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風次郎の『八ヶ岳山麓通信』 No207
富士見駅からの八ヶ岳(2011・03・05)
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2011年03月13日
八ヶ岳を眺める
風次郎
fuujiro3@jcom.home.ne.jp
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雪を被った八ヶ岳を見たい見たいと思っていたのだが、正月以来肩を怪我し
てしまったので、外出を控えざるを得ないまま富士見行きも間が空いてしまっ
た。
そろそろ動けるようになったので、と天気の良い日を狙っていると、こんど
は2月の終わりから天候不順になって、雨や雪の混じる荒れた日が多くなって
きた。
そうは言っても3月に入れば暖かくもなろうし、春らしい日があろうと待ち
構えていたが「桃の節句」3月3日も朝は今冬最低気温を示すといった風で何
とも春らしい気候はやってこない。
結局待ちきれない、といったところで「週末は天気も春らしく‐‐‐」とい
う予報に促され、思い切って5日(土)に出かけることにした。晴さえすれば八ヶ
岳の冬姿がまだ期待できる、と。
その5日。思い通り快晴の朝になった。
笹子トンネルを抜けた勝沼駅辺りから眺める甲府盆地の彼方、南アルプス
は澄んだ大気を抜けていく朝陽の光に、白く横線に棚引く峰を照らされていた。
山々の本体は、裾が盆地に広がる霞の淡い流れとともにツートーンの影絵よう
で雄大なパノラマである。
何といっても青空が嬉しい。そして山を見るのは清々しい。
そして、甲府駅を列車が出たのは9時近くになっていた。駅を離れる列車の窓
にまで朝陽が入ってきて、思わず目を細めるくらいの明るさである。
晴れていれば、乗客は誰と無く列車の進行右側の窓に視線を靡かせていく。
そこにはやや遠い八ヶ岳がすっきりと青空に浮かび上がっていることを知ってい
るからだろう。そこから富士見まで、駅を過ぎるごとに姿を変えていく八ヶ岳を見
ていくことが出来ることを喜んでいるのは、私だけでは無いように思った。
幸いなるかな、、昨日までの寒さは山には雪をもたらしたのであろう。
すっかり新たな雪を戴いた峰は、稜線を明瞭にして朝陽に照らし出されて輝いて
いる。静かな朝の姿だ。
韮崎までの八ヶ岳は南面の遠望である。
丁度角度が権現から赤岳へ渡るキレッドの谷を通して、阿弥陀岳、中岳が姿
を見せ、文字通り八つの峰を現す。
全体の姿は小さいが八ヶ岳全容そのものを眺められるのはここしかないから、
私は常にここでは右側車窓から眼を離さない。
新たに雪を被ったその朝の「八つ」に満足の眼を向けて、しばし楽しむことが出来
た。
列車は山梨の里野を釜無川に沿って進む。反対側の車窓で南アルプス駒ケ岳
近辺の豪壮な山々も眺めつつ進が、新府からは、穴山、日野春、長坂にかけて
林の中を蛇行線を辿るようにしながら、ぐっと八ヶ岳の南麓へ近づいて行く。
近景は雑木林とダブる民家と田畑が続くので、陽の当たる風景はとても穏や
かで長閑である。
その緩慢な斜面を、八ヶ岳の峰へ向けて眼でたどると、直上の峰権現の荒々しい
峰に至る。それから主峰群との間を隔てる谷の向こうの大きくゴツゴツした阿弥
陀岳の塊と竜頭峰の鋭い岩頭をかかえた赤岳の見事な姿を眺めることが出来る
のは日野春を過ぎたあたりからである。
信州に入って最初の駅「信濃境」から「富士見」までは3つのトンネルがあ
る。だから朝の「八つ」を望むとすれば、その間隙を捕まえなければならない。
2つ目と3つ目のトンネルの間で西岳の向こうから流れてくる立場川の鉄橋を
渡るときに西岳から権現岳そして編笠岳を見上げることが出来るのである。
その権現岳頂上付近西のカールが圧巻である。
その眺めを確かめてから荷物をまとめ、次のトンネルを出るときに列車が鳴
らす笛の音で席を立つのが私の常なのである。
富士見駅に降り立ったのは9時半を廻ったばかりだった。寒さはまだ致し方
ないとして、雪が北側の日陰に少し残っているだけのこと、風の無い晴天下の
里は光が溢れ「早春」を感じさせるに十分であった。
南天寮の畑には解けきれないまま何回も積み重なった霜柱が30センチにも
盛り上がっていたが、それも上天気に所々崩れてでこぼこになり、口が開いた
ような地中に幾重もの霜柱の残骸がバラケているのが見えた。同じように霜で
持ち上がった芝生のあちこちも根のあたりが糸くずを散らかしたように明け透
けになって、それでも最早平らかさを取り戻そうとしている風だった。
富士見からの八ヶ岳はもはや西麓からの眺めと言わねばなるまい。
目前に西岳の大きな山体が広がっているので、それが主峰赤岳の前に立ちは
だかった恰好で少し迫力に欠けるとは思うが、その分阿弥陀岳の堂々と壮大な
姿は西岳のスマートさとの好対照に映える。
西麓からの眺めが照らされるのは当然ながら午後であるが、南から上る太陽
に先ず峰が光り、次第に山腹の山襞を現わにしながら始まる冬の日の出は捨て
がたいページェントであると思う。
午後になってから、私は開いている店がほんの数件しかない、それでも商店
街、の方へ歩いていくことにした。
南天寮の東側から続く尾根道がそこへ通じており、八ヶ岳を眺めながら歩くに
は丁度いいのである。まだ2時を廻ったばかりというのに陽は西に傾くのがこ
の季節だった。
何処までも続く晴天。その日は終日全く雲の現われない日だった。山の斜
面にストレートに浴びせ掛ける陽を受けた八ヶ岳は、朝方より一段と明るく描
き出されたように青空の前に広がっているのだった。
その峰の雪はそれが昨晩降った新雪であることを主張するかのように、純白
に稜線を描き、峰を固めて、徐々に山腹に下りて樹林帯で塗された山肌と化し
ている。
商店街を抜けると、道は西岳の麓に向かって行く地域の幹線道路である。やや
斜面を急にして真っ直ぐに立沢と言う部落まで続いている。子供の頃はその部落
から登山道をたどって八ヶ岳へ登ったのであった。
今は、此処から山へ行くのは、ごく限られた地元の人ばかりになってしまった。
あの道は、今頃雪に埋もれて人も寄せ付けぬまま落葉松林の中に残っているの
だろうか。
などと想い出を繰りながら、私は夕暮れまでその澄んだ八ヶ岳山麓の空気の中
を彷徨っていたいと思いつつ歩いていた。
(風次郎)
日野春からの八ヶ岳 落日野春からの甲斐駒ケ岳
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