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風次郎の『八ヶ岳山麓通信』No 42

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2003年11月22日

   風次郎
  fuujiro@geocities.co.jp
晩秋(3)
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 今年の早春に逝った友人江口宣彦氏(元ジャパン石油常勤監査役)の追悼文集
に一文を求められ、投稿させていただきました。

* * * * *
 
「おっこと亭」にて――江口氏追悼――

 私の住む信州の秋はもう終わり、華やかに色づいていた高原は次第に彩を失っ
ている。
 人々にとっても冬支度に余念の無い一方でこの年の思いの数々を懐かしみ、心
にとどまるページをしたためる季節でもある。
 "―――そうか、あのそば亭にも江口氏のエピソードがあったのか"と、乙事部
落からなだらかな八ヶ岳の裾野を上ってきた。落葉松林のなかに村おこしで賑わ
う蕎麦屋『おっこと亭』がある。
 江口氏はそばが駄目だったとは春日さんに聞かされた。

 ある年の夏、私の故郷でもある当地信州諏訪で東京藹然会のセミナーが催され、
この蕎麦屋へ皆を案内したことがある。彼はそばアレルギーで食べられないと大
騒ぎになったそうだ。まわりが「饅頭にでもしたら?」とすすめたものの、これ
がまたそば饅頭の由、そばづくしの店なのだ。見かねた店のパートのおばさんが
「お客さん、もしよかったら私の弁当たべませんか。嫁が作ったもんだけど」と。
 江口氏は恐縮しながらも、気さくに好意を受け入れ平らげたとのことだ。春日
さんは、その彼の取り繕いにすっかり親近感を覚えたのだと語った。

 わたしはこの一件を知らない。騒ぎであったそうだから、覚えていないのかも
しれない。
 だが、そこに江口氏の案内した私への気遣いがあって、その場を収め、その後
も何等口にすることが無かったように思えてならない。

 江口氏が逝ったと聞いたときは愕然とした。
 元気な言葉、多少の灰汁も伴ったが強がりの打ち出し、闊達‐‐‐。東京藹然
会でも強弁であった氏に、病気との関わりあいなど私には思いも寄らないことで
あった。

 しかし、今思えば‐‐‐。
 東京藹然会がまだ毎月の例会をもっていた頃、江口氏の会社が私の会社から歩
いて数分のところに移ってきてしばらくしたある時、ふらりと訪ねたことがあっ
た。社の要職にあった氏は、折からの不況にからみ人員配置のことで難しい立場
にあって悩んでいた。そして、いつに似合わぬ弱音を洩らした。
 私は「ちょっと変わったな!」とつぶやきそうになって、やっと抑えたように
思う。
 帰りがけに、「体調も良くない」とも聞いたように思う。
 今思えば‐‐‐あの頃体に変化があったのかもしれない。病は気からもくる。

 その後、東京藹然会も諸般の事情があって例会を休止、私も年期が来て会社を
退職することになった。
「しばらく信州に退いて暮らすよ」と伝えると、
「それじゃあ俺がちゃんとし切って送別会をやろうじゃないか」と親しい方々に
声をかけてくれ、それこそちゃんと仕切ってやっていただいたのがとても嬉しか
った。
 ちゃんとを強調したのは、私も悪口が先立つ方なので、"藹然会の連中は口先
ばかりで実行力ないから‐‐‐"と時々漏らしていたのを、彼は気にしていたの
かもしれない。

 さらに1年の後、春日さんの主宰する『自立人間をめざす会』へ出させてもら
ったとき久しぶりに会った。そこでは相変わらずの江口節を聞いて健在を確認し
たとばかり思っていたのだが。
 このところ3人も立て続けに友人知人を「ガン」で失った私は、今、氏の顔を
思い浮かべて、「ガンだったのか」と語りかけ、驚愕の渦の中に強がりな氏の顔
が崩れていくのを追うばかりだ。

 このそば亭で恥ずかしそうに、そして臆面もなく嬉しそうに他人の弁当を食う
氏を思い浮かべながら、今日のそばを食おう。
 強がり、強弁は陰で繊細な気遣いを心得ての持ち味だったように思う。江口氏
の掲げていた本質は積極的な心配りであったのかもしれない。

 そばの食えない人が、そばにいたのか。今はそばにいなくなってしまった。
 そばの話だけが残っている。皆で軽口をとばしながら過ごした日々が懐かしい。
                     (03.11.19  風次郎)

*文中、「東京藹然会」は元住友銀行副頭取岩澤正二氏を囲む人間学勉強会
*文中、春日さんは「ぱるす出版」編集主幹の春日栄氏

*  *  *  *  * 
 
今週の八ヶ岳西麓は16(日)晴れ
         17(月)晴れ
         18(火)晴れ 朝の富士見は真っ白な霜で冷込み、星が綺
麗でした。
         19(水)晴れ 夕方から雲に覆われ
         20(木)終日雨
         21(金)晴れ 午前すごく暖か夏のよう、午後から雨。

                         (風次郎)