BGM Music Factory
シェパニーズの入り口 皆で記念撮影
孫娘のミサは9月に17歳の誕生日を迎えた。私の家族はそれぞれの誕生日を月ごとに
集まって皆で食事をして祝うことにしているが、長男家族がアメリカで暮らすようになっ
てからはなかなかその都度合流することは難しい。ミサの誕生日は同じ9月生まれの私の
妻はなと10日違いで、いつも一緒の誕生会としていたので、久しぶりの誕生会をバーク
レーの有名店「シェ・パニーズ」で行うことにしていた。
「シェ・パニーズ」は一カ月前から予約を受け付けるが、ウェブサイトにはアクセスが殺
到するので、コンサートチケット並みに難しい。長男夫人の活躍でテーブルを得た貴重な
機会である。
英国レストラン誌 により何度も世界のトップ100レストランに選ばれているカリフォル
ニア料理の有名店で、大概のガイドブックにも載っている。とりわけ2002年から2008年に
は世界のトップ50レストランに選ばれ、2003年には12位に列されている。
「シェ・パニーズ」の経営者、作家そして活動家であるアリス・ウオーターズ(Alice
Waters)と、映画監督で後にUCバークレー教授となったポール・アラトウ( Paul
Arato
w)。1971年共同で開店された店である。
ウオーターズは新鮮で一番美味しい地元食材を用い、食材の持つ美味しさを生かしたシ
ンプルで伝統的な調理を行うことを提唱、「シェ・パニーズ」は、地元の契約農家、酪農
家、乳製品会社の食材を用いることを誇りとしているといわれる。いわゆる『カリフォル
ニア料理』と呼ばれる料理はここの創作である。
また、2007年にアリス・ウオーターズはレストラン誌から「Lifetime Achievement賞」
を受賞し、過去50年でもっとも米国料理に影響を与えたと讃えられたし、2001年にはグル
メマガジンがアメリカで一番のレストランであると評した実績もある。
一階のレストランと二階のカフェからなるが、レストランは夕食の午後5時30分と8時の
二回のみ。予約した5時30分に合わせて、みんなでバークレーに向かった。
夕陽が対岸のスカイラインに没するころ、バークレーの丘を下って街に入った。
イーストベイの中心バークレーは1960年代後半、全米を巻き込んだ学生運動発祥の
地であるが、カリフォルニア大学本校(UCI) を中心とする“教養と文学”にあふれた街
としてベイエリアで活動する作家や芸術家たちへも文化的に多様な影響を与え、リベラル
な評判が高い。あらゆる市政はバークレーから始まるとも言われ、福祉、環境問題に対す
る意識が高く、全米で最も革新的街といわれる。
おしゃれなショップ、レストランも多く、アカデミックな雰囲気も漂う街のようである。
土曜日の夕刻ということで街は人出で賑わい始めていたが、UCI の近くを通りシティー
ホールの角から北へ向かうと、観光案内所の先の駐車場に車を置くことができた。
「シェ・パニーズ」の建物は1971年にクラフツマンスタイルの古い家屋を、改造してバ
ークレーに開店したのであるが、2013年に火事見まわれ修復した由である。
「CHEZ PANISSE」と曲がった板に描かれたアーチ形の看板が門のように掲げられてあっ
て、間口の広くない店の構えであった。フロントの狭い階段を上って行くと、おばさん風
の店員が、「少しお待ちください」と迎えてくれた。言葉遣いは優しくWelcome の言葉と
笑顔が伴って感じが良かったので安心した。時間が少し早いので外のベンチで待っていて
ほしいとのことだったので、店の前に設けられた待合を兼ねた木陰のベンチで10分ほど
待つうちに店内のテーブルへ案内された。
自慢の、表紙にトマトの実と花のついた木が描枯れたメニューが渡され、ワインをいた
だいて乾杯して誕生日を祝った。みんなで孫娘が抱きかかえられてアメリカへやって来た
ころからの思い出話に花を咲かせつつ食事を楽しむひとときであった。
さすが世界各地からも賞賛される店を感じさせるもてなしは、オモテナシの国日本でも
学ぶところがある見事さだったように思う。
シェフたちの腕を振るっている様子が20人くらいの客席からも見える程の、広くない
店なのだが、男女5人ものアテンドがとても丁寧で気持ちの良い接遇が施され、料理の美
味に加えて店の誇りを見たようであった。
まずアンズタケというキノコと専用農場DeeAnn's gardenで作ったねぎと野菜のサラダ、
そしてホタテ貝をセリとペッパーソースであえたパスタが出された。いずれも地元食材を
生かすといったテーマに徹した心意気を伺うことができるものだった。
メインにはGrilled Magruder Ranch牧場の草を食べて育った牛の肉をオニオンとハーブ
バターで焼き上げて、薄切りにしてチェリートマトを添えて盛ったメインが出された。
さすがにこの美味しさは今まで味わったことのないもので、皆大満足だった。
はなは今年古希を迎えたが、ミサは昨年まで打ち込んできたアイススケートを中断して、
いよいよ大学進学にチャレンジ中である。これからが若さに溢れる人生、これまで通りの
びのびと健康で歩んでほしいと思う。
チョコレートとアイスクリームのデザートで満腹を癒して「CHEZ PANISSE」での誕生会
を終え、外に出ると道路の反対側に長い行列ができている。そちらも有名なピザの店、「
チーズ・ボード・ピザ・・コレクティブ」に並ぶ列で、この辺りはさらに隣のパン屋さん
も人気で、一日中行列が絶えない地域とのことである。
週末の街は、それぞれの寛ぎを楽しもうとする人々でいつまでもにぎわい続けるように
も見えた。
私たちも久しぶりに家族揃っての楽しい思いを胸にしまって、バークレーの灯を遠ざか
りオリンダへの道を走るのだった。
風次郎
バークレーの丘から市街の一望(ベイブリッジの向こうがSF市街)