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風次郎の『八ヶ岳山麓通信』No107
雪の雑木林
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2005年2月19日
雪景色
風次郎
fuujiro@jcom.home.ne.jp
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上雪が来た。40センチも積もりそうだという予報にびくびくしながら16日
朝を迎え、強い風に乗って雪の舞い散る辺りを眺めたときは、1日中雪掻き
になるのではと恐れをなした。が、上雪だった。
雪の粒はしだいに細かくなり、やがて雨を含んで霙となった。積もるには
積もったが10センチには満たなかった。気温もそれほど下がることなく室内
で氷点下ともならず割合暖かな日だった。
春が来るのだな――と思う。
雪一面になった八ヶ岳山麓はこのように湿って重い雪降りを何回かいた
だいて、春に近づいていく。
再び長野市へいかねばならないことが出来て、今回は列車の旅、それも
長野へ直行するという鈍行を楽しもうと乗ったのである。
列車を使うにしても、距離がちょっと遠くなると特急という停車駅の少ない極
めて効率的な旅をする癖がついてしまったせいか、最近は篠ノ井線の懐か
しい各駅の風情を楽しむ機会は失せていた。
松本から特急だと一気にトンネルで駆け抜けてしまう。
鈍行に私が期待したのは、明科から聖高原にかけて山間を走る冬枯れの
山間でもあった。そのあたりの雪景色を胸に描きつつ、空席の目立つ昼のロ
ーカル線の旅を静かに楽しんで行った。もちろんその山路の先にも楽しみが
あった。
各駅に止まる列車で走る篠ノ井線は、いくつものトンネルとトンネルの間に
ある駅を訪ねていくようなものだ。冠着トンネルを抜けると、そのまるで掘割
の中をうねるように進む列車の右窓がぱっと開けて峠を越えたと知らされる。
と、列車は山の斜面のなかばにある「姨捨」の駅に入って行くのである。
「入っていく」まさにその通り。「姥捨」の駅はもはや昔語りになりつつある
スイッチバックの駅なのである。だから、本線から引き込まれたように敷設
されたホームへの路線を入り込む。
さー!そこから眺める善光寺平に向けての雪景色が期待に反しない好いも
のであった。小さな駅舎は幅の狭いプラットホームの端にあり、その向こうの一
段低くなったところを本線が走っている。プラットホームから彼方の千曲川原
にかけてはかなり急な斜面だ。
幾筋かの谷が、下に広がる千曲川沿いの平らに向けて下っている。
一方、谷から谷を隔てる尾根伝いには、ところどころに杉の林が点在し、白
みがち、灰色がちの風景に濃いアクセントをつけている。
車窓の右から彼方の善光寺平に向かって流れる千曲川は大きく右カーブ、そ
して左カーブして、雪の向こう彼方の薄日に反射して柔らかな輝きを伴っている
街に消えていく。
雪の中の千曲川のくっきりしたカーブは鮮明だ。二つ三つの橋が幅広の川を
区切るように跨ぎ、黒い点になった車や人影がその線に沿って可愛く動いてい
た。
「あー、吊り橋が2つもあったのか!」
眺めの中の吊り橋はとても良いものだと、あらためてその価値を認めなおし
た。
列車はバックして本線に戻り、再び行くべき方向に走り出した。そこは急な斜
面の林檎畑の中だった。手入れの行き届いた冬の林檎畑の寒々とした細枝
が、流れるように車窓を走り、そのぼかしを透して見る向かいの土手には段々
畑が連なっていた。有名な姨捨山の田毎の月を浮かべる水田のつづきであっ
た。
姥捨山界隈は白と黒、無彩色の世界になって静まり返っているようだ。
急な下り坂であろう筈なのに、列車はゆっくり、ゆっくりと走るように感じられ
た。
私はもう一度千曲川辺の白い世界を眺め、そこから墨絵ぼかしの冬枯れた
雑木林、そして再び白一色の遠山へと目線を移していった。その上には少し
の青空が広がり始めていた。
列車は平地に降りきって千曲川と併走し長野へ向かう。
その町も新しい雪を纏ったばかりだった。
(風次郎)
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