詩集  『風 と 花』

 風次郎  2013
  17.  新年
 風次郎  2011
  16.  寒くて悲しい春に(2011.3.11東日本地震に寄せて)
 風次郎  2004 
  15.  あこがれ
 風次郎  2003
  14.  新しい試練に向かって
 風次郎  2002
  13.  静けさ
 風次郎  2001
   9.  より良き思い出のために
  10.  春一番
  11.  自分の世界での一歩を
  12.  道しるべ  
風次郎  2000
   1.  初詣
   2.  風
   3.  花の心で
    4.  春風
   5.  ふるさとの春
   6.  夕立
   7.  秋のおわりに
   8.  賛歌
   
    


新年(2013)
                
 あこがれを 胸にして

 又、あたらしさの中に身を置きなおす

 流れゆく時が 止まらないまま

 次の世界の中に 身を置きかえる区切りのとき

 年あらたまる。

 今、思惑を超えて 真理の世界へも行けそうな

 希望新たに――

 幸あれ、幸あれ

 ひたすらに 幸あれ。



寒くて悲しい春に(2011.3.11東日本地震に寄せて)

 花は咲いても、寒い春だ。
 気持ちは高ぶっても、悲しさの春だ。
 待っていたのに、優しい春ではなかった。
 これが、神様の私たちにくれた、今年の春なのか、

 この春の寒さの中で、
 東北地方の海辺の人たちが、天の災に心まで粉々にされたまま、
 厳しい生活をおくっていることを思う。
 その災いは、広く関東の地にも、果ては大洋の彼方にまでも及び、
 人々は皆耐えている。
 耐えるしかないから―――

 今、人々の脳裏に、
 想像を超えて襲った自然の猛威に覆われた大地がひろがっている。
 せっかく築いた人々の儚い生活の為の世界。――だった“ふるさと”の光景。
 それが――
 耐えるしか人間に力は無いのだと知らしめんが如く、
 神がもたらした光景か。
 テレビの箱の中の光景でさえ惨くて広い。
 見渡して、何も言えない。

 「人間なんて、小さなものなんですね――」
 静寂の中で顔を見合わせたテレビの前の友人、知人、身近な人々と、
 只、頷き合うだけの日々が過ぎていく。
 悲しい。
 私のような、言わば只傍観者にすぎない者でさえ、
 「私たちの災害」と共有して言えるほどのことが出来ないはがゆさばかりに、
 さいなまれる毎日。
 さあ、何をしようと立ち上がろうか、

 だけど立ち上がろう!
 一緒になって!
 「君だって人間なんて力ないものと思わされ続けて生きてきたんだろう」
 慰めに似た背後の声に急かされるような気持ち。

 立ち上がり、歩き出せば勇気が沸いてくる筈だ、と思う。
 小さな人間でも、
 手がある。
 足があるじゃないか。
 自然には負けても、
 頭があるじゃないか。
 そして、一人じゃないんだから――。と、

 これまで日々の生活を積み上げてきた大人達と、
 どんなに打ちのめされても生きてきた、もっと年上の大人達と、
 これから希望ある未来を見つめる若者達と、
 年長に手を引かれて従う子供達も、
 母の胸にしっかりと抱かれた幼子達も、
 今は、一緒になって屋根の無くなった大地に立とう。

 その自然の中に、
 その大地に、
 今こそしっかりと生きて行かなくてはならないのだ。
 人の温かさをたよりに、
 夢を失わないで。
 今こそ‐‐‐‐‐再び、さらに三度。

 そして、神様のくれた不幸に見舞われた私達だが、
 それでも、神様に生きていく喜びをもたらしてくれる事を祈ろう。
 一緒になって、立ち上がろう!


あこがれ  (2004年)

“あこがれ”という名の船に乗って、友と旅をしたい
穏やかな海に、陽の暮れない長い時を過ごしたい

船に揺られて、
“あこがれ”という名の詩(うた)を唱ってみたい
遥かな水平線と遠い青い空に惹かれながら、
      「あこがれに向かって!」と‐‐-

みんな微笑んで、輪になって唱うだろうか 
唱えればいい

友が言う
「人に愛があるなら、
時の流れなんか見失ったていいのさ」
私が言う
「共に楽しい時が過ごせるなら、
人生に、それより尊い仕事(つとめ)なんてあるものか」
たった一隻の船に揺られて---

風が吹いている
いつも、風が吹いている
船をうながすほどの風が吹いている
心をうながすほどの風が吹いている
あこがれの詩(うた)をはこんで、どこまでも

“あこがれ”という名の船に乗って
陽の暮れない海を旅したい
友と一緒に旅がしたい

新しい試練へ向かって(03.01.01)

夢を、いつも求め、

現実の世界に、大きく眼を開いて、

その先の、明るい未来をまっすぐ見つめて、

外に出よう!

明るい未来を見つめて、一歩進もう

新しい発見は、新しい喜び。

新しい驚きを、新しい試練へ繋ごう

たゆまぬ努力こそ、新しい進歩のしるし。

明るく輝く未来に向かって、

小さく縮こまっていないで、

外に出よう!


“静けさ ”

深い山の中
「オーイ」と呼べば
「オーイ」
「オーイ」とこだまが飛び交い、
一瞬賑やかになる渓谷

やがて戻る静寂に、
谷を細く流れるせせらぎの音が遥かに聞こえだす
キロンキロン、チロチロ‐‐‐‐‐    

この静けさを、
両手の拳の中にしまって立ちあがり
又、オーイと叫ぶ!
オーイ、オーイと木霊

それがたった一人の賑やかな世界

そしてまた静寂。

光の精、水の精、
なにも語らぬ生命たちに囲まれて
自分の世界を楽しむ深い山の中

この静けさを
両手の拳の中にしまって‐‐‐‐歩く
稜線をめざして‐‐‐‐歩く    
                                 (02.01.01風次郎)


より良き思い出のために
                             2001.01.30  NYからの帰路

ビルとビルの長い隙間に射し込んでくる朝陽を背にうけて、
黒いコートに肩掛けカバンをかけ、
胸を張って歩き去るビジネスマンに見入った日があった。
     
     〇

ここニューヨークマンハッタンの
グランドセントラルを出て西へ向かう46ストリート、マジソン街の交差点で、
振り向きかげんに手を挙げた我が息子よ。

21世紀、スタートの1月だった。

いつの日かこの時を思い起こして、幾多の発想の基点に為すすべを培へ。
明日の世界の創造を想いて、はばたけ、
はばたけ!

「全て糧なのさ。」
私は、そう言ってやりたかったのだ。

君はここで、世界のビジネスエリート達とともに、
何を想い、互いの心を交わして働いているのか。
ここが世界の最先端で、新しい経済の試練がここから始まるなどと、
いちいち考えていられないほどの人生を、どう受け止めているのか。
このありとあらゆる国からの人々と、
一体どのようにコミニケートを続けるのがグローバルだと感ずるのか。
若き君に与えられたステージに、何の不足もありはしない。

いつの日かこの時を思い起こして、幾多の発想の基点に為すすべを培へ。
明日の世界の創造を想いて、はばたけ!
そう言ってやりたかったのだ。
そうさ、全てが糧なのだ。

厳しい寒い冬だったと思うだろう。

今日、ドアの外は雨、
帰国する私はセントラルステーションのホールに佇み、
「それじゃ、しっかりと」と出勤する君を見送って、
空港へ向かうために荷物ケースを押し始めたものの、
もう一度君の姿を目で追って、振り返る。
雑踏の中に見えなくなった君に、

「全てが糧なのだ!」
私はそう言ってやりたかったのだ。
いつの日かこの時を思い起こして、幾多の発想の基点に為すすべを培え。
明日の世界の創造を想いて、
はばたけ!と。

君は立ち上がり、
君は立ちすくみ、
そして叫ぶだろう。
ならばせめて、その叫びは若さで示せ。

そう言ってやりたかったのだ。
   
     ○

時は流れるが、
想いは流されやしない。
しっかりと見つめた、人生の目標は、
少しの風や、そこいらの人間のつくる洪水なんかではびくともしやしない。
晴れた空は必ず戻ってくるものなのだ。

ニューヨークと東京を行き来するジェットの道は高度12000メートル
そこには何時も青空がある。

そうさ、いつも青空を飛びつづけようじゃないか。

                                         風次郎


春一番

春一番の風は 気まま
駐車場で旋回して舞いあがり
どっからでも どちらからでも 吹きかかる
でも その風に乗って 春がやってくるのだ

歌を唄おう!
口笛を吹こう!
風と友達になって

あいかわらず 襟を立てたコートのまま背を丸め
ぶつかった風と 友達になって

肩を斜にかまえながら 西陽に向かって

歌を唄おう!
なつかしい冬の曲の 

口笛を吹こう!
寒い冬は もう行ってしまうのだ

コンクリートの道 コンクリートの壁 コンクリートの屋根
その 都会の中に残された 雑木林には
素早く吹き抜ける春一番が吹いている

口笛も舞いあがり
西陽の彼方へ飛んで行く

そして 春がやってくる
                              2001.3  風次郎

自分の世界での一歩を

いつの日の 感激の山
いつの日か 感傷の海

今日の歓びの光が
明日は悲しみの闇にも
      〇
生きているこの世界

だけれども 今眼のまえに広がる自分の世界なのだから
なにがあっても いつも一歩は歩ける

ここは実りの郷だ
ここは躍動の街だ
そして自分の世界だ

立ち竦んでいないで
情熱をかたむけて
生きるべき自分のための世界の道を
歩もう

憧れも
希望も
戸惑いも
我侭も
すべて心から外にだして見つめよう

そんな者達と
一緒になって歩こう

何があっても一歩は歩ける
誘いの風に頷いて進んで行こう

自分の世界での一歩ならば
歩けるさ!
                        (01.09.23 風次郎)

道しるべ      


風次郎は暗い夜道を歩きながら考えつづけた

大切なものは何だろう
たいせつなものは いったい何だろう
けっして失ってならないものは何だろう
今見つめなければいけないものは何なんだろう

正義だろうか 道義だろうか
それとも生きる喜びだろうか

歩みはトボトボとつまづきそうに
つま先にそそぐ淡い月の光のみが
おぼろげに前方に揺らぐ暗い道であった

朝の光はいつ来るのか
もうすぐだろうか
まだしばらくこの闇がつづくのか
不安は周辺を包んで漂い
ただ呆然とした歩みをつづける身体は
トボトボと 蠢くように移るのみ

       〇

大切なものは
今 失ってはならないものだ
今 失ってはならないものは 
正義や道徳とはちがう
「生きる喜びのための道しるべ」だった

       〇

「道しるべ」は見えなかった
つま先にはただ おぼろげな光がさしていた

そうだ 
人を動かすだけの力は 身近なおぼろげな光でしかないのだ
たよりになるのかならないのかわからない程の
おぼろげな光を追って
つま先は進み出る
どこえ行く宛があるでもないのに
あたかも行く先を向いているかのように
自分が踏み出しているつま先は光を求めて蠢いている

風次郎は歩きながら考え続けた
あせる必要はないのだ
もはや 人生の峠は過ぎて
トボトボと歩いているだけで
道さえ間違わなければ人里へたどりつくことができる筈なのに

道しるべは見えないけれど
道しるべはあるのか

歩きながら巡らせる思考の中に
道しるべはあった

それは 情熱であった
それは 愛であった
それは その行く先に向かって燃えあがる焔であった

頭の中の火は 消えかかっているように思えた
それは 風次郎が見つづけないで眼をはなしたからだとも思った

         〇

向かう先は「倖」であった
暮らしに求める倖は素朴でよかった
そこには豊かなものがあった
開放的な明るい光景であった
全てが明るく周囲に人の輪があった
けっして閉ざされた内での倖ではなかった
広い世界につづいていた

しかし それは一方で限られた小さなものであった
手の届くところまでの広がりでしかないものであった
そこにある世界は
振りかえって見ると 
道しるべなどいらない小さな世界であった
小さな世界はいくつもあった

       〇

なのに 何故迷うのか
なのに 何故 人は迷うのか

大切なものに気が付いていないからだと思った
誰にも大切なものがあるのだと思った
人は一人では生きていけない

大切なものは人だった
大切なものは一番身近な人だ とふと思った

もしその人が自分より力のない人だったなら
風次郎はその人を抱擁してあげなければならないのだ
その人が たとえ力ない愚かな人であっても
その人は身近な人なのだから

そしてたった一人の人だった
常にたった一人の人だった

夜道には星さえなかった
トボトボトボトボ いくら行っても
そこには雨雲ばかりで明るさのこない空が広がっているような気がした

そんな暗さの中に
必要なのは
一緒に歩く人だった
それが光だった
それが道しるべだった

道しるべがそばに居れば
そうだ 
どこえでも どこへ行ってもよかったのだ

トボトボでも早くでも歩けばよいのだ
一緒に歩く人がそばにいればいいのだ

風次郎は休まなかった
休むのがつらかった
休めば近づけないような気がした
歩いていれば近づけると思った
だから足先を見て ほのかな光をさがし
躓かないように歩きつづけた

つま先が道しるべだった
つま先のすぐ前に 
ただ一人の人がいた
                          (01.09.23風次郎)       


初詣

北の日陰に薄雪は消えない

石段にかかる一足ごとに

何を託そうかと正門に近づけば

ただ雑踏の中の我一人と、静寂を知る

ああ、五十余年の人生を生きて

新たな思いを身に受けようと、其処に立てば

残り雪の白さも尊い

誰なりとも何神とも良い

ひたすらに手を合わせ

今日の仕合せを祈るなり

                                              (風次郎)


風ふけふけ
風ふけ
そよそよとふけ
風ふけ
ヒュウヒュウとふけ
風ふけ
ゴウゴウとふけ

どんなに優しくても
どんなに強くふいてもよい
どこかから何か連れて来い

新しい
胸がときめくような知らせを
ぼくはいつも待っている

その知らせを次の人に運ぶために



花の心で

花の心で いつまでも
輝く太陽見つめよう

花の心でいつまでも
優しい愛を求めよう

花の心でいつまでも
清い命を育てよう

花の心でいつまでも
花の心でいつまでも



春風

春風うらら隅田川
桜の花のトンネルの
むこうに続く青い空
駈けてみようよあっちまで

春風うらら隅田川
すずめチュンチュン飛んで来い
お日さまポカポカ良い天気
いっしょにママと遊ぼうよ

春風うらら隅田川
川面キラキラ舟のあと
ドッドの船乗り手を振って
波乗りくぐる橋の下

春風うらら日もうらら
かすみの雲が眠たそう
おうちの窓のトム人形
お昼寝待っているだろか


ふるさとの春

五月の風に 
天高く鯉のぼりおよぎ
緑燃える高原

山郷に花咲きあふれ
人、皆戸外を求め
郷原に歩を進めつつ
このうまし気を胸に満たせり

嬉々たる歓声の絶えず寄せ来る古里に
朝露光らせし木々の芽吹きたる時を
我が人生の時を
両腕に擁きて思う

いかにも
いつか旅発ちし春かな

この良き時の流れの旅に
ああ!いま立つこの山麓に緑燃え
新しき躍動の季節、みたび来れり

旅はなかばなり



夕立                       00.08

バサッ、バサバサと
いきなりトタン屋根をたたくような雨音がして
夕立がきた
縁側から空を見上げても、青空なのに
いきなりこの雨

"来るならすぐに暗くなるぞ"と
反対側の部屋に飛び、窓から見上げると
黒雲

ザザザ――― と風を伴い
今度は本物が来た
ザザザ――、 ピカピカ! ゴロゴロ、ドン!
雷様も一緒に来た

"そういえばさっきから遠くの雷様の音はあった"
「わー、洗濯物入れてー」
「戸を閉めや!」
「すげー降りだぞ!」
ドタ、ドタ、ドタと走り回る
犬は縁の下にもぐり込む
ザザザー、ザザザー、ピカピカ!、ゴロゴロ!
一時の雨水が庭を浸し、畑に流れる
もろこしの葉が風で揺れている

ふと 思う
この騒ぎも、光景も
もろこしの葉も
少年の日の一ページに似ている
父もいた、母もいた、兄弟も――

これぞ盆の日の「夕立」



秋のおわりに                00.12.02

冬を間近にして
もうすぐ来る
冷たくて静かな冬を前にして
いまさらのように、この年をなつかしむ

春から夏
花木は大きく伸びて、動物は跳ねて駈けた
空は青く、雲は高く
力強く育った生き物の姿を思えば
「躍動」

夏から秋
逞しかった生き物が次第に勢いをおさめて
美しく穏やかに
耀きを放って終わりへ向う季節の
「流麗」

今日の秋の終わりに
夜の長い冬を前にして

ああ!今年も生き物にまぎれて
ああ!今年も豊かな人生のひとときを過ごしたと
降りかえりつつ
ときを過ごす
「悠揚」

+++
 芹を求めし田端の湧水
 兎追いし山麓
 鹿をたずねし渓谷
 霧と汗の山稜

 菜園は雑草と戯れつつ
 草刈の土手に汗を浴び
 
 青一色の感嘆、八つは岳稜
 すすき野に遊べば多彩の夕
+++

今、秋の終わり
やがて来る冬を間近に
何もかもなつかしくなる季節
                                  00.12.2

賛歌

                                                     00.07.01

見よ!
春、草萌えの、陽炎立つ草原に、
子等叫びて戯れる、我が故郷を
青き、高き天空に、白雲悠々と流れ
広々と、裾野淡く緑に、
脈々と続く我が山々の、堂々と横たわりたり

見よ!
夏、閃速の光とともにきたる熱き気の、
逞しき躯に健やかな汗となり、燦と輝きたり
音たてて谷白く染め、清冷の川流れたり
燃える太陽に、少しでも近づこうと
挑む峰は尚、尚高く耀けり
優れて、山あり

見よ!
秋、豊かなる野辺の実り
色雅なるかな林にも、茸足り
ああ、働きへの讃に満ちて
黄金穂の田、延べ行く里なるかな
遊子あれど朋に親しみ、古墳の昔を偲ぶなり
薄紫のヴェールに包まれる如く
遥かなる森の暮れ行く

見よ!
冬、幾千年の輪廻に耐えし今、
凍てつく程の寒来る、強き天の真下なり
雪舞えどその姿こそ優し、
愛すべき山の動物も、共に暮らせる
この民の居所
皓々と月も光れば、西山に落ち、
満天に輝きし星を拝して、
夢多き乙女の寝るらし

見よ!
これぞ、我が古里かな 
讃たり


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