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風次郎の『八ヶ岳山麓通信』 No260
八つ厳冬(2017・02)
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冬景色
節分を終え、私の75歳の誕生日と重なる立春の宴を娘の家族と過ごした翌早朝の
列車に乗って、中央線を下る。
高尾から先の相模川沿の山間をうねって、甲斐大和から勝沼に笹子トンネルを抜け
ると、丁度朝の陽に照らされて白く輝く、昨夜の雪でカバーされた南アルプス連峰の
麓に甲府盆地の街が円く広がっているのだ。
列車はトンネルを出たこの場所から、眼下の盆地の縁を巻いて、塩山、山梨市、石
和と山の斜面を下る。甲府市内を通ってから、次は南アルプスと八ヶ岳の間の谷に沿
って登って行くのである。
窓辺に移りゆく冷え込んだ里の風景に眼をやりながら、これは幾度となく見慣れた
風景だと思いつつも、楽しめる今日の好天を歓ぶ。
富士見は当に厳冬であった。
新年になって、一月一か月の間訪れることなく間が開いた。八ヶ岳の山麓は月半ば
に街の雪掻きが行われる程雪が積もったようだが、それもすぐに溶けてしまったよう
だ。まだ北向きの陽の当たらない部分に凍ったアイスバンの残りがあったが、乾いた
路面が多かった。しかし、周囲の家の屋根や、軒はずれの空地や畑は、薄く白い雪に
覆われて冬の世界ではあった。
ツーンと引き締まった空気を少々の風とともに顔に受けて富士見駅を出、5〜6分
を歩き、南天寮に着くと、雪掻きの行われなかった足跡もない雪面の先の玄関を開け
る。
寮の廊下から見わたすと、葉が枯れ落ち殺風景になったサツキのむこうの芝生や畑
は、やはり白い雪原であり、白樺林は白い幹の先にボウボウとした葉の無い黒い枝を
風に揺らしているばかりだ。
それでも寒さに耐えて咲こうとする庭先の寒椿は、開花を控えている風情で蕾を膨
らませている。咲くのは枯れ芝の霜の中に顔を出すクロッカスと同じ頃だろう。
冬場1か月の間に強風があったのか、ベランダに置いたものが位置を変えていたり、
物干ざおが落ちたりしているのを一通り整えると、私は外に出て尾根道を歩きたくな
った。狙いは八ヶ岳と富士である。
寒いが、この空気は西と北から来る大陸の寒気を山が遮って列島日本海側に雪を降
らせ、上空の澄んだ気ばかりの青空からもたらされるものだ。
山の姿は鮮明で美しい。
大抵この時期の寒風は夜に散雪を降らし高山は冠雪するのである。
上空の真っ青な空にひきかえ、八ヶ岳は主峰赤岳、阿弥陀岳が厚い雲に隠れ南寄り
の西岳、編笠、権現が真新しい雪峰を南にのぼった陽に輝いているのであった。
金峰山、茅ヶ岳を跨いで富士も端正に白い姿を青の中に浮かべている。
今、この辺りは葉先を失ったカラマツを中心とした落葉樹のグレーな山並みの中に
松の緑が麓を形作って続くばかり、春を耐えて待つに相応しい如くに無彩色的に静か
な風景である。
シーズンもいよいよ春に近づこうと、自然の営みは活動を求めて歩み始めるであろ
う。
自然界の躍動期は夏のほんの一時にすぎないように思う。しかし、そのために耐え
て時を惜しむ時があるとすれば、それは今だなーと思いつつのそぞろ歩きであった。
風は冷たく、襟元を寄せる波のように吹き抜けて行く。
冬入りの暮れには暖かいと思った気候は、必ず今年も寒くなった。
だから間もなく暖かさは今年もやって来る。
それこそ必ずに――。
自然は静かに動いている。そして、その繰り返しは変わらない。
風次郎
富士見からの冬富士(2017・02)
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