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風次郎の『八ヶ岳山麓通信』 No241
 
富士見駅(2015.1.19)

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                     風花(かざはな)                  

 
                               寂しさの極みに耐えて 天地に与する命よ つくづくと思う   伊藤左千夫
                               湖の氷は融けて 尚寒し 三日月の影波に映ろふ       島木赤彦
                               高原に足を留めてまもらむか 飛騨のさかいの雲ひそむ山  斉藤茂吉                           
                               富士見駅のホームには、駅から3km程の処にある「富士見公園」のアララギの歌
                              人たちの詠んだ歌碑から採った拓本が掲げられている。
                               改札口のすぐ傍にあるので、列車に乗り降りする際、人々は何気なく目にして馴染
                              んでいるように思う。
                               私の通った富士見小学校はその公園のすぐ近くにあったから、先生が時々野外学習
                              にとそこへ連れ出してくれた。(茂吉の歌碑は当時は無かった)
                               入学の記念写真もそこの芝生の広がりで撮ったものであり、とても懐かしい。

                                                           ○

                               正月が明けて、2週間になる。この頃としては寒い冬を感じながら、静かな雪の中
                              の街を久し振りに歩いた。
                               新年の富士見の街は、雪に埋もれて、唯でさえ人影が少ないのに寂しさの漂う午後
                              であった。
                               今年も雪は多そうである。
                               南天寮の様子を見届けたり、冬の高原地帯を眺めたりして過ごし、駅で帰りの列車
                              を待つ。

                                                           ○

                               午後の陽は明るい。
                               駅も雪に埋もれて静まり返っているように見えた。 
                               静まり返っていても、街は陽が当たると、眩しく輝く。
                               雪の量が多いだけ白く光る。
                               只、山は雲に覆われて暗く、ベールの向こうにあるように明るさを失い、遠い。

                               一杯の駅そばが旨かった。
                               食通ではないが、信州育ちであるからそばの良し悪しぐらいは判る。
                               昼過ぎの、およそ1時間に一本の列車を待って、駅の待合室には10人ばかりの人が
                              ローカル列車を待っているのだが、ホームにしばし佇み、時を送るのも悪くは無い。
                               私はその時を上り線のホームのベンチで、陽を浴びながら過ごすことにした。

                               この季節、風花(かざはな)は当たり前のように舞う。

                               恐らく日本海側の地方では雪が降っているのだろうが、その冷たい空気が県境の高
                              い山々で遮られて滞り、山を越えたこちら側では晴れ上がっているのである。
                               そんな日は、空気は乾燥しているが、時々西から押し出されたひと塊の雲が現れ、
                              晴れたまま雪をもたらす。雪は風に乗って降りてくるのだろう。

                               強風が吹けば流れるように、時には花嵐にも似て、
                               風が止まれば花が散るように、
                               微風であれば舞い踊るように、
                               雪が落ちてくる。

                               風花が舞っている。

                               私は皮の手袋をはめたままの手を差し出して、
                               その落ちてくる小さな花を受け止めようとするのであるが、
                               スウーッと降りてきた花は、巧みに差し出した手を遠巻きにして去り、
                              付着しようとはしない。

                               まして、
                               陽の射している地表や、コンクリートの上に至るまでには、その形を失ってしまうの
                              だ。
                               風花は、キラリキラリと、
                               小さな飛行物体が身をかわしつつ天から舞い降り続け、愉しんでいるように――、 
                               私もまた、
                               一時の光景を、愉しんでいるのである。

                               時を過ごす―――。
                               はかない、移り変わりの刹那を、
                               しみじみと感じながら、

                               今年も過ごそうと思う。
                                                                              
                                                                      風次郎                                


富士見駅U(2015.1.19)  

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