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エフェスも、ベルガマ同様、整備が行き届いているとは言えない状態の遺跡ではあったが、「太古ローマ隆盛の頃を偲ぶにはあの
程度荒れたままの方が感じが出るのかも知れない。」などと思いながら、バスの後方を振り返る。
強い西陽が照らしている荒涼たる大地の中をパムッカレへ向かって走っていった。
東西に長いアナトリア半島の東部、エーゲ海側クシャダスの町からほぼ半島の中央に位置するカイセリの町に通ずる内陸の幹線
を走っていく。
この先ではパムッカレの石灰棚やカッパドキアの奇岩といったあまりにも有名な自然の不思議を観るのが楽しみだった。パムッカ
レの石灰棚は、丘の斜面に、台地の上から湧いて流れ出る石灰成分を含んだ湯が長い時を経て結晶し斜面を覆った不思議なもの
であるという。
ところが古代の都市巡りのスケジュールがまだ残されていて、パムッカレにも大きな都市遺跡があったことを私はそこではじめて
知った。
その丘の上に温泉を戴いたいわゆる大浴場(プール)を備えたヒエラポリスという都市が、紀元前190年にベルガモンの王様に
よって建造されていたのだそうだ。
この旅にはいささか準備が不足していたかと思う。その反面驚きは多かった。明日もまた他の驚きが待っているかも知れない、
と思いつつバスに揺れていた。
エフェスから1時間余走って街道沿いのドライブインで休憩をとった。
やや傾いた陽がバスから降りた私たちに容赦なく降り注いで、暑く眩しい午後であった。
コンダクターの細野さんが、ここはオレンジの産地なので、店にはその場で絞って飲ませてくれるジュースがあると案内してくれた
ので早速、それを目指した。喉を潤すジュースは息がつける感じだったし、暑くても空気が乾燥しているので、ここでも風通しのいい
テラスは気持ち良かった。
○
パムッカレ観光はデニズリの町が中心になる。あたりは起伏のある内陸の高原地帯で、多くのホテルは町から離れた所々に、
見え隠れするほどの距離を置いて建っているようだった。
私たちの宿はカラハユットという地域にある「コロッサエ」というリゾートホテルであった。夕方の5時を過ぎた頃到着した。
エントランス棟の奥が広いテラス風のダイニングレストランで、2回の食事はそこでとった。売店やステージのあるプールサイド
を経てプールが見渡せた。この地域は温泉に恵まれているので大抵のホテルにプールが設備されているらしい。私たちの仲間
にも中庭中央の大きなプールや、さらにその脇につくられた露天の温泉に入って寛ぐ人達がいた。
客室は2階建ての幾棟かにわかれてリゾート気分が味わえるように凝らされていた。私とはなの部屋は窓辺から夾竹桃の花
が見渡せる1階の感じの良い部屋だった。
次の日の朝パムッカレの丘に向かった。ホテルのある高台から下って町を過ぎると、左手に白い輝きの石灰棚が大きく見えて
きた。
世界遺産(複合遺産)パムッカレとは、トルコ語で「綿の宮殿」という意味だそうだ。綿とあるのは昔からこのあたりが良質の綿
花の一大生産地であることによるからとのことだが、石灰棚を下から見上げると、いかにも綿を被った台地のようにも見える。
再び坂を上って行った先が、下の街道筋からは見えなかったパムッカレ遺跡「ヒエラポリス」、紀元前2世紀にベルガモン王に
よって建造された都市の遺蹟であった。
やはりここでも2世紀のローマ帝国による統治の頃、大きな改造で設備が増強されたとのことで、円形劇場(5000人収容)、
大浴場といった大型施設があった。ローマが東征に向けて、アナトリア(アシア)を固めた名残であろう。
しかしローマの遺物以外はまだ土の中に眠っているのだろうか。一部の水道路跡らしき石を積み上げた連なりが、彼方の丘か
らこちらに導かれているほか、太古のものらしき風情のものは無かった。
この都市に繁栄をもたらし、市民も親しんだ豊富な量の温泉が、街から南の崖を流れ下るにつれて、石灰棚を造り上げたので
ある。石灰棚の景観は約200mの高さに渡って形成されている。ローマ帝国の時代は温泉保養地として栄えたのだという。
遺跡の壮大さの解説をギョクチェさんから聞いた後、私たちはそれぞれ裸足になって石灰棚の温泉を足湯で体験した。
先に麓から見上げると白い雪の山のように、あるいはそれが段々畑のようなプールをこしらえて続いている。幾つかプールを
巡ったり、川のように流れる場所で足湯に浸ったりした。ヨーロッパの人達らしい家族連れがしっかり水着姿で巡っていたが、
いまは泳げるほどのプールはないようだ。季節の湯量によっては、入場制限もしなければならない時があるほど温泉が枯渇し
てきているらしい。
それはともかく、自然の力による不思議な光景であった。
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ヒエラポリス遺跡(左大浴場・右劇場・手前水路跡) 有名なパムッカレ石灰棚
* 遥かなる大地・トルコ(10)
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