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風次郎の『八ヶ岳山麓通信』No98

  
 冬の姿になった八ヶ岳
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                   K夫人と牛
                                                     風次郎
                                                  fuujiro@jcom.home.ne.jp
            

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日の出前、標高1,100mの八ヶ岳山麓高地はマイナス3℃にはなる。
まだ真っ暗の中を、ヘッドライトをくねらせて、新田部落から乙事部落へと
ボディーに霜をのっけたままの車を走らせ、Kさんの牛舎を訪ねた。
先日小学校の同級生であるK婦人が、畑には冬越しの堆肥を入れたほうが
良いとのアドバイスをくれ、牛糞は最適な堆肥だから分けてくれる
との事でもらいに行った。
 K夫人は多忙な人、昼間はご主人の農作業を手伝ったり、村おこしの蕎麦
打ち道場「おっこと亭」の指導スタッフでもあり、農協婦人会への参加も積
極的な人。自宅へ電話してもなかなかつかまらない。携帯電話でやっと連絡
が取れた。朝牛舎で牛の世話をしている時間なら絶対ということだった。

 はたして早朝の牛舎に彼女はいた。
 牛は60数頭。つい先週生まれたばかりという2頭の子牛が牛舎の外で息を
白く発しながらモーと鳴いて愛嬌を振りまいて迎えてくれた。
 牛舎の中では60頭の牛が、それぞれ区分けられて、列のようになって飼
われているのを生のまま見ると圧倒される。近くで見る牛が
ものすごい巨体であるばかりか、眼とか耳とか、目の前の足の大きいこと。
パンパンに張った乳房なんか日ごろイメージしているものとはほど遠く、
不気味なほど巨大である。
 K夫人とはいっ時手を休めての立ち話。
牛舎に設備された機械のための動力の音が響きわたるなか、
「すごい数だね!これだけいりゃ―手間もたいへんだなあ―」と、
大声で話す。
「毎日のこんだから―、貧乏暇ナシよ!」
「そうでもね―らけんど。」と、私も昔ながらの方言調がでる。
 彼女は結婚以来、毎日5時に起きて牛飼いをしてきたと前から聞いていた。
「情がうつるらに?」と言ってみた。
「普段乳絞っているときにゃね---- 経済動物だからと割り切ってはいるけど、
手離すときはそりゃ―」と本音が伝わってくる。
 それにしても毎日毎日の仕事だから大変だろう。
「おれも早起きはするけどさ―、毎日5時から8時まで牛の世話するってこた―、
すげえこんだな―。どうりであんた、丈夫だ―」

 牛糞たくさんもらって、ついでにほうれん草の霜除けや、山うどの株を
冬囲いするのに使う籾殻もわけてもらって、おまけに絞りたての牛乳も
もらって帰ろうとすると、牛舎の前の子牛が顔をしゃくりあげるようにしてモーと
鳴いた。そして下を向いてブーと息を吐く。 眼がくりくりして可愛い。
そのうち孫達にこの牛達を見せてやりたいと思う。

 K夫人は時を惜しむように、又牛舎に入って行った。
やせた初老だが、逞しい後姿だ。

 八ヶ岳の山の端がシルエットにくっきりと浮かび上がり、
あたりには朝もやが漂う。
良い天気になる前ぶれである。
 耳も手の指先もしびれるほど冷たい朝だった。
 
                             (風次郎)

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