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風次郎の『八ヶ岳山麓通信』&『東京センス』
No162
富士見駅薄暮
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2006年7月1日
いくつかの列車の旅を思い出す (富士見駅のプラットホームにて)
風次郎
fuujiro@jcom.home.ne.jp
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この駅で何回列車に乗り降りしただろうか。
列車に乗っての旅立ち。元来風来坊のごとく出掛けることの好きだった私は、このホームに
立つと、少なくともこれから始まるだろうドラマの行方に胸をときめかせたものだ。
ここで育った18歳までの少年時代15年間、また晩年会社を定年で切り上げてからの4年間も
この町で生活したが、出掛けるのはこのホームこからであった。
降りたときのことはあまり覚えていないが「列車に乗ったときのことは案外良く覚えている
ものだなあ」と、思い出に浸る。
富士見駅は駅舎から改札を経てホームに出たらそこは下り線、上り線ホームは弧線橋を越え
るだけで、また旅の感覚が違ったように思う。弧線橋ができる前はホームを降りたところに作
られた通路を越えていったのだった。
駅は標高950m、上りも下りも駅に向かって勾配を登ってくる。
特に上り列車はかなり急勾配を登ってくるのである。
よく使う夕暮れの「あずさ」は、まず運転席の窓がキラリと光り、姿を現したかと
思うとグンと背伸びするように正面が近づいてくるのだ。
昔はD51の黒い車体だった。急坂の手前で汽笛を鳴らし、蒸気を吐き、黒い煙をいっぱい
上げて一生懸命登ってくる機関車をホームで待った時代は懐かしい。
上りホームと下りホームでも印象はかなり違う。それぞれに思い出が異なるからだ。
そしてそれがそれが旅の印象を振り分けているように、旅の機会ごとに感じたりする。
下りホームに立つのは、主に通学通勤の朝が多かった。列車で通った学校も、通勤も上諏訪
だった。
下り方向へ旅らしく出掛けるとすれば長野や松本、それに名古屋方面。岡谷や上諏訪は、こ
の地域の中心都市的な存在であったから遊びに行くことも多かったが、旅という気にはなれな
かった。
長野へ向かうのは医師会の事務局にいた頃の出張がほとんどだった。
下り列車に乗っての旅で最も懐かしい思い出は、小学校の6年生の時、その頃名古屋の鉄道
看護婦養成所に姉がいて、そこを訪ねて行った時のこと。個人では初めての長旅で、やはり同
じこの町からその養成所に入っていた亀谷さんと言う方の親娘に、一緒に連れて行ってもらっ
たのだった。
中央西線の窓を開けっ放しで、山ばかりの木曾の谷をひたすら眺め続けていた。トンネルを
頻繁に出入りするので、蒸気機関車の排煙に混じった石炭の殻が頬に当たって痛かった。
名古屋では姉に当時は珍しかった東山動物園の象を見せてもらった。が、私は名古屋駅の大
きさとコンコースの柱の太さに驚いたことが印象深い。
中学3年生の修学旅行で関西に向かったのも下りホームだった。ホームに溢れるほどの仲間
とこの駅のホームに胸膨らませて集合した情景がよみがえる。駅前広場に整列して、一列ごと
にホームに入った。駅には旅立ちの憧れがあった。
小学校の修学旅行は清水港で、甲府から身延線で行ったから、上りホームで列車を待った。
待っている時のことは、ついていった写真屋さんが撮った写真が記念アルバムの最初に貼り付
けてあり、だから鮮明に思い出す。
東京へ向かう機会はいろいろとあった。そのために上りホームに立つことは、どうしても数
が多かった。 今日もそんなことを思いつつ上りの「あずさ」を待っている。
それぞれの旅を前に列車の乗ったときの思い出が懐かしく思い出される。
なぜか私はそのとき寂しかったり、悲しかったりした思いの中で列車を待った時のことを思
い出すことが多い。けっして上り列車だからというのではないのだが。
列車に乗って出掛ける旅の中には貴重な人生の節目になっているものもある。
中学生の頃、診察を受けるだけの積りで上京した父が、いきなり板橋の病院に入院してしま
って、母と共に入院用品を携えて夜行列車を待ったときの寂しかったこと。
また、東京で一人暮らしを始めてから、夏休みや冬休みを父母と過ごして、
再び富士見を立つときも寂しかった。
このホームに立って、新宿行きの列車を待っているときは、夏の風はあまりに涼しく、いか
にも優しかったし、反対に冬の風はより頬に冷たく感じたものである。
今、ここは懐かしい私の古里の町である。
数週間前に種を蒔いた畑の第1回目の手入れを終え、松の芽を摘んだり、白樺林の下草を刈
り芝生の手入れなど終えた。
そして、今日も富士見を離れ、居所の国立へ向かう。ホッとした勤労の満足感を味わいつつ、
ホームの椅子にもたれる。
6月の梅雨の最中の晴れた1日だった。やはり夕風はとても気持ちよく感ずる。
久し振りに天気が良かったのだが、乾いた空気ではないらしい。八ヶ岳は薄い雲に覆われて
いる。
また新しい旅を始めるような気持で列車の乗ろう。
上り列車では大抵進行方向に向かって左の車窓を眺めて過ごす。先ず八ヶ岳が見え、続いて
長坂、日の春あたりから富士山が良く見えるからだ。
しかし、八ヶ岳も薄曇るようだと富士も見えにくいが、今日はどうだろうか。
(風次郎)
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