリーンの広がる湖は、まさに神秘の色を彼方まで導いていたが、そこに冬を間近にした自然の姿が、美
しければ美しいほどに寂しさを思わせるのはどうしてだろうか。湖畔にそびえていた背の高い美しいホテルの窓が湖を
見渡し、遠く氷河の注ぎ込むあたりを悲しく見つめているように思えたのは、ここ数日聴くカナダ建国の歴史が、美しい
自然に囲まれつつも人々の辛苦を感じさせるものであったからだろうか。
私たちはたくさんの写真を撮って次の目的地へ向かった。
秋の名残か名も知らぬ黄色い花が湖畔に咲いていた。山は少しづつガスに覆われ始めたようだった。
国道1号線は西へ向い、ヨーホー国立公園を経てヴァンクーバーに繋いでいる。私達はボウ川をさらに上ってコロン
ビア大氷原へ向うのである。
1号線と分岐した国道93号線は氷原氷河観光道路(アイスフィールド・パークウェイ)といわれ、4.5t以上の車は入れ
ない道路だという。心配の雪は道路上にも白く見えるほどになってきた。しかし依然として山は良く見えていた。道路
に沿ったヘクター湖の向こうにはフェアビュー山(2744m)が見えた。そして岡部さんの解説が、「この辺の山は山ヤ
ギ連山のふもとです。」と始まったとき、高い崖の中腹を丸い角をつけたヤギが歩いているのを誰かが見つけた。皆
右の窓に寄って雪の崖道を器用に進む数頭のヤギを写真におさめてはしゃいだ。
ボウ湖の駐車場から湖畔に歩く小道ではかなり激しい雪になった。私達はコートの襟を高くして、帽子を被ったりし
ながら背を丸めるようにして湖畔を歩いた。
ボウ湖はボウ川の源流である。ボウピーク(2868m)から続くボウ氷河の水をためて、やはりエメラルドグリーンを
静かに広げていた。空はかなり厚い雲に覆われているのに、湖の水は本当に澄んで見える。岩粉が混じり波長の屈
折を変えている現象なのだそうだが、何ゆえに?と思わせるところが神秘的である。湖畔に寄せる波はほとんど無く、
湖底の石が碧を浮かばせていた。手の届くあたりで拾って眺めると、どの石も縞状に異なる成分が織り込まれたよう
な模様を持っていた。その模様が美しかった。
雪が降っているので外気が冷たかったせいだろうか、水が温かく感じられ拾った石も暖かだった。
湖の畔にみやげ物を売っているロッジがあった。ロッジの窓からじっと湖面を眺めていたが、氷河から先に聳えるボ
ウピーク(2868m)という岩山は雲に覆われ、薄く影を現して浮かんでいるように見えた。
私達は再びバスに戻った。そして近くのドライブイン・レストランで昼食を取った。その間も添乗員の寺山さんとガイド
の2人、そしてバスの運転手があちこちと連絡を取っていたようだ。再びバスに乗ると、ボウ峠を越えて氷河観光の基
地までは入れることになったと伝えられた。何と言っても国立公園は道路の通行についても管理の許可を得なければ
ならないので、運転手は「なんら問題はない」と、快活に雪の道を飛ばしているが、添乗員は気遣いだろう。雪はどん
どん積もっている。そしてアイスフィールド・パークウェイの最高地点ボウ峠2059mを難なく越えた。道路は次第に下
り始め、雪も少し勢いが和らいだようだった。もう一つの小さな峠(サンワプタ峠)を越えるとすぐにアサバスカの雪上車
観光センターに着いた。ここはもうジャスパー国立公園に入っている。
ボウ湖畔にて