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風次郎の『八ヶ岳山麓通信』 No261
     
   富士見からの八ヶ岳(2017・05)

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                     初夏の山々

                                5月連休は例年通り八ヶ岳山麓の南天寮でゆっくり過ごした。
                                私の子供たちも皆独立してそれぞれの家庭を託っており、殊に孫たちの学校活動に
                               合わせることが優先されるので、今は家族と言っても妻はなと愛犬ピカだけである。
 
                                4月後半の不順だった天候が回復して、ゴールデンウィークを待っていたかのよう
                               に良い天気が続いた。スッキリと広がった青空の下に山々の残雪を輝かせた峰の連な
                               りが美しかった。

                                甲府盆地を抜けて行く中央道の境川パーキングエリアにはドッグランがあるので、
                               朝食をしながら休憩した。自然界は急激に初夏に移行し、木々の新緑はあっという間
                               に進んでいる。ドッグランの地表はほぼ雑草ではあるが、一面の広がりだけでなく、
                               草丈も伸びている。ドライバーと共にやって来た外のワンちゃんたちに混じって我が
                               愛犬Picaも大いに駆け巡り一時を愉しんだようだ。 

                                [南アルプス]
                                笹子トンネルを越えてから甲府盆地に掛かる勝沼、釈迦堂SA辺りからは南、赤石
                               岳から、正面の北岳(3192m)が雪を纏った雄姿を輝かせていた。
                                古くから、北岳、南へ間ノ岳、農鳥岳一帯は、「白い雪をかむった山」という意味
                               で白峰山と呼ばれ、今でも白根三山と呼ばれている。
                                北岳は日本で富士山に次いで高い山(3192m )である。又、火山でない山としては
                               日本で最も高い。本来白峰山であるが、この連山の最北にある故北岳の名称が通って
                               いるのだ。
                                古くは『平家物語』に、「手越を過ぎて行きければ、北に遠ざかりて、雪白き山あ
                               り。問へば甲斐の白根と云ふ」と出ているが、果たして東海道の手越浦から見えたのか
                               どうかは判らない。時代は下がり、『甲斐国志』(文化11年―1814年編)によれば「白峰、
                               此山本州第一ノ高山ニシテ西方ノ鎮タリ。国風ニ詠スル所ノ、甲斐ヶ根コレニシテ(
                               中略)南北ニ連ナリテ三峰アリ。其北方最モ高キモノヲ指シテ、今専ラ白峰ト稱ス」
                               と記されいるという。

                                [甲斐駒ケ岳]
                               甲府盆地を過ぎるといよいよ八ヶ岳と南アルプス連峰を眺めながらの快適なドライ
                               ブとなる。
                                富士川の源流である釜無川は両山脈によって狭められて渓谷を成す。双葉SA辺り
                               では、すでに南アルプスの主峰北岳は、その手前の鳳凰三山(地蔵岳、観音岳、薬師
                               岳)に阻まれて姿を隠すが、代って甲斐駒ケ岳が間近に男性的な姿を現わしてくる。
                                朝陽に照らされ、北沢峠から頂上に向かって伸びる稜線に沿って残る雪が、へばり
                               つくように白く、ゴツゴツと荒々しい北壁にかけてまだ冬のままの厳しさを伝えてい
                               るようだった。春雪を残す駒ケ岳はとても大きく見える。
                                甲斐駒ヶ岳は、南アルプス国立公園内の赤石山脈(南アルプス)北端の山梨県北杜
                               市と長野県伊那市にまたがる標高2,967mの山である。峻険な山容、独立峰のような姿
                               勢で屹立する日本アルプス屈指の名峰で、日本百景にも選定されている。
                                「駒ヶ岳」の名を冠する独立した山は全国に18もあると言う。が、その中ではこの
                               甲斐駒ヶ岳が最高峰とのこと、となりの木曽駒ヶ岳が2,956mでこれに続く。長野県側
                               (特に甲斐駒ヶ岳と木曽駒ヶ岳に挟まれる伊那谷周辺)では、甲斐駒ヶ岳を東駒ヶ岳、
                               木曽駒ヶ岳を西駒ヶ岳とも呼んでいる。
                                南アルプスの山々は、高い標高と大きな山容を持ってはいるが、全般になだらかな
                               稜線を連ねており、鋭角的な姿をした山は多くない。それに仙丈ヶ岳など他の多くの
                               山は、前山に阻まれて人里からは間近に見えないことも多い。だが、甲斐駒ケ岳は、
                               山梨県側の山麓から一気に2,500mほどの標高差をもって立ち上がっており、麓の里町
                               からも中央線の列車や高速道路からもその全貌が望まれるのである。
                                さらに、水成岩の山が多い南アルプスの中で、この山は例外的に火成岩である花崗
                               岩から成るため、山肌が夏でも白く見えて、駒ヶ岳の個性を際立たせている。このた
                               め、甲斐駒ヶ岳は古くから多くの人々に名山として称えられ、詩歌に歌われてきた。
                                作家の宇野浩二はこの山を「山の団十郎」と評し、江戸時代の僧侶海量は、「甲峡
                               に連綿として丘壑(きゅうがく)重なる雲間に独り秀づ鉄驪(てつり)の峰」とその
                               姿を漢詩に歌っている。

                                [八ヶ岳]
                                左手の南アルプスから眼を右に転ずれば、南斜面から見上げるのは初夏の八ヶ岳で
                               あった。中央道は両者の中間を流れる富士川上流、釜無川の東岸を八ヶ岳の西麓に沿
                               っ走っているので八ヶ岳も間近である。長坂あたりまではそのなだらかに伸びた南麓
                               を覆う新緑が所々点在する集落を包み込むように、穏やかに拡がっているのだった。
                               麓の風景こそ初夏であった。
                                どうしても山を眺めれば眼先は峰に向かうが、南麓の八つは峰に雪を戴いてるとは
                               言うものの、対面している甲斐駒があまりに厳めしい北壁を見ることになる為か、こ
                               ちらは些か優しい雰囲気を感ずるのである。勿論、真南からの陽を山肌いちめんに浴
                               びているせいでもあろうが。

                                私達は10時前に富士見の南天寮に到着した。あらためて西側からの八ヶ岳を眺め
                               るとそれはそれ、丸く、優しい稜線が描く編笠、西岳はかなり雪解けが進んで、その
                               中間に尖った姿の権現岳が小さく白く光っていた。
                                デンとあたかもこちら西が正面ぞと構える阿弥陀岳は岩肌にまだ沢山の雪を残して
                               いる様がありありだし、北側の稜線が微かに見えるだけの赤岳にしても同じだ。
                                滞在中富士山は未だ真っ白な姿でずっと見えていた。
                                山稜の初夏は今年は未だのようである。
 
                                しかし、南天寮の少しばかりの畑に勤しむには、格好の日和続きで良かった。葱を
                               植えたり、モロコシやカボチャの種を蒔いて時を過ごし、町営の温泉に浸かって身を
                               寛いだりした。
                                連休を終える頃、桜が見頃を納めていた。今年は里に新緑が急激にやって来て、山
                               の雪解けを追い越してしまったようだな――、と思った。

                                                                            風次郎

 
南アルプス白根三山(北岳・間の岳・農鳥岳)と甲斐駒ケ岳(2017・05)

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