09ニューヨーク・ボストン 紅葉の頃

                                                  BGM TAM Music Factory

    
シンクロナイズドスケーティング・ティームUSAの練習風景

(4) シンクロナイズドスケーティングとグリニッチ

     もとはというと、今回の渡米はシンクロナイズスケーティングに打ち込んでいる孫娘のミサが、レベル向
    上で、今期地域の大会に出場することになったから見に来ないか、という長男の誘いであった。
     アイススケートは米国ではとても人気のあるスポーツで、ミサも数年前からシンクロナイズスケーティン
    グを始めたのであった。いわゆるフィギアスケートの団体競技であり、20人1チームで演技する。
     アメリカではフィギアスケートも人気スポーツであるが、その裾野も広い。孫娘はグリニッチの町にある
    スカイライナーズというグループに入っている。人気のあるスポーツだがリンクを使うので金がかかるから、
    上流階級のスポーツと言えそうだ。我が家の系統ではちょっと大変だから、長男は気にしている。しかし、
    スカイライナーズは全米代表チームが所属する有力グループで、ついついはまってしまったようだ。この競
    技は2014年(ホチ)からオリンピックの正式種目に取り上げられることになった。これからますます人気が
    出るかもしれない。
     米国には何処へ行ってもアイスアリーナの施設が沢山あるようだ。アリーナはアイスホッケーにも使われ
    るから夕方からの練習にはどうしても競合してしまう。施設は沢山あるとはいえ、地域のあちこちをあたっ
    て確保しなければならない世話役の仕事は大変のようである。
     今回は、孫娘が所属するシンクロナイズドスケーティングのチームが、ボストンで行われるエリア大会に
    出場するので、私達もボストンの初体験を兼ねて応援に行こうというのが表向きの目的であった。

     ボストンへ発つ前の日、シンクロナイズドスケーティングのチーム最終練習が、グリニッチというハリソンか
    ら少し離れた町で行われるということなのでついていった。私はグリニッチという町が見たかった。
     グリニッチと言えばだれでもグリニッチ標準時を思い浮かべるが、そちらはロンドンの天文台のことでここ
    は標準時とは関係ない。ただニューヨークにはマンハッタンの一角にもグリニッチビレッジと呼ばれる芸術家
    の集まる地域があってそちらも有名だし、こちらは開拓期に渡ってきた住民が、特別な思いをこめてグリニ
    ッチと呼称し街づくりをした場所であるらしい。この町はコネチカット州になるがニューヨーク地域の重要な住
    宅地と言われる。1640年代にはオランダが支配していたと歴史書にはある。
     リンクは図書館も兼ね備えた公民館の敷地内にあったので、駐車場からは公民館が良く見えた。
    小高い敷地にレンガ造りで丸窓の明り取りをつけた欧風の上品な建物で、紅葉に美しく色づいた大きな楓
    の木のある芝生の先にあった。残念ながら休館日で中には入れなかった。
     この町は、今はポートチェスターという別の街になっている港から、小高い丘の斜面にかけて市街地が広
    がっている。下町にはショッピングセンターや今どきのファーストフード店が並ぶ歓楽街だが、歩道のある坂
    道に、古くからそこに店舗を構えているのであろう、往時を思わせる店が何軒かあった。それぞれの店はそ
    れぞれの外観に整ったヨーロッパ調を施し、お洒落な落ち着いた雰囲気を漂わせ好感の持てる街並みであ
    る。
     美術品を扱う店、家具を扱う店、台所用品を扱う店、そういう品物揃えの仕方はいわゆる昔気質の職人と
    か、専門セールスのやり方だと思う。まだ日本でも時々見つけることは出来るが少なくなった。
     美術品(絵画)をショウウインドウに飾ってある店に寄ってみると、店主はしきりに別の客の持ってきた額縁
    に手を加えて直していた。雑然とした店内にはまだ絵の具が乾ききってもいないほどの絵画が幾つもあった
    から、近くの画家たちのものかもしれない。
     食器屋には新しくないものも沢山あった。こういったものも、旧い伝統的なものは使われているのだろう。こ
    こにある家具屋は大型の店舗に新品を並べているのではなく、もっぱらアンティークであった。かといってい
    わゆる骨董屋はなく、皆使う為のものを売っているのだとのことである。若い人でも新婚所帯をここに探しに
    来るらしいから、それでウェイディングドレスの店があるのだろうか。
     はなたちが日用品の店で買い物をしている間、坂道の上まで歩いてみた。メインの通りは2筋あって上って
    いく右手はショッピングの通り、左手には白い建物の市役所(町役場)、郵便局があった。そのいずれも大き
    な楓の並木道でふた筋は坂道の上でつながっている。残念ながらここの楓はもう葉を落としていた。
     丘の上にはもうひとつの交差点があり、角に教会があった。四角の尖塔をもつ二階建ての白い壁の教会だ
    った。その壁に室内の照明でステンドグラスが綺麗に浮かび上がっている。教会は100メートルほど先にもも
    うひとつあった。こちらは森の中であったがやはり同じぐらいの高さの尖塔があった。 住宅街はそのあたりか
    らずっと続いているようである。
     最初にこの町を築いた人々はどんな未来図を思い浮かべながらこのあたりに立ったのであろう、今回訪ね
    るボストンもアメリカに最初に足跡を印した人々の町としている。その当時の人々が今の繁栄を描いただろう
    か。
     独立以来まだ300年に満たないこの国に国家建設の思いを描いた人々は、おそらく自分たちの身近な環
    境を一生懸命整えることに専念したのであろう。グリニッチはその跡形を見るような気のする町であった。

                                                        (風次郎)
              

       
 綺麗な坂の町グリニッチの夕暮れ
      

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