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洞窟ホテル「アルフィナ」。
洞窟と言っても、いったいどんな感じなのだろうと期待と興味を半々で到着したので、夕暮れの駐車場から全容を眺めまわした。
大きな岩山の、前の壁が6層の階段状リゾートマンションのように客室になっているようだ。こちらに見える表側はコンクリート
で造られた窓になっており、それぞれの階にはベランダがあってテーブルと椅子が見えた。まさか今日見てきたオープンミュージ
アムのように、直接洞窟へ入っていくことにはなるまいが、と思っていたのでほっとした。
フロントは駐車場から一段上がったところに、そこは張り出したコンクリートの建物であった。
私たちが割り当てられた部屋はフロントの階の並びであり、直接窓から外の景色を眺めることは出来なかったが、入り口のドア
の向こうは芝生の広がった庭園になっていて、樅の木の向こうにウルギュップの街が、その向こうに小高い丘の風景が広がって
いた。
コンダクターの細野さんが、風呂や洗面の水の出が悪かったり、ドアの建て付けが悪かったりすることがあるからと気を使って
くれたが、そんなことも無く、すこし狭いにもかかわらず、部屋に入った気分は、しんと静まり返ってとても落ち着ける感じだった。
すぐに夕食を戴いたが、レストランはフロントから奥まった洞窟の中にあり、四人掛けのテーブルが15台も置かれた広い部屋
になっていた。床には板を張り、何本かのイスラム調で彫刻を施した柱が歴史観のある雰囲気をかもし出していた。
ここでもケバブであった。しかし同じケバブでもそれぞれの地、店で盛られる調理は異なっているので楽しめということである。
洞窟内の雰囲気は日中の暑さを忘れさせるほどひんやりしていたせいか、私には暖かいスープが美味しかった。
洞窟ホテル「アルフィナ」の一夜の居心地は快適であった。
翌朝、いつもは朝の遅いはなと、ここでこそ、とトルコの日の出を鑑賞した。
ちょうど部屋の前の庭園は東向きだったので正におあつらえ向きだった。
この旅はとても天候に恵まれたが、その日もまた晴れた朝になった。彼方の丘からジワッと太陽が現れ、カッパドキアのパノラマ
大地がゴールドをまぶして輝くように明るみにさらされてきた。喧騒を免れ震撼とした、時代を遡る大自然の風景を眺めているよう
だった。
二人で庭園の脇から陽に照らされる上階への階段を歩き、それぞれの階に設けられたデッキ家で椅子に腰をおろして日の昇っ
てくる様子を眺めた。
カッパドキアの朝は、この広大な奇岩の谷を気球に乗って眺めることが出来るので有名なのだが、私たちの到着する3日前に
殆んど稀と言われる事故が起きたため、国の指令があってスケジュールからは削られた。大いに楽しみにしていた仲間が多かっ
たのに残念なことだったのだが、そのテラスからは2機の気球がギョレメの方から上がっているのが見えた。テストでもしていたの
かもしれない。
最上階へ着く頃は既に朝陽は丘から離れ、照らされるものすべてが長い濃い影を作っていた。
私は一人になってウルギュップの街へ出てみた。陽は登っても7時前の街は誰も活動していない静かな町だった。
町とはいっても小さな十字路の周辺に100軒程度の建物が集まっているほかはホテルが多い集落に過ぎない。それでもモスク
はいくつもあり、学校、郵便局、市役所などが見えた。博物館や病院もあって、ギョレメなどと並んで地方の中心地であるらしい。
建物は皆低層で、民家は木造を骨格とした造りである。コンクリートを並べたような町でないのが素朴な印象を受けた。
○
8時30分にホテルを出発した。晴天続きでメンバーの心も明るい。バスの中も心が弾んでいる雰囲気に満ちる。
ネブシェヒルの空港から昼の便でイスタンブールへ戻るのだが、それまでの時間を使ってカッパドキアの印象をさらに詰めるよう
に巡る。眩しい太陽に照らされて奇岩の自然風景は延々広々と続き、はまってどれをみても驚かなくなってしまうくらいだ。
にょっきりとした奇岩の並ぶ風景は物語を想像したくなるような、一見牧歌的でもある。時には妖精の煙突とも呼ばれているとの
ことである。
「らくだ岩」と言われるこぶの二つがらくだに見える岩のところで写真を撮ったり、これもきのこが生えているような岩の林立する
「きのこ岩」とと言うところで散策したりした。
天幕を張って屋台を並べたようなみやげ物店ももう店を開けていて、さかんに売り込みの誘いをしていた。ツアーにはトルコ石の
加工販売店見学が組み込まれていた。
はなは大変興味を持っていたようなので、わたしもつられてうろうろと品定めに付き合ったが、それがそんなに高価で品性のある
ものと評することも出来ないまま、店を出た。
外の太陽の眩しさの方が、トルコにとって大きな財産であり、その光を浴びている時間が貴重だと、息巻いてみたい気持ちになる
ばかりだった。
ネブシェビルの空港はコンパクトでゲートも一つしかなく、国際色豊かに観光客でごった返していた。いつもそうなのだが、どういう
わけか私の旅行シューズはセキュリティー検査にパスせず参った。相変わらずバンドも靴も脱がされるパターンを繰り返したのだが、
予定通りT K259便の搭乗客となり、機は定刻正午にテイクオフした。
窓から見下ろすカッパドキアの大地に魔法の粉を蒔いてこしらえたような不思議な世界が離れていくのが見えた。
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らくだ岩とみやげ物店 そしてきのこ岩
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