風次郎の世界旅
 アフリカ南部の旅
(16)

        
                早朝のケープタウン空港カウンター          

16.帰路(終章)


                       4時起床、5時のスタートに向けて段取りを進めた。
                       ホテルが早朝出発の為に用意してくれたサンドイッチとコーヒー、マフィンを口にしてバスに乗り込
                      む。
                       バスの中からは明けきれぬ薄暗い空に雲も見えたが、青空も見えた。旅行中は、夜になると降ったり
                      降りそうにはなったが結局雨は全くなくて「良かったなー」と思った。
                       萩原さんから万全の点検を促された後、バスはホテルを後にした。
                       まだ眠りから覚め切れないケープタウンの街並みを通り抜け、国際空港には20分ほどで着いた。
                       早朝の空港の比較的静かな中で、ヨハネスブルグ行のBA6428便への搭乗手続きをスムースに終えた。
                       搭乗手続きが終わって、皆で手を振るまで優しくサポートしてくれたガイドのベンさんにも感謝して別れた。

                       7時30分が出発時間であったが、7時25分には既に機は滑走路を確保していた。順調にテイクオ
                      フ。
                       ケープタウンの街がすっかり見えなくなって水平飛行に入ると朝食が出た。オムレツとコーヒーが丁
                      度腹に合って美味しかった。
                       私は鞄を開いて、日記を書いたり集めたパンフレッドなどを整理しながら約2時間のフライトを静か
                      に過ごした。隣に座っているはなが少し咳をしていたので心配だったが、気分は悪くないと言うことな
                      ので一安心した。

                       ヨハネスブルグ、オリバータンポ国際空港には10時には着いた。次の香港行き12時30分までの
                      時間をラウンジで過ごすことになった。
                       この旅では、何回もここの空港を通過して4か国を廻ったのでかなり感じが掴め、慣れた気がしてい
                      た。余裕を持ってゲートに向かう。
                       カウンターのぶっきら棒な対応も覚悟しつつ臨んだが、反してと言うか、丁寧な対応とスムーズなチェ
                      ックインが出来て良かった。 
 
                       空港内を行き交う人々が増え次第に混雑してきた中を、皆、ホッとした表情で歩いてラウンジに向か
                      う。廊下や待合の窓越しに、私は空港の様子を何枚か写真に撮った。
                       ラウンジではコーヒーを飲んだりお菓子を取り寄せながら、すっかり親しくなった仲間とゆっくり談
                      笑して過ごした。男性のTさん、東京・中野に母子で暮らすSさん、北海道からの夫人など、一人参加
                      の方が多く、夫婦参加は私達だけだったのは終わり近くに分かったことだった。最高齢は妹さんにサ
                      ポートしてもらいつつと、謙遜していた86歳の紳士Uさんだった。

                       時間を持て余したので、私はTさんと空港内の店舗を覗きに出た。Tさんは本屋を見ると言っていた
                      ので、私はアフリカらしい彫刻もののある土産店へ入ってみた。やはり石か木だが、石は重くなるので、
                      木の動物の恰好なものを物色したが、結局気に入ったものは見つけられず諦めた。
                       動物の毛皮なども沢山並べたり、弦下げられていた。シマウマの頭から足までの毛皮には日本円換算
                      で17万円ほどの値段がついていた。

                       キャセイ航空の搭乗口は大型機に乗る客で溢れんばかりだった。
                       オリバータンポ発12時30分、CX0748便香港行、B838機は予定通りヨハネスブルグの晴れた空に飛
                      び立った。
                       間もなく昼の食事が出されたので、白ワインをもらい、海老の前菜に始まりしっかりとステーキ、サ
                      ラダとも美味くいただいた。機内食であれ、私にはアフリカの食事よりこの方が合っているように思っ
                      た。
                       アフリカ大陸の東海岸線に沿って暫く北上していく、離れて行く様子を機外カメラが捕えていたので、
                      懐かしい思いで眺めたりした。
                       私は12時間30分の空の旅をたっぷり楽しもうと、モニターのエンターテイメントをもチェックした。
                       来るとき気が付かなかった日本映画「新ゴジラ」が入っていて、話題作だったが私はまだ見ていなか
                      ったので見入った。巧みなCGで社会問題のとらえ方としての評価もあって人気を博していたのだったが、
                      映画としてはいまいちに思えた。
                       音楽はバッハを聴いた。やはりバッハのスローは落ち着いて聴けた。チャネルを変えて中国の新進歌
                      手の歌も聞いてみた。しかし、新しい歌は最近の日本の歌もそうだが私にはなかなかスムースには受け
                      入れられなかった。これはやはりジェネレーションギャップなのだろう。年は争えない。

                                                    ☆  ☆  ☆
 
                       思いがけずジャカランタに魅かれたはなのお供で来たアフリカ南部の旅ではあったが、感激はひとし
                      おであった。
                       フッとジンバブエやボツアナで親しく言葉を交わした黒人達の顔が浮かんでは消えるのだった。                    

                       ――ジンバブエとボツアナの黒人の事――
 
                       ジンバブエのガイド、ブライトンは、明るい表情をして現地語の挨拶を教えつつ、彼は私達のバスに乗
                      り込んできたが、静かになると何処か憂いの漂う表情を見せた。
                       私達への最初の仕事はヴィクトリアフォールズの案内で、私達が滝を覗き込みに夢中になっている後
                      ろの順路の角に立ち、私達を見守っていた。
                       私が近寄って質問すると、躊躇うように丁寧に答えるのだった。
                       見あげる程の背丈で逞しい若い黒人であった。
                       滝を観終わっての帰り道、サバンナ雨林の木陰で、我々を待っていたブライトンは、とても静かに、
                      「落ちた人はいたが、自殺者はまだいない」と言った。私は――、
                      「それはないだろう!」と思って彼の顔を見たが、真顔だったので黙った。

                       ――又、朝早い街の通りで、私に近寄って、私が泊っているホテルの庭を散歩した方がマシだと言っ
                      た男は、半ズボンとぼろぼろのTシャツ姿だった。

                       私達のバスの出発に合わせて、注文したアフリカビックファイブを胸に描いたシャツを届けてくれた
                      男も、観光客に合うため、顔を洗いトッテオキのシャツを着て駆け付けたそうな。
 
                       ボツアナのボートサファリをガイドした軍人のような制服を着ていた青年マイクに、アドレスを貰お
                      うとしたら、インターネットはしないと言う。勿論スマホなど無い。
                       PCを手に入れるのは大変のことらしい。 
                       「東京は知っている」、と言った。オリンピックには「行きたい」、と言った。私は――、
                       「是非来なさい。歓迎するよ。」とは言ったものの、あとで聞くと、この辺りの国で「是非来なさい」
                      と言えば、それは交通費も払って歓迎することのようらしい――。
                       あのマイクは、今日も観光ボートに乗って、客と、像やカバや、水牛やワニを見つけているのだろう。
                      いじらしいような会話だった。

                       夏の陽が照らすサバンナのしみじみとした日々だった。

                                                  ☆  ☆  ☆

                       インド洋上を飛ぶ頃から、知らず寝入っていたが、ガタン、ガタンと激しい揺れに飛び上がらんばか
                      りに目が覚めた。周りを見渡したが誰も気にしている様子がなかったので又布団に潜り込んだ。ビジネ
                      スクラスは体を長く伸ばして横になれるのが有難い。
                       途中でエアコンが暑すぎるようで、体を拭きに起きたが、都合7時間は寝入ったようだ。
                       降りる前に朝食が出たが軽く済ませた。

                       香港には予定通り到着した。朝の7時だった。日本との時差3時間を引いても日付が代わり、11月
                      5日になっていた。私は時計を日本時間に戻した。
                       香港空港はトランジットだけである。アフリカに向かうときは随分待たされたので心配したが、それ
                      なりにスムーズに手続きが済んだので、空港内で過ごせる時間が2時間はある勘定だった。
                       キャセイの香港空港の4つのラウンジのうち来るとき使わなかったところへ行ってみようかとも思っ
                      たが、結局来るときに入ったラウンジに入ることにした。
                       私は又T氏と連れ立って空港内の店舗を幾つか歩いてみたが、結局中国ものにも気に入った目ぼしい
                      ものを見つけられなかった。

                       キャセイの出発待合は大混雑だったが日本人客は私達だけのようで、中国人が多かった。ただ、機内
                      へ入ると、ビジネス席は私達の他は中国人20人ほどで空いていた。
                       11時15分、キャセイ機は旅の最終航路、羽田に向けて飛び立った。
                       香港の空も晴れていた。良い天気の旅で本当に良かった。
                       乗るとすぐに昼食になったが、出発前にラウンジでかなり過ごしていたので、腹は殆ど良かった。パ
                      ンと少しのサラダにコーヒーを戴いて済ませた。

                       午後2時を廻った頃から、機外カメラに日本の海岸線が写ってきた。着陸の30分前頃からずっと見てい
                      たのは久し振りだった。
                       成田には午後3時そこそこに着き、入国手続きを終わり、荷物を受け取って皆と名残を惜しみつつ挨拶を
                      交わした。お世話になった添乗員の萩原さんにも安心して旅の出来たお礼を申し上げて出口に向かった。
                       ロビーに出たら3時30分だった。
                       丁度3時42分の京成スカイライナーに間に合って席に着くと、安堵の思いと窓を流れる風景の懐かしさ
                      に充たされた気分になった。
                       早速に家に待つ愛犬Supikaが気になった。
         
                                                                           ( 完 )
                                                                           風次郎

        
                       ケープタウンで帰路への搭乗を待つ           香港空港キャセイのラウンジ(世界1デラックスと言われる)入口    

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